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フリースクール活動日記 2024/05/10-経堂

 この日の目的地は馬事公苑。ほとんどのメンバーが最初にその名前を聞いた際にどんな場所であるのか頭を悩ました場所であった。「ばじこうえん」と聞くだけでは「馬耳公園」なのか「馬路公園」なのかわからない。直前までは、交通の便が良いところがよいという「府中競馬場派閥」と拮抗していたものの、最終的にこちらに軍配が上がった。この日、天気は晴れの予報。この少し前の日にはいきなり雹が降り出したために皆がずぶぬれになりながら避難するという事故が起こり、ここで体調を崩してはたまらないため1日は休息に充てることになった。
 この日は万全の状態で迎えたつもりであったが、花粉症の症状に加えて先日般若心経の17回連続読経を行ったことにより喉もかれてうまい具合に声を出すことができない。つまるところ、はたから見れば洟が出て咳が止まらず喉が痛いというまるで風邪の初期症状の典型的なもの。そのため体調不良になってしまった場合はすぐに帰宅するということをあらかじめ決めておき、全員が集まったところで馬事公苑へと向かう。勿論、いつでも帰ることのできるよう道もしっかりと覚えておく。
 そんなこんなで総勢18名が一団となって進んでいくわけだが、その途中いくつかの狭い道を通る際、邪魔になってしまっていたような気がしないでもない。加えて目的地の近くにある、とあるスタッフの母校「東京農業大学」へと向かう学生たちが思いのほか多いためにまるで道が封鎖されているようになってしまうのだ。
 その道をたまにやって来る車がいるため壁際に下がって道を空けるのだが、これがとても面倒で、こんなことをするよりも急いで先へと進んでしまったほうがはるかに良いことに誰かが気が付いた。それからは早いもので、東京農業大学構内を通り抜けて馬事公苑へと到着する。このあたりには日本に三本しかない流星刀が飾られている場所があるようで、時間があればそちらへと行きたかったのだが皆の気持ちは既に一刻も早く馬を見に行きたいという欲望に憑かれてしまっている。実際、今回の目的は馬を見ること。流星刀については今度自分で見に行けばよいのだし、場合によってはこのフリースクールでの学習にからめて(もちろんいつも出掛けているわけではなく、他の開催日はすべて教室での学習時間が主である)みてもよいわけだ。そんなことよりも、馬。馬を見に行きたいがためにここに来たのだから、せめて体調不良になろうともその目的だけは達成したいと思いさっそくメインアリーナの方へと向かう。入り口から何やら馬が飛び跳ねているのが望見できたからだ。

 レイセン曰く、翌日が関東学生選手権だそうで、その準備のためかこの日も練習などをやっている可能性があるのだという。それを聞いて喜び勇んだ皆と見に行ってみると、ちょうど障害馬術の最後のバーを飛び越えるところ。今にも次の馬が出てくるのではないかと期待して待っていたのだが、どうやら障害馬術の試合はこれで終わりだったようで、すぐに場内の清掃に移ったことからも次の試合がしばらくないことがうかがわれた。しばらくそれを眺めていたがそのうち何人かのメンバーが厭きはじめてしまったため、一旦はそこを離れて苑内一周を企てた。
 ひとまず周回走路を渡り、放牧場を見て回る。とはいっても真新しい何かがあるわけでもなし。じっくりと見れば楽しい場所ではあるのだが、この日の暑さも合わさってすぐにでも日蔭へと避難したい気分。水浴びをするメンバーなども見られる中、ついに武蔵野自然林のなかへと踏み込んでゆく。丁度良い涼しさ、心地よい風などによって一度ここに入ってしまえばしばらく居ついてしまうような場所。ここで弁当を食べた後眠気に逆らえずに仮眠をとらざるをえなくなった。

 そんな間、皆は「オリンピックテラス」や「ツリーハウス」の傍で鬼ごっこなどに興じている。今回は直射日光も受けないため前回体調不良で早退したカッパくんも変調を起こさず元気に走り回っている。それを横目に見ながら臥していたのだが、そのうち皆の姿が消え、その場に残ったのはブルーシートの上で寝る僕だけになった。
 どうもこの時スズメバチと遭遇してしまったメンバーがいたようで、それほど命の危険を感じる状況ではなかったようなのだがそれを知った皆が大混乱を起こし、荷物も持たずに「こども広場」へと逃げ出してしまったというわけだ。(その際に「二歩!荷物番頼む」などと口にしていた人がいたという話であるが僕は何も聞いていない)そういうわけで僕が体を起こして目にした光景は、大量の荷物のみが残ったものだった。

 その後様子を見に来たと思しきレイセンと遭遇、そのまま皆の荷物はほっぽり出して再度寝心地の良い場所へと移ることにした(だんだんと冷えてきたため)。
 そうして寝たり起きて皆と遊んだりを繰り返しているうちに馬術競技が始まって、そちらへと移り眺めて解散となった。なお、この日の体の不調は翌日にも持ち越されて音読の際にも声がかすれてうまく出ない事態となってしまったのだが、これはもしかすると風邪とかいうものではないだろうか。そうでないことを切に祈っている。

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