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女性性機能障害なんかなぁ

私が子どもを設けようか悩んでいた理由の一つに、
性行為が怖い・過度に痛いと感じる現象があった。

子どもを『産まないか産む』か以前の問題だ。悩みを抱えていた10年以上前は、調べても女性性機能障害にヒットしなかったと思う。

私の場合は、女性性機能障害のなかでも、性器・骨盤痛/挿入障害に当たるのだと思う。器質的には問題はないらしいので、性交疼痛は心理的な問題なのだと思う。
”痛いであろう”予期不安が強いために、身体が過緊張になるのかなと自己分析している。
その”痛いだろう”は何からくるものなのか。
挿入時の多少の痛み……若い頃にに見聞きして知り得た情報ではあるが、それだけで、人生に支障を来すほど認知が歪むとは思えない。
なんとなく思い当たる節がある。

高校生のとき、バス停から一人で歩いて帰宅していたある日のこと。
普段は人通りが少ないわけではない一直線の道。
その日は、曇っていたのか薄暗い天気だったのは覚えている。
携帯電話を手に持ちながら歩いていて、ふと左後ろの自分の影に視線を向けた。
自分のすぐ後ろを、同じペースで誰かが歩いているのだ。
しばらく、気付いていないふりをして歩き続けた。
携帯電話を見るふりをして、再度左後方の影を見た。
すると、自分より背の高い人が腰辺りで包丁を持っているように見えたのだ。
その瞬間、恐怖でバッと後ろを見て、そのまま家まで走りぬけた。
一瞬で見て取れたのは、男性がズボンを下げて性器をだしていたのだ。
家に到着するまでは、後ろを一切振り向かなかったので、その男性がその後どうしたのかは知らない。
帰宅後、いつもと様子が違う私を見て、在宅だった兄がバットを持って家の周りを見に行ってくれた。見つけることはできなかったらしい。
その日、父親は出張で不在。母親が帰宅後、この出来事を伝えた。
恐らく、警察には連絡していないのだろう。聴取とか受けた記憶はない。
この出来事については、これだけで終わったのだ。
その後しばらくは、遅い時間になると母親がバス停まで迎えに来てくれることになった。フォローはそれだけだ。
当時の私は、平穏な毎日を繰り返す中で、この出来事は深追いしない掘り起こさない記憶として処理していった。
しかし、大人になって思い返すと、包丁で刺されるかもしれないと死の恐怖を一瞬感じたのだ。包丁かもしれないと思ったモノが実際は男性器だった。この経験から、男性器=死ぬかもしれない、痛い、怖いといったスーパーネガティブなイメージにつながっているんじゃないかと思っている。
これは、心理師など専門家の解釈ではないく、完全に自己解釈なので、本当のところは知らない。
容易に相談できる話題でもない。

そして悩みの、どうやって妊娠するかだ。
性行為をするにしても、怖いのだ。
普段仕事で疲れて帰って、夜にパートナーと何時間もかけてするほど体力も精神力もない。ほぼ、途中で無理!となり、終わるのだ。
絶対に続かない。

一度勇気をだして…というか心が追い詰められて、産婦人科に相談に行ったことがある。性交疼痛のみの話をしたが、妊娠希望があると。
医師は、優しそうなおじいちゃん先生だった。
内診後、「お守りみたいなものだが、これを半錠のんでからしてみなさい」と処方してくれたのは、抗不安薬だった。筋弛緩剤の作用もあるらしいので、挿入時に過緊張になる私には効果があるかもしれないと少し期待した。

効果は無かった。
そもそも内服量が半錠の指示から、プラシーボ効果狙いなんだろうなと勘ぐっていたところもある。
だけど、内服対応してくれた医師には感謝している。
当時はなす術なかった私に、一縷の希望をくれたし、傷つかないようにとかけることばにも配慮してくださったと思う。
初めて、第3者機関に自己開示できたのも一歩前進だった。

内服を試しながらも、他の方法も模索した。
見つけたのは、シリンジ法だ。
精子をトレイに入れて、それをシリンジで膣へ移す。
最近は、ネットで検索すれば容易にシリンジキットがヒットする。当時はメジャーではなく、射精障害やEDなど男性側のサポートとしての方法という紹介文だった。
シリンジの細さであれば、挿入できるかもしれない。
これなら、精神的にも時間的にも体力的にも負担が軽くなり、頻回にチャレンジできそうだ。
妊娠目的で性行為におよび、途中で失敗すると、罪悪感がものすごいのだ。
シリンジ法であれば、妊活自体は達成できる。
ありがたいことに、夫も快く引き受けてくれた。

そうして、妊娠できたのである。
産後は、触診への抵抗感は和らいだ気はするが、性行為はしていないので分からない。心理的な問題なので、性機能障害の程度は産後だろうがあまり変わらないと思う。
今は子どもが一人いてほしいという希望は叶ったので、性に関しては悩みとしてカウントしていない。
そんなことを忘れていたころに

「どうやって産まれてきたの?」という子どもからのメジャーな質問から、
最近は「どうやって赤ちゃんができるの?」という一歩高度な質問ができるようになった。
一般的な説明をするが、内心"あなたはシリンジで移したんだけどね………”と後ろめたさを全く感じないわけではない。


心理的な原因で性器骨盤痛・挿入障害の悩みを持つ方に向けて、試したことを以下に列挙しておく。(オリジナルも含む)
●潤滑剤の使用
●パートナーに触れてもらうことに慣れる。数時間かけて挿入する指を増やしていく練習をする。
●少しでも筋肉が弛緩するようにと思い、性行為前に長い入浴時間を設けた。
●身体のストレッチを行う。
●抗不安薬の使用
●挿入障害の克服ではなく、妊娠目的のみであればシリンジ法
私は利用機会を持てなかったが、
●精神療法…認知行動療法やマインドフルネス認知療法
●理学療法士による骨盤底筋トレーニング
もあるらしい。
だが、実際は、紹介してもらったりリハビリにつないでくれる病院は少ないんじゃないかと思う。そもそも、病院に相談するにも心理的なハードルが高い。


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