きみの乗る電車は血の匂いで充満している

正直に生きてみて、きみも、きみも、って月が言っている気がして全速力で逃げた。シャッター街と化した商店街がぼくをやさしく抱きしめてくれている感じがしてちょっと泣いた、すきだったんだ、ずっと。若い頃の透明な感受性はもうにどと戻ってこないと知って詩を書き続けている、詩を書くということは死を書くということだからぼくらはずっと削っている、めらめらと燃えたぎるすべての中心地点を。そこで、きみと逢いたかった。ずっと待ってたんだよって笑ったぼくをぎゅっと抱きしめて、しらけさせるような台詞なんて絶対言わないで。ぼくの副流煙で死んでよ、きみが星になったらきっといちばん輝くんだろうなあ、答え合わせっていつも死の直前にある。瞬間、瞬間を愛せるならばぼくらは幸せなのでしょうか。車内には松田聖子が流れている。幸福?と聞かないで 嘘つくのは上手じゃない って口ずさみながらくわえた煙草の先端にきみの瞳が見えた、憂いを孕んだ潤みが工場夜景とリンクして、守りたいと思った。壊したのはぼくなのに。生き続けるって、死に続けるってことね、そう言って笑ったきみは果てしなく天使に近い脆い人間。どうか幸せでいておくれ、きみの狂気が裸になる前に。冷凍庫に保管しておいた使用済みのコンドームが100を超えたとき、ぼくはきっときみに逢いに行く。「死ね」と書かれた血文字の手紙を持って。愛していたよと囁く一等星はいつも昨日とは別人の顔をしている、だから鏡を信じない。きみのご冥福を祈るやつなんて大嫌いだ、きみの死でオナニーするやつなんて世界でぼくだけであってほしい。神様なんていなかったじゃんって消えそうな声で泣くきみの指先を掴めないまま、ぼくらは宇宙の屑となって消える。この繰り返しだね、交差できてよかった、そう言って突き放したい。天才が書いた本を庭で燃やして哲学の葬式をしていた。春ももうすぐ終わります。それを希望だととらえますか、絶望だととらえますか。誰にも買われることのなかった感情が夜の果てで輝いている。飼われるな、飼われて変わる程度の魂持って生きてきたわけじゃないんだし。最後にさ、きみのすきな歌、教えて。ある少年が起こした事件が頭から離れない。夢で流れるあの歌、コード進行が気持ち悪くて睡眠薬を変えた。代わり映えしない明日なんてないのと一緒だよ、奇跡と偶然が合わさってやっと運命になる。知らないやつは馬鹿だって、嘲笑して、睨んで、目の前でぐちゃぐちゃになってやりたかった。正当さえ殺されるならこの世界は美しくもなんともないんだって、ぼくが証明してやりたかった。実は全部捨てられてないんだ、プリクラも思い出も。射精する直前の脳みそにログインして耳元で合言葉を囁いてめちゃくちゃなクライマックスを見せてやりたい。これが愛だよ、間に滑り込んだ些細なきらめきを無視してぼくだけを信じて。季節なんかに弱らされてたまるかって言いながら転ぶきみが愛おしくて、愛おしくて。

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