見出し画像

美しき校歌

*これは2014年4月の原稿に加筆修正したものです

 新学期がスタートしました。県内の小中学校は始業式や入学式の準備で大忙しでしょう。
学校の「儀式的行事」の際に必ず歌われるのが校歌です。
 小学校新一年生は、椅子から身を乗り出して初めての「校歌」を聞くでしょうか。
 新中学生は真新しい制服にちょっぴり窮屈な思いもしながら、ステージ横の壁に掲げられた「校歌」の歌詞を目で追いながら聴くのでしょう。
 私の住む秋田県大仙市には、新入生や来賓が驚かされる校歌があります。在校生の中には貧血で倒れる人が出ることもあるという、伝説の校歌です。
 その複雑な構成、10分にも及ぶ演奏時間の長さから「日本一」と世に言われている大曲中学校校歌「よく生きよ 若人よ」です。独唱あり、詩の朗読あり、実に素晴らしい交声曲です。1学年10クラスという時代もあった大規模校だからこそできたのでしょう。
 ところが、大曲中学校よりもずっと小規模であるにも関わらず、この「よく生きよ〜」に勝るとも劣らない校歌を歌っている中学校が市内にもう一つあることはあまり知られていませんでした。
 それが大曲南中学校の校歌、「世界の美の中に目ざめよ」です。
 大曲中学校と同じく本郷隆作詞、佐藤長太郎作曲ですから、テーマや曲の構成が似ているのは当然と言えば当然で、こちらも7分に及ぶ壮大な曲です。
 美しく華やかなピアノの前奏に導かれ、黎明を思わせる男声が静かに厳かに響きます。雪解けの優しさを感じさせる女声の旋律、続いて自然の美しさを讃える詩の朗読。もはや中学校の校歌というレベルではありません。
 「校歌を主題とする交声曲」とありますから、集会や朝礼では短縮版を歌っているのでしょうが、このような素晴らしい校歌を歌う中学校がこの大仙市に二つもあるということに私は誇らしさを覚えます。
 秋田県といえば、県民のほとんどが「秋田県民歌」を朗々と歌い出すと言って驚かれますが、歌を愛し、音楽を愛し、ふるさと秋田を愛した先人たちの魂が後世に受け継がれているからに他ならないでしょう。
 先日、大曲南中学校120周年を記念して式典が行われました。市長他の多くの来賓を迎え、保護者も参列し、盛大に行われた式典を締めくくるのはもちろん「世界の美の中に目ざめよ」です。
 万来の拍手。
 厳かな式典にも関わらず、感動のあまり「ブラボー!!」と叫んだのは、もちろん私ですとも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?