抜けないF1は何を観ればいいのか (その2)
F1初心者に向けた記事です。なるべく専門用語や固有名詞を使用しないで頑張って解説する記事です。
前の記事では「コースの外でライバルの前に出る」という方法について解説しました。その中で「アンダーカット」という戦術が存在し、かなり有用に見えたと思います。この記事では「アンダーカット」がそこまで甘い戦術でないことについて立証したいと思います。
実は利益が薄い
アンダーカットは作戦の仕組み上、タイヤ交換が必要です。
現代F1では「レース中に2種類以上のタイヤを履かなければいけない」というルールがあるので、タイヤ交換の機会は最低1回、多くても2回です。3回交換は滅多にありません。
つまり「レース中のアンダーカットのチャンスはだいたい1回、しかもそのリターンはたった1台を追い抜くだけ」という厳しい現実に直面します。
ライバルは目の前の1台だけではない
タイヤ交換をするとピットインのロスタイムでコースの後方に復帰します。当然、一時的に順位が下がります。まぁ、どのみち前にいる他のマシンも将来的にはタイヤ交換するので最終的には順位は自動で上がっていきます。
でも、これが大問題なんです。紙芝居で説明しましょう。
タイヤ交換後に前方がフリーな状態でないと、タイムを縮めることができません。そうでないならアンダーカットは失敗します。
仕掛ける側は後方20秒辺りに都合よく空いたスペースがないとアンダーカットという戦略を採用することすらできないんです。
さらに上の例だと、都合が悪いことに紫チームの前方が空いているので、新品タイヤのメリットを生かされて逆に差をつけられてしまいます。
ライバルの対抗策が超簡単
アンダーカットはライバルとのタイヤの状態差を使って、追い抜きに必要な数秒(2~3秒)のタイムを稼ぐという手法です。タイヤの差があるとは言え、1周で数秒を稼ぐことは不可能です。何周かしないとアンダーカットを成功させるためのマージンは稼げません。
察しが良い方は、もうお解かりでしょうか?
アンダーカットを仕掛けられたら、翌周にピットインすれば順位を守れちゃうんです。
アンダーカットのシワ寄せと戦え
F1のタイヤは1セットでレース距離(305km)を走破するようには造られていません。短命でラップタイムと寿命を天秤にかけたような動作をします。(速く走ると短命、ゆっくり走ると長寿)
週末には、特徴がある3種類のタイヤが持ち込まれます。
F1には「決勝では2種類以上のタイヤを使う」というルールがあるんですが、F1チームはクソ頭がいいので、どのタイヤで何周走ったら最速でゴールできるかなんてレース前に判っちゃうんです。(フリー走行でタイヤの特性を見抜いてこの予測を立てます)
で、アンダーカットに話を戻すんですが、15周目にアンダーカットは仕掛けません。ライバルチームもタイヤ交換を15周目ぐらいに予定しているでしょうから、失敗する可能性が高いんです。
アンダーカット成功には数ラップが必要なので、10周目にピットインを決断し、アンダーカットを成功させます。
となると、必然的に当初のタイヤプランが崩れます。
と、言う感じでアンダーカットは単なるタイヤの前借りなんですよね。
さっきも言いましたけど、F1チームはクソ頭いいので、この中でも最良の判断で新たなプランを決めます。
で、抜けないF1は何を観ればいいのか
確かに現代F1は順位変動が起こりにくいです。これは全てのチームが最良のタイヤプランや作戦を算出している事が原因かも知れません。
でも、失望しないで下さい。
ピットインは単なるタイヤ交換義務の消化と思っていたかも知れませんが、この記事で得た知識を片手に観ると、ピットインのタイミングやスケジュールの変更など、チーム内部の決断が何となく見えてくるかも知れません。
アンダーカットが銀の弾丸ではないと知っていても、決断するチームは絶対に存在します。そしてアンダーカットは最適化されたプランに亀裂を入れるかも知れませんし、F1チームはその亀裂を見逃しません。
アンダーカットの追い抜きはリスクがないので観戦の醍醐味をスポイルさせる?いやいや、レース後半の楽しみの種としてアンダーカットに注目してみましょうよ!
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