【数学コラム】コーシー・シュワルツの不等式
2回目の数学コラムです。今回は大学数学以降によく出てくる「コーシー・シュワルツの不等式」を取り上げます。ですが、コラムではまず最初にコーシー・シュワルツの不等式の簡単バージョンをみていきます。これを理解することで、拡張されたコーシー・シュワルツの不等式の雰囲気も掴むことができると思います。
今回、まず証明する不等式は以下の不等式です。
この不等式の成立は高校1年生で習う数Ⅰの範囲で証明することができます。実際、以下の通りに証明できます。
いま証明した不等式を違う形で表わしてみましょう。違う形とは数Bで出てくるベクトルの形です。$${\vec{x} = (x_1, y_1 ),\, \vec{y} = (x_2, y_2 )}$$と置くと先ほどの不等式は次のように表わせます。
最後に示した不等式がいわゆる「コーシー・シュワルツの不等式」です。つまり、『2つのベクトルのノルムの積はその2つのベクトルの内積以上である』というのが「コーシー・シュワルツの不等式」です。
ここで大事なのは、「集合に適切なノルム、内積を導入すればベクトル空間の任意の2つのベクトルに関してこの不等式は成り立つ」ということです。適切なノルム、内積の条件はこのコラムを冗長にしないために割愛します。もし興味があるかたは調べてみてください。
次に問題になってくるのは、「集合に適切なノルム、内積を導入すればベその空間(内積空間)の任意の2つの要素に関してこの不等式は成り立つのか」ということです。これを次に証明していきます。
ここで紹介する証明方法は大学1、2年生の理数科の人であれば誰しもが習うであろう有名な証明方法です。面白いのが、この証明方法は高校数学の範囲で証明できるということです。
もう一度証明したい不等式を載せます。ここでは、ベクトルと区別するために単に$${x,\, y}$$という変数で要素を表わしています。
それでは証明に入っていきます。そのためには実変数$${t}$$を導入して、$${|xt+y|^2}$$という式を考えます。まずこの式はノルムの2乗なので0以上であるということが大事です。
では、この式を展開します。
この式をtに関する2次関数とみると、先ほど述べた通り$${|xt+y|^2 \geq 0}$$より、この2次関数の判別式$${D}$$は$${D\leq 0}$$を満たします。ゆえに以下のように証明したい不等式を証明できます。
これで一般の内積空間に関するコーシー・シュワルツの不等式の証明ができました。2次関数の$${x}$$軸との交わりを考えるためだけにあると思われていた2次関数の判別式がこんな所で登場するなんて面白くないですか?
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