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美味しい料理と、とっておきの青春!(栗栖ひよ子:『菓子先輩のおいしいレシピ』)

栗栖くりすひよ子さんの菓子かのこ先輩のおいしいレシピ』(スターツ出版文庫)を読了しました!雑貨のような可愛い表紙を見て、ずっと読んでみたかった作品です。

今作は「食」をテーマにした青春小説となっていて、恋愛ものが多いスターツ出版文庫の作品としては珍しいタイプの内容でした。

主人公のこむぎ(主人公の名前も可愛すぎませんか?)は人と接するのが苦手で、学校ではひとりで過ごすことも少なくありませんでした。しかし偶然知り合った菓子先輩にミネストローネを作ってもらったのをきっかけに、こむぎの世界が少しずつ広がっていきます。
菓子先輩のアドバイスを頼りに、美味しい料理の力で自分の考え方を変え、友達も増やしていくこむぎの成長がとても魅力的な物語でした。

こむぎは人付き合いが苦手な自分をコンプレックスに感じていたけど、友達のみくりちゃんや柚木さんは逆にこむぎのミステリアスなところ(作中ではこむぎを「猫みたい」と話していた人が多かったです)に惹かれていたことがわかっていきます。自分は短所だと感じているところが、他人からすれば魅力に見えているのかもしれない。今作ではそのような気付きがありました。

また、こむぎたち料理部員に食を通したアドバイスをしていた菓子先輩ですが、一方でみんなとの食事には積極的ではなさそうなところに私は読んでいて疑問に思いました。菓子先輩が食事に積極的ではなかったのには、彼女が背負う家族と料理へのトラウマが関係していたことが判明します。

大好きな先輩の味覚を取り戻し、みんなと一緒に美味しい料理を食べるために、こむぎが菓子先輩の味覚を失った原因であり、母との思い出の味でもあるキーマカレー作りに奮闘するシーンでは、こむぎが今までどれだけ先輩に救われてきたのか、その愛の大きさを感じられました。キーマカレーの意外な「隠し味」も印象的で、作中のレシピを参考に試してみたくなりました。

菓子先輩は卒業してしまいましたが、料理部の活動はまだまだ続きます。物語のラストでは、こむぎが高校生活に不安を抱いている新入生を勇気づける場面が描かれ、こむぎもきっと菓子先輩のような愛される先輩になっていくのだろうと予感しました。

菓子先輩への憧れも、料理部で楽しい仲間と過ごした日常もこむぎにとって一生忘れない良き思い出になっていくと思います。友情あり、ちょっぴり切ない恋愛(こむぎが浅木先生に失恋するエピソードは悔しい気持ちにはなりますが、彼女の心を変えた出来事であったのは確かだと思います)ありと、少女の青春のすべてが詰まった「おいしい」物語でした!

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