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ずっと気になっていた青春小説のアンソロジーを読みました

高校生の頃によく読んでいたような青春小説が社会人になった今でも大好きです。

いろんな青春小説を読んできた中、最近は切ない恋愛だけでなく、今を生きる人々の悩みと向き合い、解決を後押ししてくれる作品も多いと感じています。その中には私が高校生の頃にはなかった新たな常識に触れている作品も少なくはなく、今読んでも学びとなる作品も数多くあります。

先日、私が読んだスターツ出版文庫の『君の傷痕が知りたい』というアンソロジーは「今」を知れる青春小説としてとても印象深かったので、今回はこちらの作品を紹介します!

『君の傷痕が知りたい』感想

まず今回のアンソロジーの1番のテーマは、「高校生たちの生きづらさ」ではないかと思います。家族への不満や進路といったいつの時代も共感できるテーマもあれば、多様性やマスク生活の悩みといった現代らしいテーマを描いた作品も何作かありました。

収録作に登場する高校生たちには容姿が優れている、生活に恵まれているといった他人からすれば羨ましい境遇の子もたくさんいました。
でも彼らの心の中を見てみると、家族にいろいろ制限されるのが辛い、周りからの印象のせいで本当の自分を見せることができないなどの複雑な悩みもそれぞれの物語から感じとれました。

例えば汐見夏衛さんの『君の傷痕が知りたい』では、主人公の泉美が親からの期待に応えようとする自分に苦しみ、それを乗り越えるまでの物語が描かれていました。他の作家さんの作品も「悩んでいるのは自分だけではない」と前向きな気持ちになれる内容が多かったです。

私もいろいろなことを他人と比べてしまいがちなところがありますが、このアンソロジーを読んだら「誰にだって悩みがあるのは当たり前のことなんだな」と思い、自分の弱さが自然と気にならなくなってきました。

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私がこのアンソロジーの中で1番好きだったのが、天野つばめさんの『世界を壊す爆薬』という作品です。この作品は主人公の栄介が、「世界を壊したい」と語るクラスの女子・姫花の隠された思いを通して、自分には見えていなかった世界を知っていく物語でした。

「世界を壊したい」というセリフや、タイトルの「爆薬」という過激な言葉。それらには姫花がこれまで誰にも話せなかった秘密が関わっていて、大人になった栄介が姫花の願いを叶えるために「爆薬」を作る終盤のシーンには心を掴まれました。この物語における「爆薬」とは、生きづらい世界を少しでも変えるための魔法のような存在だと私は感じられました。

収録作の中でも特にセンシティブなテーマが強い天野さんの作品。私も栄介と同じように知らない世の中・気持ちを学ぶことができた傑作でした。この魅力的な物語が読めただけで今回のアンソロジーを手にして良かったと思いました。作風もとても好きだったので、天野さんの他の作品もいつか読んでみたいですね!

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高校時代の懐かしい気持ちに浸れるだけでなく、「今」を知るきっかけとしてとても勉強にもなる1冊。中にはスターツ出版文庫の長編作品にはなかなかない雰囲気(女の子同士の絆がメインの作品とか)の短編もあり、ちょっぴり新鮮な青春小説の魅力も味わえました。

どの作品もそれぞれの選択で厳しい世の中に立ち向かっていく少年少女たちの姿が眩しく、私も過去よりもその先のなりたい自分を意識することを大切にしていきたい!と思えたアンソロジーでした。

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