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【声劇台本】~闘戦2~風闇雷炎


ふと目覚めたサイボーグ少女は、自分の情報が抜け落ちている事に気づく
そのあとやってくる、自分とは違う連中相手に、コミュニケーションのすれ違いが大きいなか、戦うことになる

男2:女2
性別不問
前作、闘戦~炎雷銃水~の続きではないですが、似たようなバトルファンタジーです
20分くらい


・風

風(かぜ)
知らない場所へやってきたサイボーグ少女
いたって冷静な性格
謎の場所に関して疑問を持つ
風の刀を使って戦う

・炎

炎(ほのお)
風と同じく、名前と記憶がない青年
ぶっきらぼうで口が悪い
謎の装置を使って赤いクリーチャーに変身して戦う

・闇

闇(やみ)
クリーチャーを退治しにきたという青年
クールだが、サイボーグ少女の風に対して恨みがあるらしい(?)
闇の剣術を使って戦う

・雷

雷(かみなり)
騒ぎを聞きつけてやってきた、帝国の騎士らしい
女王気質。力のないものや邪魔者を、弱者だったり蟻と呼ぶ
雷の剣で戦う



風:周囲の視界情報分析……
 
風:白線と、砂の大地……あれは、外敵から守る網かしら……?それにしては不完全な造りね…
 
風:っ? データベースにアクセス不可? これでは、情報すら手に入らないわ……
 
炎:何を一人でブツブツ喋ってんだ?
 
風:あなたは、誰?
 
炎:俺か? 俺……は、あれ? 誰だ?
 
風:記憶喪失……。私と同じようね
 
炎:あんたは?
 
風:風と名乗るわ
 
風:互いに呼びあう名前があるほうが、効率がいい
 
炎:なんで風だよ
 
風:私の、この武器の属性から引用したの。記憶が修復されないうちは、そう名乗るわ
 
炎:……機関にも、変わった奴がいるもんだ
 
風:何の話?
 
炎:あ? 違うのか? ……つか、なんだその……全身まるまる機械だよな……?
 
風:その通り、機械よ
 
炎:……マジの話してんのか?
 
風:ええ
 
炎:……どういうことだ……?
 
風:今は名前を聞いているわ。私は風と名乗った。そっちは?
 
炎:俺は……そうだな。お前のルールに従うなら、炎(ほのお)と名乗るか
 
風:自分のことを「炎」とはっきり言えるその様子、戦闘経験を詰んでいる人間のようね
 
炎:言い方が冷めてるなぁ。誰かと似てるっつーか……
 
風:どこから来たの?
 
炎:こっちが知りたいぜ。気づいたらグラウンドだ……どこの学校だここ?
 
風:……学校? ここが?
 
炎:お前、まさか学校もわかんねえのか?
 
風:……この男の異常なリアクション。情報の誤差が大きすぎる……どういうこと?
 
闇:……クリーチャーが一体か
 
炎:ん?
 
闇:そこの男、邪魔だ
 
炎:知らない奴に向かって、いきなり「邪魔」扱いかよ
 
風:あなたこそ何者?
 
闇:闇(やみ)だ
 
炎:そりゃかっこいい名前だな
 
闇:自分の扱う技から、そう呼んでいるだけだ
 
風:同じ名称の付け方をするとは、思考回路が似通っているわね。あなたも記憶を
 
闇:……似通っているだと?
 
炎:ん? なんかえらい不機嫌だな?
 
闇:その口を閉じろ、機械人……!
 
闇:スティンガー!
 
風:除去コード10(いちぜろ)
 
風:鎌鼬(かまいたち)!
 
闇:くっ…!
 
炎:待ちな!
 
闇:どけ!
 
炎:突然どうしたよ? 
 
闇:見ればわかるだろ
 
炎:お前にとって、こいつは敵ってことか?
 
闇:そうだ。機械人は、一つ残らず、壊すべきクリーチャーだ
 
炎:壊すべきクリーチャー、か
 
闇:一般人は失せろ
 
炎:悪いが、一般人じゃねえんだわ
 
闇:何?
 
風:炎? それは、どういう意味?
 
炎:こういう意味だよ
 
炎:魔血 転命(まけつ てんめい)
 
0:炎の姿が、人間から赤い戦士へと変わる
 
風:姿が……変わった?
 
炎:お前が風の事をクリーチャーっていうんなら、俺も同じだ
 
炎:かかってこいよ
 
闇:……人間になれるクリーチャーなど、聞いたことがない
 
闇:もしや……
 
炎:心当たりがあるのか?
 
闇:…クリーチャーを束ねる存在に、言語能力があると、噂で聞いたことがあるが、お前の事か……
 
闇:人間に化けた上位クリーチャーとは、タチが悪いな
 
風:その姿になったことで、更に警戒されたらしいわね
 
炎:どっちにしろだ。お前の味方になるつもりはねえよ、闇
 
闇:2対1……少々分が悪いが……
 
雷:なんだ、この騒ぎは
 
風:っ?
 
雷:耳に障る喧噪(けんそう)だと思い、来てみれば、どういう状況だ
 
闇:何者だ?
 
炎:お望みの味方じゃねえのか?
 
闇:こんな奴は知り合いにいない
 
雷:こんな奴だと……? ただの騎士団兵が、随分な口の聞き方じゃないか。どこの所属だ?
 
闇:所属?
 
風:闇に聞いているということは……二人は、クリーチャー退治を目的とした……組織の人間。あの人のいうことが正しければ、そう推測できるわね
 
炎:二人そろって倒しに来たか。人気者だな、俺ら
 
闇:間違いもいいところだ。俺は帝国を辞めた身だぞ
 
雷:……なんだと?
 
闇:どこの誰だか知らないが、クリーチャー退治の邪魔をしないでもらえるか?
 
雷:貴様……口を開けば生意気なことを。私の名は……。私の……?
 
風:あの人も、自分の名前を忘れているようね
 
炎:……ほんとに皆、忘れてんのか? そんな馬鹿な話があるのかよ
 
風:馬鹿な話も、具体的なデータが集まれば、現実よ
 
雷:……貴様ら、名前は?
 
風:自分達の力の、属性からつけている。私は風(かぜ)よ
 
炎:炎(ほのお)だ
 
闇:俺は、闇(やみ)だ
 
雷:っ……!?
 
闇:どうした?
 
雷:……まさか、禁固(きんこ)を犯した騎士がいるとはな……!!
 
雷:よもや貴様が裏切り者か……!
 
闇:裏切り者……? それに、闇の術が、禁固(きんこ)?
 
雷:知らないなどと、たわごとを吐くなよ?
 
闇:いや、随分昔の話をしていると思ってな
 
雷:何…?
 
闇:あと、裏切るも何も、さっき辞めたと言ったはずだぞ
 
風:この反応……さっきの私達と同じ。ここにいる4人の情報は、思っている以上に、大きく食い違っている……?
 
炎:一応、あんたも名乗ったらどうだ? 名前も無いんじゃ、話しずらいだろ?
 
雷:「名前」が無い、だと? 生意気に、上から物をいうではないか、クリーチャー如きが
 
雷:その口ごと、叩き潰してくれよう
 
0:雷は、剣を高く天に挙げ、雷を落とし、高らかに名乗る
 
雷:なら、今の私の名は「雷(かみなり)」!
 
雷:我らの国こそ、強者の国!
 
雷:それを阻害する貴様らは、ただの蟻だ……! だから貴様らには、この私がじきじきに……そう……あれだ。あれを、するのだ
 
風:あれ? 
 
雷:くそ……なぜこうも思い出せない!
 
風:……名前以外に、他の記憶の混乱もあると分析したわ
 
闇:……なら雷、俺と協力しろ。クリーチャー側につくメリットは何もない
 
雷:指図をするな、この裏切り者が……!
 
闇:裏切ったのは帝国じゃないか……!
 
炎:おい。喧嘩するならよそでやれ
 
雷:……ここまでシャクに障る騎士も珍しい。まるで誰かとよく似ている
 
闇:帝国の人間が、クリーチャーに味方するつもりか?
 
雷:いいや。蟻は二匹、まとめて消し去る
 
闇:せいぜい足を引っ張るなよ
 
雷:ふざけるな。そのあとに貴様も消し去ってくれる
 
闇:……面倒な奴だ
 
風:言葉の強さから、自分への信頼度、特に力の信頼度が強いと推測するわ
 
炎:これで2対2か。どうする?
 
風:私が、闇を相手をするわ。覚えのない恨みを、買われているようだから
 
炎:厄介だな。勝手に敵だと思われるなんざ
 
風:あなたはまだ、この状況に対して落ち着いている。あの二人よりも、コミュニケーションが取れると分析した。雷の対処をお願いできる?
 
炎:分かった
 
0:
 
闇:機械人……見れば見るほど、虫唾が走る
 
風:歯に力が入っている……手にも。怒りが溜まっていると容易に判断できるわね
 
0:風は細い刀身を闇に向ける
 
闇:お前達がいる限り……俺の曇り傷は晴れないんだよ
 
風:何かを失ったのね
 
闇:……はは。神経を逆撫でするのが得意らしいな……!
 
風:マイナスの感情で戦うエネルギー……力として利用するなら、有効な手段
 
風:でも、同時に自分の中の、もっと大事なものも見失う……ゆえん、私が導き出した最適解は、「比較」から抜け出すことだった
 
闇:説教を垂れるな
 
風:どのような事情があるのか知らないけど、無力化させてもらうわ
 
闇:やれるものならやってみろ、機械人
 
風:戦闘モード起動
 
風:戦闘バッテリー消費予測開始
 
風:風神刀(ふうじんとう)の風力エネルギー、チャージ
 
風:ターゲット、「闇」
 
風:これより攻撃を開始する!
 
0:
 
炎:さて、とっとと始めるか
 
雷:我々こそ強者。ゆえん、騎士だろうとクリーチャーだろうと、弱者にすぎん
 
炎:強者だから、どうすんだよ?
 
雷:国を守るためだ。何者にも脅かされないための強さこそ、絶対的に必要なものだ
 
炎:……成程。平和を守るためってか
 
雷:クリーチャーの分際で、我らに立てつきおって……。いかに愚かである行為であるか、分からせてやろう
 
炎:なら、先に焼かれてもらうぜ
 
雷:焼く、とな。人の平穏を脅かす化物が、随分と威勢をはる
 
炎:あんたのいう通り、俺は化物だ。そんな奴が、国を守るなんて御大層な事は出来ない。あんたが守っているものがどれだけでかいのか、想像がつかねえが……今は関係ねえ
 
炎:俺がやるのは、そのふざけた勘違いを焼き壊すことだ!
 
雷:たわごとを吐くな!
 
雷:雷帝術(らいていじゅつ) 第1番
 
雷:ボルテックブレイク!
 
炎:ぶちかましてくるじゃねえか!
 
雷:化物風情が、余裕を見せるじゃないか
 
炎:こっちの番だ!
 
炎:殴り燃えろ、破炎掌(はえんしょう)!
 
雷:っ!!! たかが拳だというのに……なんだ……このパワーは
 
炎:拳だけじゃねえぜ!
 
雷:何っ!
 
炎:周り焦がせ、炎旋蹴(えんせんしゅう)!
 
雷:今度は、回し蹴りか…!
 
炎:殴る蹴るは、俺の性にあってんだ
 
炎:次は倒すぜ、雷
 
雷:こざかしいぞ、クリーチャー如きが!
 
雷:雷帝術 第25番 雷回旋(らいかいせん)!
 
炎:ぐ……おっ!?
 
0:炎は雷の攻撃に飛ばされる
 
炎:なんだよ……人の事が言えねえくらい、馬鹿でかい攻撃じゃねえか……!
 
雷:一撃のみでひるんでくれるなよ、弱者?
 
炎:っ。嫌な予感がするぜ……!
 
雷:雷帝術 第45番
 
雷:天雷一閃(てんらいいっせん)!
 
0:雷が攻撃を繰り出すが、炎にあたっていないことに気づく
 
雷:……っ? 居ない……? いや。
 
炎:赤に焼かれろ……
 
雷:……上か!
 
炎:赤魔 爆炎蹴(せきま ばくえんしゅう)!
 
雷:こざかしい真似を!
 
0:
 
風:除去コード 10(いちぜろ)
 
風:鎌鼬(かまいたち)
 
風:はぁぁッ!
 
闇:冥(めい)を歩け
 
闇:ハディスタ・ウォーク
 
風:っ……! 幻影……? 本体は……!?
 
闇:こっちだ
 
闇:二連抜突(にれんばっとつ)!
 
風:くっ……!
 
闇:こちらのペースに持ち込む……!
 
風:それは、こっちの台詞……!
 
風:除去コード 80(はちぜろ)
 
風:風霧ノ連撃(かぜきりのれんげき)
 
闇:っ………風を纏った、連続攻撃か……速い!
 
風:弾かれれば、闇ごと一刀両断よ
 
闇:自分が優勢だと思いあがるなよ……!
 
風:次の攻撃手段を予測…! っ!?
 
0:闇はすぐさま風の刀を大きく弾き飛ばし、離れたと同時に、構え、辺りが暗くなる
 
風:これは、何?
 
闇:黒殺流奥義(こくさつりゅうおうぎ)
 
闇:黒(くろ)に報(むく)いよ
 
闇:闇夜(やみよ)の魔を刻み、その名を、永久(えいきゅう)の冥王(めいおう)に返還せん!
 
闇:黒魔 燕活殺(こくま えんかっさつ)!
 
風:ぐっ……!
 
闇:……急所を外すか……なれば
 
風:っ、除去コード23(にーさん)
 
風:風壊波(ふうかいは)!
 
闇:っ……がぁっ……! 風の、衝撃波っ……くそ……まるで爆発したような、衝撃ッ!
 
風:闇の、あの技……まともに喰らっていたら……損傷度は、70%を超えていたかしらね……
 
炎:そこまでだぜ
 
闇:っ! お前……
 
炎:雷のやつには、少しひるんでもらったぜ
 
雷:貴様……ッ、まだ終わってはいないぞ!
 
風:炎、これ以上は
 
炎:分かってる
 
0:炎は、赤い戦士の状態から、人間の姿へ戻った
 
雷:なっ……!? 
 
炎:そういや、あんたには見せてなかったな
 
雷:クリーチャーが、人間……? ……理解がおいつかん
 
風:自分達の知っている世界の常識と照合しようとすればするほど、誤差はどんどん大きくなるはずよ
 
雷:世界の常識だと? どういうことだ?
 
風:今一番近い答えとして……おそらく私たちは……別々の世界からきていると、推測するわ
 
風:ただ、肝心な名前や他の記憶を失っている
 
風:もし、世界の違う者同士が来ているとしたら……それぞれの事情で戦う意味はない
 
闇:……お前は、機械人ではないと?
 
風:自分を機械人と名乗った覚えはないわ
 
風:サイボーグと、誰かによく言われた記憶はあるけど
 
闇:……
 
風:あなたも、うすうす勘づいていたでしょ?
 
闇:なぜわかる?
 
風:戦っている間の挙動がおかしかったからよ
 
風:最初に私に襲い掛かった一撃と、その後の剣撃……特に後半は、剣の勢いが低下していたわ
 
闇:……よく分析している
 
風:疑心を持っていなければ、ああいった戦い方にはならない
 
闇:……俺が知ってる機械人は、そんな事を言うような奴らではないな
 
0:闇は剣を収めた
 
闇:勝手に勘違いしていた……すまない
 
風:謝ることができる人は、強い人よ。本で読んだ記憶があるわ
 
闇:おまけに読書好きと
 
0:闇は小さく笑う
 
闇:それで、今、判明していることはあるのか?
 
風:……いえ。まだ何も情報が得られていないわ
 
炎:なら、学校ん中にでも入ってみるか?
 
0:赤城は親指を学校にむけた
 
雷:クリーチャーが支部の中に入るなど、許されると思うか
 
雷:そこの裏切り者も、同罪だぞ
 
炎:まだそんなこと言ってんのか 
 
風:ずっとこの食い違いが続いている事に気づかない? 雷
 
雷:……本当に、私の知っている支部ではないと?
 
炎:さっきからそう言ってんじゃねえか
 
雷:黙れ。……なら、ここは何なのだ?
 
0:キーンコーンカーンコーン
 
炎:チャイムだけは鳴るのな
 
雷:貴様は、ここに詳しいのか?
 
炎:学校だ。……それくらいしか分からねえけど
 
雷:学び舎ということか? 
 
炎:いや、学び舎って……
 
雷:あのような建物が、か。信じられんな
 
炎:学校って言葉は一応、通じてるみたいだな
 
雷:……しかし、ますます訳が分からない。大体、クリーチャーだろうが、貴様
 
炎:さっきの風(かぜ)の話、聞いてなかったのかよ?
 
雷:……各々の常識が、通用しない世界……だったな
 
闇:ここがどういう場所かわかったところで、どうするんだ? 
 
風:今の音は、あの建物の屋上に備え付けてある機械からきこえている。もし、ここを管理している人間が居るならば、何か情報を得られるかもしれない。それこそ、ここから出られる手段などね
 
炎:じゃ、さっそく入ってみるか
 
闇:そうするしかないなら、賛成する
 
風:雷は?
 
雷:別に。私は構わん
 
風:初めて意見が一致したわね、雷と、闇と
 
0:そのあと、風たちは、学校の中を調べて、屋上へと出る
 
闇:中を調べたはいいものの
 
炎:誰もいないって、マジかよ
 
風:管理人がいると予測はしたのだけど
 
闇:……しかし
 
風:どうしたの?
 
闇:いや、見慣れないものばかりだったから……落ち着かないな
 
風:歩いている間、辺りをよく見回していたよね、闇は
 
闇:子供のようだったか?
 
風:いいえ、私もそうだったから、分かるわ
 
闇:何?
 
風:造られて間もない頃、私にとっては、命令ばかりが日常だったけど、人間の部分があるからか……気になるものには、無意識に目を奪われていた。それが何だったのか、詳しい記憶は、ないけれどね
 
闇:……機械なのにか?
 
風:機械だから、機械じゃないものを知りたいんでしょう、きっと。その頃の私を、今の私が分析するなら、こういう答えになるわ
 
闇:……そうか
 
風:ただ、こんな建物は、おそらく私の世界には……なかったと推測するけど
 
闇:同感だ。帝国の資料でも……いや、資料すら当てにならないな。仮に覚えていても、何の役にも立たない。知らなすぎる、ここは
 
炎:本当に見たことがないんだな……お前ら
 
雷:そういう貴様こそ、何食わぬ顔で慣れた様子だったな、クリーチャー
 
雷:……すまぬ、違うのであったな
 
炎:構わねえよ
 
雷:ここでは私の常識を、持ち込んではいけない
 
炎:まぁ無理もねえよ。俺の世界でも、あんたと同じ反応する連中ばっかりだからな
 
雷:一体なんなのだ、貴様は
 
炎:別に何でもいいぜ、人間でも、化物でも
 
雷:自分がどう呼ばれるかに、疑問を持たぬのか
 
炎:周りにどう呼ばれるか、俺が決める権利はねえってことだ
 
雷:貴様自身が決めてもいいのではないか?
 
炎:あ?
 
雷:貴様がクリーチャーであれ、人間であれ、どちらにしろ、強者に変わりはない
 
雷:あれは強者の戦い方だ。この私を、少しでもひるませたわけだからな。あと、仮に貴様が我らの国に居たとしても……自ら進んで、住民を脅かす存在には見えぬ
 
雷:そのような強者には、権利が与えられるべきだ
 
炎:……そりゃどうも
 
風:お話し中、失礼するわ
 
風:どう、炎? この場所を見て何か思い出した?
 
炎:いや、全然……
 
風:おそらく、炎が一番見慣れているはず。とすれば、炎の記憶を基準にして考えると、この場所について推察ができるのだけど
 
炎:ただな……中にも外にも人がいる気配がねえ……何とも言えないな、これじゃ
 
闇:なら、建物の外に出るか?
 
雷:外に出ても、住民一人見つからなければどうする? いくら行動したところで無意味だ
 
闇:ここでぼさっとしていても、ラチがあかない
 
雷:面倒なものだな
 
炎:なんだ、探すのがダルいってか?
 
雷:いや、弱者にそのような言葉は無い
 
炎:そうかよ
 
風:誰もいない無人の学校……。そもそもこの世界に、人は住んでるの?
 
雷:気配を微塵もかんじぬ
 
闇:人の気配も、クリーチャーの気配も、何もないな……
 
雷:クリーチャーだけ姿をあらわすのなら、ここは人間が喰われた世界ということになるな
 
炎:ただのホラーじゃねえか
 
雷:しかし、どんな存在だろうと、私の雷で叩き潰してくれる
 
風:戦闘欲が旺盛ね
 
雷:このまま無様に探すよりはマシだ
 
闇:そんなに退屈か?
 
雷:黙れ、裏切り者が
 
風:雷
 
雷:……すまない
 
闇:気にするな。俺も人の事はいえない
 
雷:お前は、帝国から出たと言っていたな
 
闇:……俺が知っている帝国は、信用できない
 
闇:思い出せないが、俺の過去が……俺の傷が、許すことはできない
 
雷:悪いが、私自身は、自分の帝国に誇りを持っている
 
闇:……
 
雷:ただ、貴様自身が発するその強さは、過去から来ているものなのだろう
 
雷:だとすれば、お前のことを一概に否定はできない。そもそも別の国であるわけだからな
 
雷:風と戦っている時を、片目に見ていたが……いい腕前だ
 
闇:慰めか?
 
雷:強者からの言葉だ。ありがたく受け取れ
 
闇:ふっ、そうするよ
 
炎:さっきまでの退屈な顔はどこにいったんだか
 
雷:いいや! そんな顔などしておらぬ。強者は、常に退屈を凌駕する
 
風:今の発言は、「退屈だ」と心中で呟いていると分析したわ
 
炎:要は図星か
 
雷:貴様ら……。ここから出る前に、一撃喰らわせてやってもいいのだぞ?
 
風:この状況、おおよそ70%以上は打ち解けていると分析するわ
 
炎:どんな分析だよ……
 
0:そこで、地震が起こる
 
炎:っ、地震か!?
 
風:待って……っ、床に、ひびが……? この建物自体が損傷を起こしている?
 
闇:このままだと、俺達も巻き込まれるぞ!
 
炎:どうなってんだ全く!
 
雷:ここから出るしかあるまい!
 
風:入口まで走るわ!
 
0:4人は屋上から校内に入り、一気に、学校の玄関まで走り抜ける
 
炎:玄関まで着いたぞ!
 
闇:っ、あれは!?
 
風:……瓦礫が、大量に……! 入口がふさがれてる!?
 
炎:なら……魔血転命(まけつてんめい)!
 
0:炎はすかさず、赤い戦士へ姿を変える
 
炎:意地でも、どかしてやる!
 
雷:当たり前だ!
 
0:闇は剣を構え、瓦礫に向かって黒い波を放つ
 
闇:黒へと引き逝(ゆ)け
 
闇:ブラック・ウェイブ!
 
闇:っ……!? 駄目か……!
 
炎:頑丈だな……俺も闇に続くぜ!
 
0:炎は燃える拳で瓦礫を壊そうとする
 
炎:殴り燃えろ! 破炎掌(はえんしょう)!
 
炎:…まだ壊れねえか!
 
風:除去コード 70(ななぜろ)
 
風:風車(かざぐるま)!
 
0:風が空中からの斬り下ろし攻撃を行い、瓦礫の間に外の光が見えはじめる
 
風:瓦礫の間に光が! あと少しよ!
 
雷:雷帝術 第45番
 
雷:天雷一閃(てんらいいっせん)!
 
0:雷が、電気を纏った突き攻撃を放つと、入口の瓦礫が全て崩れ去った
 
雷:ふん、話にならん
 
闇:よし、これで外に……っ!?
 
風:外の景色が……どんどん……湾曲していく?
 
炎:おいおい、異次元空間ってか!? 
 
風:機械でも、予測がつかない展開ね……!
 
雷:どうする!? このまま引くわけにもいかんぞ…!
 
闇:進むしか、選択肢はない!
 
炎:ああ、仲良く下敷きはごめんだぜ!
 
風:満場一致。外に出るわ!
 
雷:行くぞ!
 
0:崩れ逝く音の中、4人は学校の玄関から、外に出る
 
炎:っ、うおおおっ!? 吸い込まれる!?
 
闇:体が……動かないっ!?
 
雷:ッ……たかが、この程度のことでっ!
 
風:予測不能……意識が……消えていく…!
 
0:
 
風:っ……!
 
風:……夢、かしら
 
風:駄目ね、もう思い出せない……
 
0:風はため息をつく
 
風:……機械でも、夢を見るのね
 
 

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