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時代の流れとF1のカタチ (その2)

この記事では近代のF1マシンの見た目の変化を当時の事情と一緒に紹介していきます。スイマセン、今回も多少の専門用語が飛び交います。
前回は2008年から2016年までを紹介しました。見た目だけ追いかければ黒歴史に近い内容でしたが、さてさて、今回はどうなるのでしょうか?


2016年 振り返るとどうだった

2009年から引き継いだレギュレーションは様々な問題もありながらもいくつかの結論に達しました。
①厳し過ぎるレギュレーションに縛られた空力開発に到達点が見えた
前の記事の2009年からのマシンの見た目を流して見て下さい。フロントノーズは激変してますが、運転席より後ろはボディの曲線を変えるぐらいしか変化がないんです。それだけ制約が厳しく、開発の余地がなかったんですね。
②マシンの見た目がクソダサい
安全面を考慮しながら改変を続けた結果、下位カテゴリーのマシンのようなシンプルな見た目になってしまいました。2009年以前の「機能美」とも呼べる造形が存在しないんです。唯一の濡れポイントはフロントウィングの両端のフィンでしょうか。

2016年 これが世界最高峰の車のカタチかね?

③タイヤパフォーマンスがクソ
話題がマシンの見た目から外れますが、給油がなくなったのでレース中のアクションが減りました。そのため、意図的に見せ場を作るためにFIAはタイヤメーカーに激しい劣化が突然来るタイヤを作るように命じました。つまり、タイヤ交換のタイミングで順位の全てを決定し兼ねない、しかもそれは御上が望んだ方針、果たしてそれは速いマシンとドライバーを決める選手権として相応しいのか?という疑問を投げかけました。

2017年 久しぶりの黄金期

2009年を超える大掛かりなレギュレーション改正が施行されました。まず、コンセプトが異常で「F1マシンを速くしよう」なんです。
今までは度が過ぎる開発競争を制限するために、レギュレーションを改正してきました。そうしないとF1は青天井の予算と人知を超えた想像力で常に限界を目指してしまう文化だからです。
では2017年のマシンを見てみましょう!

迫力あるやん…!
パーツもゴテッとるやん…!

改変ポイントを簡単に説明しましょう。
①横幅が広がった
1997年以来の変更です。幅が2000mmになりました。どっしりとして、めっちゃ恰好良いです!
②リアウィング、ディフューザーが大きくなった
チリトリの取っ手だったリアウィングが低く幅広になりました。ディフューザー領域も拡大したので、慢性的に不足していたリアのダウンフォースが復興しました。クソ恰好良い。
③タイヤの幅が広がった
空力(ダウンフォース)に頼ったグリップを増やすより、メカニカル(タイヤ自体の)グリップを増やした方が、追い抜きバトルがしやすくなるという観点での変更です。タイヤの特性も急激に劣化するタイヤではなくなりました。
④空力の開発エリアが広がった
フロントタイヤと運転席の空間にエアロ開発の許可が出ました。これによりバージボードと呼ばれるパーツが復活、往年のF1の格好良さが戻ってきました。

でっかいバージボード(白いパーツ)が復活しました!

バージボードエリアの開発が許可された結果、F1チームはフロントタイヤが発生させる乱気流をマシン幅の外側へ誘導する事に腐心します(アウトウォッシュと呼ばれます)。その結果、タイヤの前のフロントウィングで気流を外側へ流す開発が飛躍的に加速します。平行してバージボードもタイヤが発生させる乱気流を逃がすため、様々な試みがなされました。

2018年 シテ…オネガイ…コロシテ…

2019年 学べなかったF1チーム

度が過ぎるアウトウォッシュ開発にたったの2年で喝が入ります、マッドサイエンティストに魔改造されたフロントウィングの寄生生物をどうにかせぇと。

2019年 ん~、スッキリ!

チームごとの思想がバッサリ別れました。画像の上側は禁止されてもなおアウトウォッシュを求めたデザイン、下側はアウトウォッシュを捨てた代わりにフロントウィングでダウンフォースを稼ぐデザインです。(最終的に足して2で割ったデザインに落ち着きました)
さて、規制でメスが入らなかったバージボードエリアはどうなったでしょうか?タイヤの前方のフロントウィングがダメになった今、タイヤの後で発生する乱気流をバージボードで制御しなければなりません。

2021年 こっちに悪霊が寄生しとるやんけ!!
2021年 オデ…ガンバッテ…ランキリュウ…タオス…

んあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!言わんこっちゃない!!
実はアウトウォッシュの開発が始まったのは2009年からなんですよね。実際に2009年のフロントウィングにその造形が確認できます。2016年まではバージボードエリアが開発できないため、簡素なフィンを立てる事しかできなかったんです。で、2017年にバージボードエリアが解禁された瞬間に長らく貯めたアイディアが具現化され、悪魔が召喚されてしまったのです。
2017年以降のアウトウォッシュ開発は(当時は予算制限もないので)とても活発で、短いスパンでパーツがリリースされていたので、毎週楽しみにしていました。

さて、ここで冷静に振り返ってみましょう。
乱立する空力パーツ、低く広いリアウィング、大きくなったディフューザー。
これって2008年のフォーミュラガンダムと全く同じ状況なんですね。当時と違い、DRSがあるにせよマシンが発生させる乱気流で追走するマシンが不利なのはやっぱり変わらないんです。
でも、FIAやF1チームは馬鹿ではありません、2009年とは違う方法でF1を次のステージへ導く破壊的なレギュレーションを決断します。
次回の記事は、現在のF1マシンのカタチについて解説します。


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