Shin Mizumoto

初めまして。 水本伸です。 音楽や本の話を中心に、たまーに取るに足らない与太話なんか…

Shin Mizumoto

初めまして。 水本伸です。 音楽や本の話を中心に、たまーに取るに足らない与太話なんかを書いております。 よろしくお願いします🙇‍♂️

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「旅する本棚」は読者の心の中に。

高校生の僕にとって、 本は"借りる物"という認識だった。 毎日のように図書室に入り浸っては本を借りまくった。無料で好きなだけ本を読める最高の空間だった。 そんな僕が本を"買う"ようになったのは、 お小遣いが上がった高校2年生になってからだ。 お金に幾分か余裕が出来た僕は、初めて本屋で本を買った。図書室のようにバーゴードを通すだけではなく、レジへ持って行き、現金を払って本を受け取る。 人生で初めて買った本が何だったのか、流石にそこまでは覚えていない。けれど、その本を大事

    • 真ッ冬『ホワイトエッセイ』全曲解説

      はじめに 2022年 12月3日 私のホームである静岡Sunashにて 真ッ冬の1st アルバムのレコ発ライブを敢行した。 1年に及ぶレコーディングを経てのライブ。 最高の仲間と共に迎えたこの日は、我々にとってとても思い入れ深い1日となった。 今回はそんな我々の作品について、1曲1曲「解説」という形で記事を書いていこうと思う。 様々な本から影響を受けて作ったことから、アルバム名を『ホワイトエッセイ』と名付けた。 アルバムのタイトルの通り、自分語りから成る我々が創

      • 「意味深だね。」ーAmayjigen『意味深海』

        僕のオリジナル曲で、 『意味深海』という曲がある。 オリジナルを作り始めてから丁度10曲目の曲で、かなり気合を入れて作ったのを覚えている。 作った当初、共演者やお客さんから「この曲ってどういう意味なの??」とよく聞かれた。 僕はその質問の答えを、 未だに持ち合わせてはいない。 僕の記憶が正しければ、 『意味深海』を作ったのは2017年。 とても寒い時期だった。 初めて「転調」することを前提に作った曲でもある。だからこそ、サビはシンプルで聴きやすい歌詞が良いと思った。

        • お寿司屋さんでギターを弾く夢。

          夢の中で何度も訪れる場所がある。 幼い頃によく母親に連れて行ってもらった 「〇〇寿司」だ。 当時から偏食気味だったボクは、行く度にハマチをしつこく注文していた。大将のOさんはそれを見てボクのことを「ハマちゃん」と呼んでいた。 Oさんは寿司を握りながらも常に親父ギャグをかますような愛想の良い人で、お客さんからも人気があった。ボクもその人が大好きで、お寿司を食べるよりも、Oさんと話すのを楽しみにしていた。 そんなOさんは、ある時にふと姿を消してしまう。母親が「何かあったん

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        「旅する本棚」は読者の心の中に。

          『飛島』ー覚えのないノートの端書きより

          R3. 4. 19. 飛島の港の近くに、小さな工場がある。 バイクを停めて、門扉の裏に取り付けてあるポストに日刊スポーツを投函する。バイクへの戻りしな、僕はタバコを咥えながら空を見上げた。 4月の早朝5時前。 日の出を控えた空には、霧が立ち込めたような曖昧な灰色、そのすぐ上を申し訳程度のオレンジが横たわっている。その手前、頭上の空はまだ薄っぺらな青が広がるばかりだ。 それらに溶け込んだ富士山は、ぼやけた輪郭だけを残して、はるか遠くで寂しげに佇んでいる。 静岡県民から

          『飛島』ー覚えのないノートの端書きより

          「方角音痴」

          与太話、 というより愚痴に近いかもしれない。 私も地球に生まれ落ちて28年そこそこ生きた人間なので、「東西南北」くらいは知っている。 上が「北」 下が「南」 右が「東」 左が「西」 小学生の理科の授業で習った。 覚えてしまえば簡単なものだ。 だがどうだろう。 世界はあまりに広すぎる。 私は「東西南北」という言葉は知っていても、その方角がてんで分からない。 例えば今実家にいて、「北はどっち?」と聞かれても見当がつかない。分からないからと言ってわざわざ聞き返したりは

          「方角音痴」

          祖母とギョーザと、これからの事。

          昨年の12月29日に 祖父が天国へと旅立った。 あまりの悲しさにしばらく自堕落な日々を送っていたが、今は無理のないペースで音楽活動に向き合えている。 音楽活動を優先するあまり、ロクに祖父と顔を合わせられなかった僕は、あれから毎月祖父の墓参りをしている。世間知らずな僕はどのタイミングで墓参りに行くべきなのかよく分からない。生前に会えなかった分、たくさん掃除したいし、たくさんお参りしたい。 物忘れの激しい祖父だったけれど、これだけしつこくお参りしていれば、きっと忘れないだろ

          祖母とギョーザと、これからの事。

          半熟とかたゆでの歴史。ー宮下奈都『羊と鋼の森』

          古本屋で買った宮下奈都さんの『羊と鋼の森』を読んだ。ピアノのプレイヤーではなく"調律"にテーマを絞った作品で、小さい頃にピアノを習っていた事もあって、ついつい一気読みしてしまった。 太陽が少しだけ傾き始めた昼下がりのカフェで、コーヒー片手に本を読み進めていると、とあるページの一行に鉛筆で線が引かれてあった。 なるほど本の扱いというのは人それぞれだし、書き込みをしようが捨てようが、買った本人の自由だ。 どれどれ、どんな言葉に線が引いてあるかと見てみると 「半熟が好きな人と

          半熟とかたゆでの歴史。ー宮下奈都『羊と鋼の森』

          「冥王星」ーあいみょん『アンサーソング』

          かつて仲の良かった彼女のメールアドレスの末尾に、「vesper」の文字が入っていた。 「ねぇ、"vesper"ってどういう意味?」 流行りの文庫本とRADWIMPSのCDを抱えて、ボクは彼女の家で話をしていた。 「"冥王星"って意味だよ」 「"冥王星"! かっこいいね!」 ボクがそう言うと、彼女は細い切れ目をさらに細めて笑った。 「ね、いいでしょ?」 ボクは彼女とただ一度だけ、形式的なデートをしたことがある。 言葉も経験も何もかもが不足していたボクの気持ちは

          「冥王星」ーあいみょん『アンサーソング』

          1/15(日) 三保の松原〜海の境界線

          高校3年生の時、勉強にも部活にも身が入らず更にはいじめを受けていたので、かなり精神を病んでいた。 そんな私は心の傷を癒すために、 学校帰りによく三保の海へと出かけた。 何をするでもなく、 ぼーっと海を眺めるだけ。 空腹に耐えかねて10分そこらで帰る日もあれば、3時間以上も居座っていることもあった。 経験も知識も浅かった私は、大人になって社会に出る前から、学校という狭い檻の中でひどくもがいていた。 その時の私はと言うと、ただ弱くて、孤独で、どうしようもないバカな奴だった

          1/15(日) 三保の松原〜海の境界線

          【ライブレポート】真ッ冬 presents.【Story Seller】ー有川浩『ストーリー・セラー』

          こんばんは。 Amayjigenです☂️ 今月の初頭、12/3(土)に私のホームである静岡Sunash(サナッシュ)にて、レコ発ライブ【Story Seller】を敢行しました。 我々の記念すべき1stアルバム『ホワイトエッセイ』が世に旅立つ瞬間でした。 長い時間をかけて、多くの人に支えられて、本当に激アツで幸せな1日でした。 というわけで今回は、ライブレポートという形で記事を書いていこうと思います。 それでは早速、本編へ参りましょう。 有川浩『ストーリー・セラー

          【ライブレポート】真ッ冬 presents.【Story Seller】ー有川浩『ストーリー・セラー』

          謹賀新年。ー天国へ旅立った祖父と共に

          みなさま、お正月いかがお過ごしですか? 喪中につき、 新年の挨拶は控えさせていただきます。 Amayjigenです☂️ 新年早々、暗い報告で申し訳ありませんが、 去年末の12月29日に、愛する祖父が天国へと旅立ちました。享年96歳の大往生でした。 2022年はCD制作に打ち込んでいたこともありなかなか会いに行けず、正月にはやっと会えると思っていましたが、間に合いませんでした。 祖父は自分の身体に鞭打ってでも、他人のために全力を尽くす、菩薩のような優しい人でした。

          謹賀新年。ー天国へ旅立った祖父と共に

          12/16(金) 〜月に睨まれて

          私は8年ほど新聞配達をやっている。 出勤は日付を越えてから間もない0時半ごろ。 一番寒い時間に出勤し、配達では更に寒い場所へ赴く。 寒いのは嫌いだ。 地獄だ。 8年も勤めていると言うのに、 寒さだけは慣れないものである。 冬は嫌いだ。 私の仕事場は地元静岡。中心街から外れた田舎町にずっと住んでいる。 そんな中、更に田舎の山間部にある新聞社が廃業するという連絡があった。 同業である新聞社が潰れるのは痛手と判断し、私はそこへと出向する事になった。 「お金くれるんなら

          12/16(金) 〜月に睨まれて

          「くものうえ」

          あれは小学校3年生ぐらいの頃だっただろうか。私は国語の授業で「ちいちゃんのかげおくり」というお話を学んでいた。 当時の私は、集中力がなく常にボーッとしていて、ついでに頭もすこぶる悪い生徒だった。本を読むのは好きだったけれどー母親の話によると下校中に本を読みながらスタスタ歩いていたらしい。よく覚えていない。ー授業となるとまるで頭に入ってこなかった。 やがてそのお話を一通り読み終えると、先生は明るい声で言った。 「みんな、自分の思ったことを順番に発表しましょうね!」 周り

          「くものうえ」

          小さな"ハッピー"の詰め合わせ。ー森沢明夫『森沢カフェ』

          こんばんは。 Amayjigenです☂️ 私の大好きな作家・森沢明夫さんのエッセイ『森沢カフェ』を読了しました。 ここ最近は、CDの制作に追われたり、仕事が忙しくなったり、更には私の地元清水が断水に見舞われたりと…………、目が回るような日々でした😅 そんなわけで、実際のカフェに立ち寄るくらいのゆる〜い頻度でじっくり読んでいました。 大変な日々の中で、この作品の小さな幸せの数々は良い刺激になりました。 今回はそんな幸せいっぱいの『森沢カフェ』についての記事を書いていこ

          小さな"ハッピー"の詰め合わせ。ー森沢明夫『森沢カフェ』

          「ネコノヒゲ」本が旅立つ瞬間に立ち会う。ーさくらももこ『さるのこしかけ』

          こんばんは。 Amayjigenです☂️ 10月に鷹匠に新オープンした「ネコノヒゲ」 休日やライブ終わりにガッツリ入り浸っております🐳 プレオープン初日に「多分毎週来ますね〜」って半分ノリで言ったんですけど、本当に毎週来ちゃってるんですねぇ笑 本読めるし、飯は美味いし、 最高なんだよな〜。 さて、早くも常連よろしくフラッとネコノヒゲに立ち寄った私はある日、何気なく手に取った一冊の本をキッカケに、その場に居合わせた人と、ある喜びを共有したのです。 本の出会いは、一期一

          「ネコノヒゲ」本が旅立つ瞬間に立ち会う。ーさくらももこ『さるのこしかけ』