「水島大宙のDaichuショーROOM!」書き下ろし台本〜第一公演「Heating」〜

2022年6月12日開催
「水島大宙のDaichuショーROOM!」より
リーディングパートに書き下ろさせていただいた台本です。
快く公開の許可を下さった大宙さん、ありがとうございます。

こちらは第一公演 「Heating」にて朗読頂いたものです。
第二部は後日公開いたします。

二部で前後編、セットになっております。
当日使用したBGMも順次YouTubeに公開いたしますので、是非皆さまも読んでみてください🙏✨



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毎週金曜日の夜。
通い慣れたこの店で、旧い友達に悩みを聞いてもらうのが、ここ数ヶ月、お決まりのパターンになっていた。

「こんばんは。いつものお願いします」

そう言いながらカウンターに腰掛けると、マスターはにこやかに出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。今日はお連れの方は一緒じゃないんですね」
「遅れて来るって。良い歳した男友達の恋バナ、毎度毎度聞いてくれるめちゃくちゃ良いやつですけど…異常なくらい仕事が大好きで」

頭の中に、ワーカーホリックな友人の顔が浮かんだ。
僕なんかよりずっと頭が良くて、時々容赦ないことを言うけれど、なんだかんだ良いやつだ。

「ふふ。生き甲斐があるというのは、良いことじゃないですか」

マスターは笑って、僕のお気に入りのカクテルを用意してくれた。
「どうぞ」と差し出されたそれに、今夜の愚痴も止まらなくなりそうだな、とため息を吐いた。

「ありがとうございます」

そう言ってグラスを手にした。
手のひらの中に、冷たい氷で冷えた、ガラスの感触。
それをぎゅっと握り締めた時
僕の思考は、一口も口をつけていない琥珀色の液体の向こうに、毎日毎日想ってやまない、愛しい人の影を映し出していた。

ぼんやりと、世界の音が遠ざかる。
何度も繰り返し、繰り返した思考の渦は、今日も僕の意識を飲み込むつもりのようだ。

僕はこの混沌とした感情を、誰にぶつければ良いのだろう。
君、それとも友達、それとも自分?
混濁した意識の中
まるで天に祈る亡者のように、僕は、弱々しく、瞼を伏せた。




神様と云うものが居るなら
偶然を生成するその行為に
どんな意味を見出しているのだろう

繰り返し 繰り返し生み出す生命が
今この時の僕みたいに
声にならない悲鳴をあげている

求めて 求めても 掌をすり抜けていくもの
愛を求めて彷徨う人形を
どんな目をして見ているのだろう

君の声は心地がいい
僕の冗談に、声を上げて笑う姿
お互いに当たり前のようにそばにいるけど
お互いに当たり前のように
小さな距離を保っている

心に隠した想いの丈は
見ないフリをしているうちに
ひどく幼い獣に成った
育ててやる気もなかったはずが
いつしか 鋭い牙で僕の心に噛み付く
脆く幼い獣に成った

そいつの奴隷になってしまって
僕は慌ててそいつを抱えて
どこか遠くに捨てに行こうと
君の隣を離れてみたけど

それでも獣は
僕の心の真ん中を我が物顔で走り回って
まるで子どもの鳴き声みたいに
君の名前を何度も呼ぶんだ

もしも神様と云うものが居るなら
神よ、創造主よ!
偶然を生成する切ない行為に
どんな意味を見出していますか

僕の中に宿った命を
僕はどんな目をして見ていればいい?

求めて 求めても
僕らは決して満たされはしないんだ
素直になる勇気も
自らを捧げる自信もなく
ただ、掌をすり抜けていくもの

その『愛』の形をした何かでしか
僕らは決して満たされはしないんだ



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