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F1小噺【チムニー】

この記事では私が好きな「F1の小さな事柄」についてアレコレ語ります。
栄えある初回は「チムニー」です。


チムニー is 何?

チムニーは2008年まで存在したF1の空力パーツです。名前の通り煙突状で、F1チームから長く愛されたパーツでした。

チムニーが産まれた理由

2001年のマクラーレンがこのデバイスをデビューさせました。水色の丸で囲っているのがチムニーです。どっからどう見ても煙突ですね。(カラーが黒でわかりにくいかな?)

2001年 MP4-16

チムニーのメイン機能は排熱です。ラジエターを通過した熱くて遅い気流(オレンジ)をボディ表面を流れる速い気流(水色)に影響が無い場所へ移動させるためにニョキっと伸びてるんです。
「本当に効果があるんか?つーか、この醜い煙突が気流を乱してるんじゃねーの?」と、この時は誰もが思いました。

気づいたらみんなチムニーの虜

2004年 F2004 横向きに排熱

斜めに生えて洗練された流線形になりました。
この形状に私はメロメロになりました。タイム短縮に関与しないパーツは無駄というF1の世界で、ウィング以外のパーツがボディから生えてるんですよ。まさに機能美じゃないですか?
数年ぶりに再会した幼馴染が美少女になっていたあの感じですよ!!!(極めて分かりにくい例えでスイマセン)

チムニーは立ってるだけで価値がある

この美少女チムニーちゃんを次のステージへ早々と昇華させるチームが居ました、チャンピオンチームのルノーです。

2005年 R25

ボディが絞込まれた結果、チムニーが伸びたのもポイント高いですが、チムニーの穴が塞がってるんです、そしてその下には過剰に刻まれたシャークルーバーが鎮座。チムニーのアイデンティティである熱移動の機能を殺し、すぐ隣の別のデバイスが排熱を担ってるんですよ?このシチュエーションとエロさ、わかってくれます?
もちろん穴が空いた状態で使用するチームもありますが、F1マシンの開発者はチムニーを完全に空力部品として扱うようになりました

2006年 RA106 半開で使用している

さらにF1チームはサーキットの気温に応じてチムニーの排熱口を開閉します。「空力 + 排熱調整」として本当に有能なデバイスだったのでしょう。チムニーのかつての存在理由は排出される気流が既存の空力に影響しない事、既存の空力を左右せずにその場で調整出来るのはチムニーの十八番です。この万能感はチムニーの今後を大きく左右させます。

チムニー七色の変化

とうとうチムニーが周辺の空力パーツと融合し始めます。
マクラーレンは前方のチキンウィングと融合させます。大きめの開口なので排熱デバイスとしても重要な役割を担っています。ああ、造形がエロい!

2007年 MP4-22

逆にフェラーリは後方の小さなウィングと融合させました。排熱口を開けるつもりが全くないデザインで、チムニーは完全に空力パーツとして錬成されたようです。

2007年 F2007

ウィリアムズは2008年に前後のウィングとチムニーを一体化させました。
排熱口もないし、もうチムニーとは呼べない形になっています。近い言葉はスクリーンですね。

2008年 FW30

チムニーの最期

2009年、大きなレギュレーション変更があり、ボディワークに空力部品を取り付けることが禁止されました。これによりチムニーは姿を消しました。
 
ところが、2017年チムニーが再登場したんです!
形も機能もそのままに、愛されチムニーが復活しました。シャークフィン(下の画像のイギリス国旗が描いてある背鰭みたいな板)の隙間から排熱してるんですよ!

2017年 W08 あああ!チムニーついてる!

それも束の間、翌年の2018年からシャークフィンは禁止され、それに伴ってチムニーも終わったと思ったんですが、それでもメルセデスは気温の高いサーキットで使ってきました。これが本当にチムニーの最期ですね。

2018年 W09 最後のチムニー

おわりに

チムニーという小さなパーツの魅力、伝わったでしょうか?
現在のF1ではこういった目に見えて変化が起こるパーツがかなり少なくなっており、マシンの造形を見る楽しみが減ってきています。
また気が向いたら、F1のアレコレを記事にしてみたいと思います。
 
ほなね~!

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