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年末年始の憂鬱

夫が職場で鬼柚子なるどでかい柚子をもらってきた。
皮を剥き、白いわたと果肉を砂糖で煮詰めて柚子ピールなるものをつくってみる。
完成したのはCookpadの見本写真とは似ても似つかない、あまりおいしそうな見た目とはいえない、茶色のぐちゃっとしたものである。

ため息をつき、余った柚子の皮を浮かべた湯船で母親からのLINEを頭のなかで反芻していた。
さわやかな香りのおかげでうじうじする心がちょっとだけ軽くなる。

「あんた、年末年始の予定は?」
まだ決めきらないまま、茶色のぐちゃっとした柚子ピールをつまみながらnoteを書いている。
見た目に反して意外とおいしいのがまだ救いだ。


実家に帰るにはどうやっても半日はかかる。
往復の時間と労力を考えると、せっかく帰省するのなら数日では割に合わない。
せめて、2週間。
そこはだって、フリーランスだし。

クリスマス前から三が日までか。
はたまた年末の夫の仕事納めから成人式明けまでにするか。

どちらにしても、楽しみ半分、気の重さ半分である。


母親が「年末年始どうするの?」と問うてくるように、この時期は「クリスマスの予定は?」とか「お正月の予定は?」といった会話が挨拶代わりである。
「今日も寒いですね」と同程度の単なる会話のきっかけであって、尋ねるほうも深い意味はないだろう。

詳細をぼかして「実家でのんびりします」とだけ返しても「いつからお休みですか?」とか「どのぐらいご実家で過ごされるんですか?」と返ってくるのはなぜだろう。

「ピークをずらして早めに帰ります」にしても「成人式明けまで帰ります」にしても、その次は9割の確率でこう返ってくる。

「ご主人は?」

夫が休暇のあいだは夫の実家なり、うちの実家なり、夫と一緒に過ごす予定だ。
でも夫が仕事の正味1週間ぐらいはここで留守番してもらうことになる。

みんなご主人と一緒じゃないことがそんなに気になるのだろうか。
はたまたご主人を置いて自分だけ帰省するなんて勝手が良いですねとやっかみたいのだろうか。

芸能人でもインフルエンサーでもないのに気が重いなんて自意識過剰なのかもしれない。

でも今まで何度も、何人からも、言われてきたのだ。
クリスマスを夫婦で過ごさない年も、年末年始を夫婦で過ごさない年も。

夫だけが帰省して、わたしは留守番した年もある。
「え?ご主人の実家についていかないんですか?」と言われる。
わたしがひとりで実家に帰れば「自由でいいですね」と言われるのに、同じことをしている夫に対して「自由でいいですね」という人はいない。

わたしの実家に夫が顔を出さなくても「まあ、気を遣いますしね」で流されるのに、夫の実家にわたしが顔を出さなければ「え?一緒に行かないんですか?」と疑問を呈される。


たしかに世間一般的に見れば自由奔放な「妻」だろう。
でももうこりごりである。
どれもこれも夫婦で話し合って決めた予定なのに「ご主人」と「奥さん」でこんなにも言われることに差があるのが。

夫はすでに両親を亡くしている。
だから「えいみさんは帰れるときに帰ってあげなよ」と理解を示してくれている。
それで完結しているはずなのだ。


「ご主人は?」と聞きたくなるのもわかる。
だから聞かないでくれとは思わない。
でもその返事に対しては

「理解あるご主人ですね」
「ご家族との時間、ゆっくり楽しんできてくださいね」

もう、このどちらかたったひと言を所望する。


サンタさん
おだやかな正月休みのプレゼント、まってます。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたは年末年始、どこで誰と過ごしますか?

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