【創作ショートショート05】蘭の花はだれのもの
蘭の花は、ある日突然そこに置かれていた。
朝、出社したわたしは、スチールでできた書類棚の上に大きな白い蘭の鉢植えがあることに気が付いた。
「立派な蘭の花ねぇ」
わたしのすぐあとにやってきた、先輩の上野さんが感心したように呟いた。たしかにその蘭の花は、しなやかな細い茎の先に厚みのある花をいくつも咲かせていた。近寄れば、甘ったるい香りがかすかに鼻をかすめた。
「誰が持ってきてくれたのかしら」
上田さんは、しげしげと鉢植えを眺めている。わたしも一緒に葉の間をかき分けてみたが、こ