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#立川貴一
「サマースプリング」公演に寄せて 立川貴一
三野くんとはじめて一緒につくった作品は、サミュエル・ベケットの「film」を原案とし、彼が演出した「Prepared for Film」という演劇だった。
論文のような文章の大群、そこに多少の台詞がある、それが当時の彼の台本だった。
「これは、犬です」
「これは、猫です」
「これは、花です」
「これは、鳥かごです」
「これは、オウムです」
「これは、カーテンです」
「これは、窓です」
犬なら
平成の終わりに読み返す
思うところあって、自著を読み返す羽目になっているのですがまあ、それは今年で平成がどうやら終わるらしいぞという、終わったらいいことばかり起きるんだよ、東京五輪だって大阪万博あるんだ。日本はこのあと、経済的に成長していくぞ。健全な肉体に健全な精神は宿るのだ。という意気揚々とした前向きなことばかりが目につく。昭和の終わりの憂鬱なムードから平成のはじまりのどんちゃん騒ぎは時代が鬱から躁へ変わった、気分の
もっとみるサマースプリング (吉田アミ) 書評 (想定媒体 個人Webサイト) 字数(1406文字)
この人はなんて嘘つきなんだろう。
読みはじめた瞬間に思った。
こんな出来すぎた話があるわけがない。これは流行の自伝的小説の仮面をかぶったフィクションだろうと思ってしまった。そう確信したのは舞台となっているのが、1989年の名古屋で中学生という設定だ。何を隠そう、この僕もまた1989年に名古屋で中学をすごしていたから。
しかも、どうも舞台となった中学校は、僕が通っていた中学と同じ(森山