ブロック塀の向こう側で夏にしか鳴かない鳥が鳴いていた

初夏のはじまりは永遠という言葉がいちばん似合うと知っていてわざとはやめに終わらせる神様はこの世でいちばんいじわるないたずらをしている、世界を狂わせる魔法を使うのを許されているのはあなただけだから。冷房で冷やした部屋からきみを引き摺り出すのは冷蔵庫の奥に隠れているスイーツを食べたくなる理由とおなじ。忘れられなかったや、ごめんね、って天使みたいな顔で笑って弱々しく走り出して飛び降りてほんとに天使になっちゃった女の子の自殺配信にコメントして、きみが忘れられなかったひとがぼくであったらよかったのにと思った。青い若葉が青空に溶けそうで、季節の温度くらいできれいなものを溶かせるのなら、ぼくは夏になってやろうと決めたんだ。電車の来ない線路で祈っている、放課後はぼくを特別になんてしなかったし。青春がゼロだったくらいで100パーセントを超える孤独を掴めるとでも?渋谷って孤独を拡張させるね、ビラを配る地下アイドルすら霞んで見えて、じゃあいったい誰が輝けるんだよと思って14.5ミリのカラコンで隠した瞳で東京を睨んだ。ぼくはきれいになりたかった、誰に嫌われたっていいから。曲がりくねった道だったからこそまっすぐになれたんだよ。美しいひとから壊されていく世界が正常であってたまるかって思って狂い続けていく、彩度が上がれば上がるほどスーサイド殺せるの?自滅願望と殺意の質量を同じにできたならやっと生きてるって言える、そんな世界にピントを合わせて、ナイフを持った右腕が夏空に透過していく、どうか投下しないで、一瞬で消える光よりも美しいものはないって知ってみんな花火が好きなんだって、そんなかなしい事実を口に出さないで、黙って中に出して。孕んだ漆黒が膨張して産まれるとき気持ちいいね、呪いを吐き出したみたいで。初めまして、絶望さん、きみが見るこの世界の景色はどう?ギャルになりたいって言って好きでもない色の浴衣を選んで強くなった気でいたね。ほんとはぜんぶきもいのに。きみと蝉はよく似ていたよって言って消えたい、ばいばいって言葉が似合ってしまうことが残酷で残酷でぶん殴りたくなった。若者という定義からはみ出てやっと電車に乗れる。犯されない空洞だけがきみが愛さなきゃいけないものだよ、透明な美学ばかりが飾られている美術館で、美しさに負けて、死にたい。入道雲に強姦された青が迫ってくる、記憶の断片に入り込んでめちゃくちゃにして、すぐに消える奇跡など流星と一緒だ、たった数秒で消える光に祈りを込めなくてはぼくがぼくである意味がない、い、い、ねぇ、ここが恐いですか、ここが熱いですか、こころが痛いですか、ねぇ、ねぇ、ねぇ。真っ暗闇の中でみつけた光を棄てられるくらいぼくは強くなかったからきみの連絡先を消せずにいるんだ。勃起した感情を押し付けることってレイプだし、四月が終わることって嘘が終わることみたい。嘘の職歴を書いた履歴書をやぶってお金のためにした約束をやぶって愛のために生きたい、そう願った。許されたくないから生きてんだ、ごっこ遊びの優しさなんていらない。どうか戦い続けることをやめないでください、そうしたらきっといつか会えるから。轢かれた黒髪が風で舞って感染した感性が完成する、柔らかい虐殺でぼくがぼくではなくなっていく。不器用に撫でて、練習なんてないから。毎日が本番の日常に疲れたから死を選んだひとのことばかだって思わない、砂で作った城が崩れてやっと始まると思った。春は平和の象徴みたいできもちわるいね、100円ショップで買えるときめきを100万円で売れる才能がきみにはある。こんな才能なんてなければ愛されたのかななんて泣かないで、全世界の人に中指立てられるまで、ぼくは、生きて、生きて、最後に。追いかけっこみたいな関係に名前なんてないから愛おしい、一生会えなくたってかまわないから。成人式をスキップしたくらいで不幸ヅラするやつのこと、死ねばいいと思ってたよ。絶望した目を閉じて天国に似た夢を見ていた。永遠は、いつか終わるから美しい。ぼくが生きてきた23年間がすべて間違いなんかじゃなかったって気づくまであと何年?ぼっち飯よりおいしいものはないよって胸を張って言えるくらいにならなきゃ神様になんてなれないよ。ぼくのことぜんぶ忘れる対価として地獄を引き渡すから簡単に救ったりしないで。思春期が過ぎてからの方が忙しかった、水族館にて。死んだ魚を見てはしゃげるくらいの感受性を持っているのなら、きっときみは清々しく死ねるでしょう。剥げたネイルを夜で上書き保存した。人間がほんものの顔をする時間帯はいつも深夜。死にたい方が生きやすいねぼくらは、殴り殺した絶望達が起きるとき、戦争のはじまりを告げるひとの声がきみによく似ていますように。近未来的な希死念慮がリポストされ続けて、輝いている連絡網なんて気にしなくていいよ。どこまでも繋がっている地平線が一周してここまで戻ってくるとき、やっと運命という言葉を使えるね。ばかやろう、ぼくだけがずっとここで待ってた。

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