見出し画像

たまちゃん

わたしみたいな高校生女子がひとりで街の中華屋さんだなんてイカしてるしイカれてるって思ってない、まあ、実際、イカれてるのかも、毎回、おんなじもの頼むしさ、玉子チャーハンね
玉子チャーハンを頼むと店員さんが

「たまちゃん」

と、厨房に向かって言う、その言葉が聞きたいから、それで、毎回、玉子チャーハンを注文してる、今日も聞けた、おそらく、わざとだと思うのだけど、ちょっとかわいいめな感じの「たまちゃん」だった

そこで目的は達成されちゃって、ぼーっと入口の横にある雑誌が置かれてるあたりを見てホントにぼーっとして、ときどき、あーいけない、いけない、と、われに返るも、そんなとこを人に悟られないように、あたかも平常で乱れがないさまをよそおってみせたり

目には見えないんだけど、しっかりハッキリそこに存在してるクラス内階級制度における自分の位置関係とかなんかを学校のない休日だっていうのに思い出しちゃったりなんかして、自分で思い出しちゃったくせにイヤな気分になっちゃったりなんかして、でも無表情でそのことについて考え続けちゃったりで
滅してくれ滅してくれ、自分のこと下に見てくるヤツら、バカにしてくる連中、そんなのなんかはみーんな滅してくれちゃってけっこーけっこー、アレらはアレのまま、なんにも変わらず滅していくのさ、なんてことを、早く来ないかなー、的な手持ちぶさたで、あっさりおおい隠して演じてみたり

そうそう、この前、久しぶりにネット上の小説でしっかりした文章を読んだんだった、小説家になりたいんだ、って言うだけはあるなあと、けど、あの人のは、あんま読まない方がいいかもなあ、そんなこと感じたな、あのときのアレ、嫉妬だよなあ、ぜったい嫉妬だ、久々かなあ、ぜんぜん知らない他人の文章に嫉妬って、ちょっと気をつけないと、あれはホントあぶなかった

厨房から聞こえてくる音だけで、そろそろかな、と分かるようになった、それくらいには、玉子チャーハンを頼んでるってことか
来週も、また「たまちゃん」を聞くため、わたしは、玉子チャーハンを頼むんだろう

この記事が参加している募集

スキしてみて

私の作品紹介

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?