夜の渋谷にときめかなくなったのは

この街は私を少し殺してくれるから好きだった。
雑踏がノイキャンされる渋谷、かわいい服を着てないと殺される、秒で。
友達、家族、恋人、本当に帰りたい場所。
私達はひどく未完成で傷だらけで、痛みを欲していた、10代の女の子にしか通じない言語ってあって、なんでわかんないかなあ、なんでかなあって言って孤独の夜が膨張を続けている、まるで宇宙みたいに。
通り過ぎていく風俗店の求人広告のチラシが挟まれたピンク色のポケットティッシュ、全部景色だと思ってしまえばなんてことなかったのに若い感受性は何もかもを無視できなくて、全てが刃だった気がした。
空に手が届けばそれでよかった、はりぼての欲望に負かされる前にわがままな少女のままで遺体になりたかった。
叶わない夢が透明になるたびに七夕を恨む、織姫と彦星はいいですね、絶対に一年に一回会えるという確証があって。確実な約束事などこの世にないからばいばいという言葉が嫌いで、またねを信じない。崇拝している彼女がおはようと呟く頃私は眠る時間で、なかなか合わさらない長針と短針みたいだね、私達、と思って祈りの質量と同じ量の睡眠薬を流し込む。
視力が落ちた私には青春というものが見えません、輪郭を掴めそうになった瞬間に星になってしまうから友達なんていらない、感情ゼロで放出する液体に愛着なんて湧くわけがない。沸騰してやかんが壊れるまで気づけない感情のこと、忘れないで。ずっとここにいるからはやくおいでよ。ぐさりと刺さった無機質な言葉を剥がして血塗れの体で光ろうとしていた。諦めたくなかったよね、本当は全部。わかんないからすきだよなんて鉄棒に擦りつけるみたいな気持ち悪い一方的な自慰行為でしかないじゃん、突き放されることって抜かれることと一緒だからすうっと熱が冷める感じがするの?
いつかまたここで会おうって約束した子の顔を忘れてしまった。さみしそうに笑うあの子が好きだった。壊れそうなきみがすきだよ、神様への階段を登っている弱い背中に十字架をバトンタッチしたい。
呪いだなんて言わないでずっと腕の中にいてって願った夜はいつも一瞬。飛ぶために飲んだ薬で朝も夜もわからなくなった。愛に似ているものに騙されるのはもうやめて、最先端で泣き喚いていようよ、みつけてみつけてって。
ステージと奈落の底へ続く穴はセットだから輝いて見えるんだね、穴に堕ちまいと必死に光っている人がどうしようもなく神様に見えた夏。
恋している対象はいつも同じ夢を見ていた人。輝けって背中を押されるたびに電車が迫って来る気がしていた、無償の愛なんてなかったって知ってからが始まりです、なんて簡単に言えちゃうくらいの薄情者になってから、煙草の量が増えました。
キテネがTwitterにもあったらよかったな、もっときて、はやくきて、必死に作り上げた平和を狂わせ合って、心底きみを憎みたかった。
めんどくさい愛だねって言って笑う、遠い遠いあの光に、私は、なりたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?