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頂点に立つことの意味 - 2位じゃダメなんですか?

世には様々な論争があるが、そのひとつとして心に残る有名な論争がある。

2009年の民主党政権での「事業仕分け」を、このセリフとともに記憶している人は多いだろう。「2位じゃダメなんでしょうか」。ちょうど13年前の11月13日、参院議員の蓮舫さん(54)が放った言葉である。

読売新聞の記事

詳細は次の読売新聞の記事に書かれてある。

論争は2009年に起こったのであるが、それが13年後の2022年においても新聞社が記事として取り上げるほどの有意義な論争だ。



1.コンピュータは道具である

コンピュータは道具であるという意味で、自動車に行うのと同様の評価ができる。

自動車は使用目的に合わせて仕様が決まる。
速い車もあれば、積載重量の大きい車もあり、見た目の豪華さが重視される車もある。
速度の優劣だけで自動車の良し悪しは評価できない。

何に使うのか、という目的が先にありきなのだ。
コンピュータも同様であって、中央演算処理装置の速度だけで評価できない。

購入者の立場からすれば、処理速度は絶対ではない。価格も重要な条件だ。使用目的も考慮することになる。

スーパーコンピュータを評価するにあたって、処理速度だけしか言及しないのであれば、評価のあり方として偏っている。
「世界一」という、小学生受けを狙ったキャッチフレーズを、日本国の科学技術力の評価の言葉として使うには、幼稚だ。

「世界一の研究には、世界一の装置が必要です」
「国民に夢を与えます」
 説得力に欠けるのは明らか

読売新聞の記事


2.御用学者に欠けていた視点

世界一が良いとする発想は、戦時中の大艦巨砲主義と同じだ。
科学を取り扱っているにも関わらず、精神論で美化している。
御用学者ごようがくしゃの発想は、戦前も戦後も変わっていないようだ。

有識者であれば、使用目的やそれに沿ったシステム全体のバランスを考えるのは当たり前だ。
バランスの良いシステムを構築するには諸般の高い能力が求められる。
1個の事柄にコダワり、単純化し、徹底することは比較的簡単だ。

常に「何のためにやっているのか」を問い続ける必要がある。御用学者には、この問も解も無かったのだ。


3.頂点に立つことの意味

頂点に立つことには、意味はない。

システム全体を見渡して、目的に沿って、個々のパラメータを最適化するのが正しいやり方だ。
この場合、「システム全体」と「個々のパラメータ」は入れ子の関係にある。
システム全体と言っても、それは、さらに上位のシステムの立場から見れば、1個のパラメータだ。

1個のパラメータだけを世界一にすることは愚かしいことだ。
システム全体を世界一にした場合であっても、その世界一は、さらに上位のシステムから見た場合、1個のパラメータでしかない。

人類にとって有意義な目標の究極の上位にあるのは、実態の無い、抽象的な目標になる。
これを敢えて例えて言うならば、数学のようなものだ。
また、「何故、生きるのか」という問いにつながる。

生物というものは、究極的には、数学かもしれない。そういう意味で考えると、生きることに意味は無いのかもしれない。

生きる意味が無いとするならば、では何故苦痛や恐怖・不安そして意識というものが存在するのかが疑問になる。
仮に3秒後に死ぬのであれば、その3秒間に感じる恐怖や苦痛には何の意味があるのだろうか。

意義のある個々の目的を遡ってさかのぼって行くと、究極きゅうきょくには、こんな哲学的な問があるのではないだろうか。

宇宙全体を見渡して、自分の立ち位置を見てみれば、頂点に立つことには意味は無いことが見えてくる。


4.知性が未来を拓く

生物にとって、種の中で優位に立つことは生存には有利だ。そういう意味では、頂点に立つことには意味はある。個体が頂点を目指すことによって、結果として、種の維持に有利になる。(この議論の主語は生物であって、人間ではない)

残念ながら、世の中には、何の意味もなく頂点を目指しているものがある。
それはスポーツだ。

オリンピックでの金メダルや競技力の向上には、何の意味も無い。
何故なら、頂点であること自体に価値を置いているためだ。
生命の存在意義への問や解につながる上位概念が無いのだ。
「頂点に立った!すごい!ああ、うれしい!」....それで終わりだ。

スポーツなどのような上位概念の無い価値観は、他者の精神を支配したがっている為政者いせいしゃにとっては都合が良い。また、信心しんじんしている当事者にとっても安心感を与えてくれる。

上記の読売新聞の記事では、「世界一の研究には、世界一の装置が必要です」「国民に夢を与えます」という文言は幼稚である、という趣旨で語られていた。

しかし、残念なことに、このような幼稚な文言は、教育やメディアで正々堂々と世間向けに使われている。

日本は既に終わっていると感じてしまう。

宇宙規模で見た場合、人類が生存できる時間はほんのわずかだ。
そのわずかな時間に、何に苦しみ、何を考え、何を残そうとするのか。
それとも、どうせ何も残らないのだから楽しめば良い、と考えるのか。
少なくとも、スポーツで頂点に立つことはどうでも良いことであって、こんなことに税金を使うことは無駄だ。

人類は多くの課題を抱えるが、事実を見つめ科学的に考えてきたのも人類だ。
知性が未来を拓く。
そんな人類への夢を抱き、私は、スポーツを否定する。

以上

#蓮舫 #読売新聞 #スーパーコンピュータ