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次はまた30年後?注目のエゴン・シーレ展開幕!

すごい!レオポルト美術館!いますぐウィーンに飛び立ちたい…!というのが、見終わったときの感想でした。

2023年1月26日に開幕したばかりのエゴン・シーレ展。実は私、彼の描いた作品も生い立ちも、若くして亡くなったことすら、ほとんど知りませんでした。それがどうして今回の展示に興味を持ったのか、きっかけは数年前のNYにまで遡ります。

◆手に取った、たった1枚のカード

2019年秋、私は仕事で2ヶ月間NYに滞在していました。休日には美術館に足を運ぶことも多く、この日も以前から友人にオススメされていたノイエ・ギャラリーを訪れることに。

ノイエ・ギャラリーは、化粧品会社で有名なエスティー・ローダーの息子であるロナルド・ローダー創設の美術館。セントラルパークの東側すぐ横という好立地に、入れ替わりが激しく賑やかなNYの街では珍しく、ヨーロッパの雰囲気をまとって静かに佇んでいました。

Neue Galerie New York 2019

小さな入り口でセキュリティーチェックを受け、正面階段で2階へ。上がってすぐの部屋に足を踏み入れると、まるで別世界に迷い込んだかのように、グスタフ・クリムトの縦長で華やかな作品たちに囲まれたのを覚えています。

その中でも一際ひときわ人気を集めていたのが、「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I 」。映画「黄金のアデーレ 名画の帰還」でも取り上げられた、名高い作品です。

眩しい…!ゆっくりと近づいていき、正面で向き合えたときに出てきた言葉です。多くの金色で彩られたそれは、艶やかで優しく、包み込まれるようなあたたかさが感じられました。他の作品を見に回った後でも、幾度となくその場所に戻ってくるくらい、私はこの作品に魅了されました。

作品鑑賞をした後は、1階のミュージアムショップへ。やはりありました!アデーレのポストカード。けれど、上で見てきた美しさや衝撃を、それで補うにはあまりにも違いすぎる…。良すぎる作品を見るとどうしてもポストカードを買えなくなってしまう…なぜだか私にはそんなジンクスがあります。

そんなことを思っていた中で、唯一購入したのがエゴン・シーレのグリーティングカードでした。実は、この作品を見たのかは覚えていません…あまりにもアデーレの印象が強かったのと、ノイエ・ギャラリーは海外の美術館には珍しく撮影がNGだったため、正直に言うと、私の記憶力ではその辺りが曖昧です。

しかし、とにかくこのカードだけは絶対に買いたい、そう思ったことは覚えています。”私はクリムトに感動したのに、エゴン・シーレっていう人のを買うんだ…”と若干複雑な気持ちになりつつも、ブラウンでまとめられた色味と女性の凜とした姿に惹かれて購入しました。そのカード、今でも封を切らずに大切に保管しています。

Frau Dr. Horwitz with  Large Hat,1910

そんなエゴン・シーレとの出会いから約3年。2023年開催の展覧会をチェックしていた私は、シーレの名前を見つけてドキッとします。あれから彼の作品を調べてみて、なんだか裸が多いな、、と少し引いて見ている自分と、なんでこんなに裸ばかり書いているんだろう…?と興味をそそられる自分、そして変わらずに、色使いや描かれる女性像に惹かれる自分がいました。
そんな様々な気持ちを確かめるかのように、開幕して数日後の朝、私は上野駅に降り立っていました。

◆約30年ぶりの大回顧展

東京都美術館は(いつか東京都現代美術館と間違えないかヒヤヒヤして、毎回HPを念入りにチェックしてしまいます。。)9:30開館。7分前に着いた私の前には、20人くらいの列。展覧会のポスターを撮っていると、列に並んでいた人たちが動き出しました。どうやら5分前には門を開けてくれるらしい…初めて開館時間に来た私は、なんだか得をしたような気分になりながら、小走りで最後尾についていきました。

今回の展示は、第9章の「エゴン・シーレ 風景画」のみ撮影可能。それ以外は目に焼きつけておかなければなりません。シーレの他には、クリムトの作品や、エルンスト・ストールの「湖畔の二人」という名の知れた作品、そして彼らの作品以外にもオーストリア出身画家の魅力的な絵画が多く展示されていました。

中でも私が惹かれたのは、アルビン・エッガー=リンツの「森の中(《祈り》のための習作)」。タイトル通り、緑の木々が生い茂る森の風景画なのですが、ど真ん中に描かれた2本の細い幹がキラキラと輝いているように見えたと思ったら、まるで画面に吸い込まれていくかのように動けなくなりました。美しかった…。この中で家に飾りたい作品を1つ選んでいいと言われたら、間違いなくこの作品を選んでいたと思います。

そして展示中盤、待っているのは怒涛のシーレ作品です。今回のポスターにも採用されている「ほおずきの実のある自画像」、有名な「自分を見つめる人Ⅱ(死と男)」「叙情詩人(自画像)」がトライアングルを形成するように飾られた部屋から始まります。そこには、今までの空気感をガラッと変えてしまうような、独特でどこか緊張したような雰囲気さえありました。

自己に物凄く興味があることや、死を常に身近に感じていたことが伝わってきて、一瞬近づきがたい雰囲気もありましたが、それをどうにかやり過ごして見てみると、最後にはどうしてか見続けていたくなる作品でした。

その部屋を抜けて次に目に飛び込んでくる「母と二人の子どもⅡ」(おそらくピエタがモチーフ)も、かなりの破壊力。違和感のありすぎる作品でしたが(ピエロのように描かれた子どもの表情が特に)、そのアンバランスさになぜだか惹かれてしまうのです。

実は、最後の部屋に行く前にもう一度それらの作品を見ようと戻ったのですが、そのときにはもの凄く混雑していて(特に最初の「ほおずき〜」の部屋)、とてもじゃないけどゆっくり見れそうにない…ささっと横から確認して終了。やはり平日でも、11時を過ぎると途端に混んでくるみたいでした…!

また終盤には、珍しく照明を落とした暗がりの部屋が。並んでいたのは裸体画。暗闇に作品が浮かび上がるようにライトアップされた演出が素敵。鉛筆やチョークで描かれた線や、グワッシュ(不透明な水彩絵具の1種)で塗られた緑や赤などの色がより際立って感じられます。今回1番好きだった空間かもしれません。

そこを抜けると、いよいよ最後の部屋。1918年、シーレが亡くなった年に描かれた作品や、未完の作品が並びます。師であり、同じくその年に亡くなったクリムトの作品が一緒に並んでいるのも、泣かせるなぁと見入ってしまいました。また、横長の大きな作品「横たわる女」には、私を含め特に女性が、じっと立ち止まって見ている時間が長かったように思います。

さて、展示が終わって待っていたのは、映像が流れる小部屋。壁をちらっと見やると、「5分28秒」の文字。普段はなかなか時間の記載がないので、長くなってくると「一体いつ終わるんだろ…」と集中力が切れがちですが、5分くらいなら見れるなという気持ちなり、途中から見始めました。

内容は、画家エゴン・シーレのことを振り返るだけでなく、今回作品を貸し出してくれたレオポルト美術館館長のインタビューや、あちらの館内の様子も映したりと、映像でしか伝わらないことがたくさん詰まった貴重なものでした。ますますレオポルト美術館に行ってみたくなる…!そんな気持ちにさせてくれる5分間です。

◆展示を見終わったらやるべきこと

そして恒例、展覧会終わりのミュージアムショップ。トートバッグやTシャツ、お菓子、鉛筆セット(←これめっちゃ迷いました!)…といろいろありましたが、今回良かったのはポストカード!通常の展覧会のポストカードはサイズが1種類か2種類ですが(主にハガキサイズ)、エゴン・シーレ展に関しては、種類がすごい!作品が縦長なら縦長、横長なら横長のままに作ってくれています。だから変な余白も生まれないし、そのままの形で手に入れられるのは嬉しい!私は特に、何か正方形で額に入れられるものはないかと探していたので、そのサイズで好きなものがあったことに歓喜!正方形って本当に珍しいんですよね。

ちなみにカードの裏を見ていて気がついたのですが、レオポルト美術館に混ざって宮城県美術館や豊田市美術館からもシーレの作品が数点来ていました。どこ所蔵なのかはそうやって知ることもできるから、ポストカードの裏面もよくチェックしてみると楽しいです。

あと注目すべきは、ミュージアムショップ出口!今後の展覧会のチラシと共に、現地のレオポルト美術館で配布されているであろう日本語冊子(黄色のもの)が置かれています。それが可愛くって…!開くと、クリムトの有名な作品「生と死」の一部分が色鮮やかにプリントされています。ぜひ見てみてほしいです。

そして、さらにその出口でやっておくべきことがもう一つ!でかでかと置いてある看板からQRコードを読み取って、アンケートに答えることです。なんと、回答した人の中から抽選で、次回展示が予定されているマティス展の無料観覧券が当たります!3分ほどで終わるアンケートなので(早いと1分くらい)、わずかな希望かもしれませんが、マティス好き・東京都美術館好きは忘れずにやっておくことをお勧めします。

また、東京都美術館入ってすぐのところにある、常設ミュージアムショップも見逃せません。今回の展示に合わせて、クリムトとシーレの各国のグッズが並んでいます。

私はレオポルト美術館に作品寄贈した方のご子息が書いた本を購入。表紙はシーレの自画像。その色味とハードカバーの質感があまりにも好みで…中身は英語ですが、、実際に家に作品があった人の話を聞けるってなかなかないことなので、辞書片手に読んでみようかなと思います。その他にも、クリムトとシーレのポストカードを1枚ずつ買いました。ヨーロッパに行く際には絶対に見たい作品です。

エゴン・シーレは、とにかく自分の好きに正直な人だなぁという印象。好きなものは好き、気になることはとことん追いかけていく…そんな真っ直ぐな気持ちを受け取った展覧会でした。欲を言えば、「ほおずきの実のある自画像」の対となる作品もレオポルト美術館から持ってきてもらって、並んだ2つを観たかったな。

これ以前に彼の大規模回顧展が日本で開催されたのは、1991〜1992年と約30年ぶり。次はいつくるかわからない…とにかく行ってみることをオススメします!

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