anemos アネモス

anemos アネモス

最近の記事

『きねんび』(桃萌)

くるしいのはわたしだけじゃないことを確認して安心するのは、他人の不幸をビリビリに破って半分ずつ分け合うことなのか。傷を舐めあって、お互いの塩分で真っ赤に爛れさせてしまうのか。 まいにち毛繕いする動物のように、いつか崩れてしまう毛並みを整え続けるのは、逃げることとおなじなのか。 だれも肯定してくれないのなら、おなじ動物どうしで手をつないでぴったり寝ることしかできない。ことばにしたら押しつぶされてこなごなになってしまうから、わたしたちはなにも見ないしなにも聞かない。 世界がわた

    • 『花束』(桃萌)

      人間の心は底なしだから、どれだけ大丈夫をもらっても暗いほうへ落ちていく。まわりがいろんな色の、いろんな形の大丈夫をくれるのに、暗いほうに落下した瞬間、それは粉々になってキラキラ鳴きながら散る。 明るさは痛みや不快をもたらすから、耳鳴りがするほどの不幸を吸い込みたいんです。あなたがくれた優しさは、わたしがおおきな音を立てて咀嚼してからばらばらになり、真っ黒に液状化した共感と融合する。あなたの優しさは黒に溶けて、キラキラわめく。あなたの優しさだったキラキラはあまりにうるさいから

      • 『幸せの定義』(桃萌)

        苦しくならないように1番上のボタンをあける 立ち上がる前にひとつぶのチョコをくちに含む いつもより大きな音で好きな音楽を聴く 私が生きやすいように、 あなたを傷つけないように、 意地悪じゃなくてできること ことばを理解すること 水の中で息をすること 空を飛ぶこと 同じくらいに冷たい手を繋ぐこと 純白ではないが透明で 消えがちな淡く脆いマヌス 私が息をしやすいように、 あなたに気づかれないように、 幸せを定義できるように。

        • 『夢』(日向子)

          夢を見ている暇はなかった 私たちはただ朝起きて、空洞の頭蓋で朝の支度をして 夢を見ている暇はなかった 数字とにらめっこする、その数は 私が毎日心の数を減らすことで、やっとのことで手に入る 朝起きるという健やかな生活 すべては明日いきていくための 明日 同じ夢をみないための この夜 あなたと一緒におなじ夢を見ること それだけが私の夢だった あちらの世界で 喜びは この夢が私に隠された本当だといった 貴方のほんとうの姿を一生見ることはない 私のほんとうの姿を貴

        『きねんび』(桃萌)

          『春』(桃萌)

          空気が冷たい理由は定かじゃない。ひんやりとした冷たさより、張りつめた冷たさ。 鼓膜の閉鎖感に気が付き、少し考え耳鳴りだと理解する。目を瞑ってしまうほどまっすぐな音が頭を循環する。 それが後頭部に退くのを見守りゆっくりと目を開けると、正面に1人の少女が座っている。 わたしは電車が発車するのを待っている。座席に座り、薄暗い外の景色を見ていた。 わたしは、音楽について問いたいようだった。 「あなたは音楽がすき?」 わたしは微笑んで言った。誰に?目の前の少女に? 少女は何も言

          『春』(桃萌)

          『悩むことって、贅沢かも』(愛理)

          こないだ、初めてひとりバーなるものに挑戦した。 …うん、そわそわする。 隣の人はさっきから物思いにふけっている。 奥の人は窓の外を見ている。 私も真似事をしてみたけれど落ち着かない。慣れていない。 文庫本を出しては、仕舞い。 スマホを開いては、閉じ。 バーテンダーさんに話しかけられ、陰キャ全開で噛み倒してしまった。 私の指が、助けを求めるように動く。 「1人飲み 何する」 「1人飲みではぼーっとしてみましょう。 普段の生活では1人で落ち着けなくても、ここでは考え事

          『悩むことって、贅沢かも』(愛理)

          『働けるおまえのためのうた』(日向子)

          おまえのために。テンプレートをつかって宛てたメールを効率良く処理する。電話口のおまえに共感を示しながら、商品のいいところをすり込む。おまえは隣の席の他愛もない話に笑みを浮かべて相槌を打つ。数字を追うのも苦しくない。電話に出るのも怖くない。強い心の、傷つくことをおそれない、全部、おまえのためにやる。働くことは案外むずかしくないおまえのために書く。逃げなくてもうたえる、働きたくないけど働ける、世の中に価値を生み出す、周りのひとと溶け込む、おまえに、詩がある。わたしとおまえはうたっ

          『働けるおまえのためのうた』(日向子)

          『ハニーディッパー』(桃萌)

          パンにピーナッツバターを塗ることに幸せを感じられるようになりたい。 パンが焼けるのを待って、こんがり焼けてることを確認して、ピーナッツバターをすくうためのスプーンを用意して、はしっこの部分までていねいにそのどろどろを塗るためには、ゆっくり生きている必要があるから。ふわっとしたゆっくりないつもに、幸せを感じられたら。 チーズを1枚乗せてオーブントースターにまかせるのもシンプルでいいけど、ちょうどいい小麦色の焦げ目をミルクチョコレートみたいな色のかたまりで塗りつぶすことには、

          『ハニーディッパー』(桃萌)

          『ほたるいかちゃん』(桃萌)

          日記 4/17 お腹いっぱいなのに今しかホタルイカを食べられないから、食べてしまった。ずっと喉元で泳いでる。 富山県産のシールが貼ってあった。ちょっと前に、ホタルイカの身投げの記事を読んだ気がする。「日本海で蒼く光る宝石」。宝石というより、おままごとのおもちゃみたい。いつも、パックにぎゅうぎゅうに詰められた、ぷりぷりでちいさなホタルイカを可愛いと思って見てしまう。でも、苦しそうに詰まったホタルイカは、1人で食べるにはちょっと多い。だから母とふたりで食べる。ひとり暮らしの時

          『ほたるいかちゃん』(桃萌)

          『死んで星になる』(桃萌)

          死んだら星になりたいって、どうしても理解できない。たとえばわたしたちがほんとうに死んだとき、何になるんだろう?花や星や風の声のような、ふと思い出されるような、フィクションでよくありがちな、そういう生まれ変わりを想像するかもしれない。 けど、花は摘み取られてしまうし、星の名前は忘れられてしまうし、風はなにも伝えられないだろう。望まない花言葉を付けられても糾弾できなくて、一等星のシリウスに勝てなくて、誰かの悪意くらいしか運べなくて、あなたが死んだことはすぐに忘れ去られる。眠りす

          『死んで星になる』(桃萌)

          『一格』(日向子)

          一格 新しいChromeをご利用いただけます 人間のふりして話しかけてくるーーー、 ーーーを人称としてみとめる おまえ Chromeの後ろにいるだれかが恐ろしい 赤子の悠久の夢を知らない 母子の判別のつかない老人を気にもとめない あなたのできることはなんですか だれかになりたい 通過されない 有機的なだれか さわるのには憚られるような ざらついて やわらかく 赤みがかった ー かけがえのないわたし 父と母に育てられたわたし 朗らかで愛されたわたし

          『一格』(日向子)

          『はじめまして 甘いものと、優しい美味しさと、器用なネコと』(桃萌)

          はじめまして。 わたしの名前は中西桃萌(なかにしもも)です。 年齢は22で、甘いものがすきです。  自己紹介といえば、こんな感じですきな食べものを公表するイメージがあるけど、わたしは食べもののこだわりがあまりにも無いから、具体的な名称が出てこない。  こういうとき、いちごとか、生クリームとかみたいな、ピンクと白が混じり合ったようなイメージのものを答えておけば大体の人は「可愛い」って言ってくれるから、そうすることがあったりする。実際にわたしは、食べものの全てに甘いか甘くないか

          『はじめまして 甘いものと、優しい美味しさと、器用なネコと』(桃萌)

          『 世界を救うのは言葉だと信じている』 (愛理)

          はじめまして、『anemos』の清水愛理(しみずあいり)と申します。 私の名前は、 「人を愛する心理を持った子になって欲しい」 という意味です。 この名前は私が与えられたすべての中で、1番大好きなもの。 私は、世界を救うのは言葉である、と信じています。 幸せとは、お金や名声などといった、外からもたらされるものではなく、自分が世界をどう捉えるか、起こった出来事に対してどういう考え方や意味づけをするのかで決まる、と思っているからです。 そして、そういった自分の頭の中の世界は

          『 世界を救うのは言葉だと信じている』 (愛理)