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【声劇台本】天然ヒットマンズ



裏社会の組織「A・H・O(エー・エイチ・オー)」の
エキスパートと言われているらしい殺し屋「ナンバー10」は、
相棒である通信オペレーター「ナンバー9」と、ターゲットである情報屋の抹殺任務をおこなっていた

天然系の殺し屋コメディです
30分程度
展開を大きく崩すようなアドリブじゃなければOK
不問4:女1


・キャラクター



・殺し屋

コードネーム「ナンバー10(テン)」
A・H・Oに雇われた殺し屋
情報屋の抹殺任務をこなすために、標的のいるビルへやってきた
ナンバー9(ナイン)は相棒のような存在


・通信士

コードネーム「ナンバー9(ナイン)」
情報屋の抹殺任務をこなすナンバー10のオペレーターとして任務のサポートをする
ナンバー10とは旧知の仲で、現場仕事を共にした
女性で書きましたが、性転換可

・工作員

コードネーム「ナンバー11(イレブン)」
今回、ナンバー10達と任務を共にする
主にビルの外側から、狙撃手としてナンバー10のサポートに入る

・情報屋

ナンバー10に狙われている情報屋
用心棒を雇っている
海外で薬物取引をして儲けており、割と裏社会では有名
短期間殺し屋家業をやったことがあり、その後情報屋へ転身した

・用心棒

情報屋に雇われた用心棒
銃やナイフの扱いはナンバー10と同等レベルの殺し屋
武器のバリエーションが豊富で、でかいアタッシュケースに入れている
情報屋を狙いに来たナンバー10の前に立ちはだかる

ヒデじい様の声劇台本置き場にも置いてあります


シナリオ本文

通信士:ナンバー10(テン)、応答して
 
殺し屋:こちらナンバー10(テン)。聴こえている、ナンバー9(ナイン)
 
通信士:今回の標的は、外国をめぐって薬の取引をしている情報屋よ
 
殺し屋:湿った暗黒の夜空……潜り込むには持ってこいの環境だな
 
通信士:我々の組織、AHO(エーエイチオー)の集めた情報によれば、この建物内にいる
 
殺し屋:……
 
通信士:? ナンバー10(テン)?
 
殺し屋:……あっ、いや何でもない
 
通信士:どうしたの?
 
殺し屋:ボーっとしていて、あんまり聞いてなかった
 
通信士:そう、今日も絶好調ね。あなたと現場で仕事をしていたころを思い出すわ
 
工作員:こちらナンバー11(イレブン)。こっちも準備OKだよ
 
殺し屋:よろしく、新人
 
工作員:まっすぐな気持ちで頑張るさ
 
殺し屋:よし……潜入を始める
 
0:殺し屋「ナンバー10」は物陰に隠れ周りを確認する
 
通信士:潜入経路は、見張りが一人ね
 
殺し屋:奴が後ろを振り向いた瞬間に近づく……よし、今だ……!
 
0:近づこうとした瞬間、足を固いものにぶつけてコケかける
 
殺し屋:痛っ。……あ
 
0:敵が後ろを振り向いた
 
通信士:まずい、敵が気づいたわ
 
殺し屋:すぐに隠れる
 
0:見張りらしき人物がこちらのほうを見たが、すぐに元の場所へ戻っていった
 
通信士:……やり過ごしたようね
 
殺し屋:俺としたことが……
 
通信士:ナンバー11(イレブン)のほうはどう?
 
工作員:ん? そうだね~。他に誰も見当たらないかな
 
殺し屋:一応、周りを警戒しておけ
 
工作員:て言われてもなぁ……。本当に誰もいなくてさ。正直やることないんだよ
 
通信士:そうなの?
 
工作員:うん。おかげで風は気持ちいいよ。このまま寝ちゃってもいいかなってくらい
 
殺し屋:……そうか
 
殺し屋:とにかく、この経路は失敗だ。
 
通信士:後ろに別の入り口があったはずだわ、そちらから行きましょう
 
0:
 
殺し屋:こっちは……見張りが居ないな
 
工作員:こう見ると、まるで幽霊ビルみたい
 
通信士:……おかしいわね。ブリーフィングでは、後ろ側には見張りが多くいるといっていたけど、違う情報だったようね
 
工作員:もしかして罠だったり?
 
通信士:間違いなく、ここだと言っていたわ……あっ。ごめんなさい。違う資料を見ていたわ
 
殺し屋:しっかりしてくれ
 
工作員:大丈夫、僕も全然、この任務の事わかってないから
 
殺し屋:11(イレブン)、お前な……
 
工作員:そういう10(テン)は、ブリーフィングちゃんと聞いてたのかい?
 
殺し屋:いや、全然。
 
通信士:人のこと言えないじゃないの
 
工作員:9(ナイン)もね
 
殺し屋:お前もな。……よし……建物内を進んでいく
 
0:
 
殺し屋:今のところ、敵は見つからないな
 
通信士:そういえば、10(テン)。標的が居る場所、分かっているの?
 
殺し屋:……ん?
 
工作員:そりゃ分かってるから進んでるんじゃないの?
 
殺し屋:いや、分からない
 
通信士:えっ?
 
殺し屋:というか、完全に迷ってしまった。もう出口がどこか分からない
 
工作員:さっき入ったばかりなのに?
 
殺し屋:集中すると、周りが見えなくなってな
 
工作員:ま、それなら仕方ないか
 
通信士:はぁ……じゃあ、標的が居そうな場所をあらった、見取り図とってくるわ
 
工作員:へぇ、ナンバー9(ナイン)。仕事するね
 
通信士:まぁ、私が作ったわけじゃないけどね。確かどこかにあったはず
 
工作員:そしたら、やることないし、僕は遠距離からサポートするよ
 
殺し屋:そういえば、11(イレブン)は今、何をしている?
 
工作員:狙撃銃で、しっかり照準器覗きながら…今、ナンバー10の居場所を追ってる
 
殺し屋:成程。万が一敵に遭遇した時に備えて、援護する準備はしていると……
 
工作員:いや、そうしたいのはやまやまなんだけど……。さっきから10(テン)の姿が見えないんだよ
 
殺し屋:敵の妨害か?
 
工作員:いや、違うよ
 
殺し屋:じゃあなんだ?
 
工作員:このビルの窓、全部カーテンしまってるからさ。何処にいるか検討がつかない
 
殺し屋:それ、外にいる意味あるのか?
 
工作員:大丈夫。勘で何とかなるから
 
通信士:自信たっぷりな新人さんね。
 
殺し屋:帰ってきたのか、9(ナイン)。見取り図は見つかったのか
 
通信士:ええ、そのまま右へ曲がって……そのあとは指示を出すわ
 
殺し屋:分かった
 
工作員:無事を祈るよ、ナンバー10(テン)
 
0:
 
情報屋:ふふ、奴が来るのが分かるぞ
 
用心棒:余裕だな。流石、世界を渡り歩いた情報屋。聞けばちったぁ殺し屋をかじってたそうじゃないか。 その時のセンスでも残ってたか?
 
情報屋:いや、なんとなく来る気がしただけだ。
 
用心棒:……そうかい
 
情報屋:それより用心棒、お前は並大抵の殺し屋じゃないと伺った。その実力、遺憾(いかん)なく発揮しろよ
 
用心棒:ありがてぇな。俺も初めて雇われたもんだから、気合が入ってんだ
 
情報屋:……えっ? お前最初、経歴の長い殺し屋って言ってなかったか?
 
用心棒:あ? ……俺、そんなこといったか? 
 
情報屋:……ハズレクジを引いたか
 
工作員:まぁどっちにしろ、敵を倒せばいいわけなんだから、気楽にいこうよ~
 
用心棒:っ? 通信回線に割り込んできやがった?
 
情報屋:誰だ? って……あぁ
 
工作員:どうも。初めましての人は、はじめまして。簡単に言えば、スパイ。工作員です。どうぞ、よしなに
 
用心棒:情報屋、なんだこいつは?
 
情報屋:お前と同じ、雇った味方だ。工作員、敵の様子は?
 
工作員:今、照準器で覗きながら見張ってるところ
 
情報屋:そいつは、どのあたりにいる?
 
工作員:……ちょっとよくわからない
 
用心棒:なんだと?
 
工作員:別にこのライフル。建物の中を透かして見えるようなハイテク機能がついているわけでもないから
 
用心棒:じゃあなんで居場所がわかるんだよ
 
工作員:勘だよ。今この辺歩いてるのかな~って感じで
 
用心棒:見えてないんじゃないか?
 
情報屋:それよりも……工作員。お前は、別の組織にいたはずだ……。あっち側にいる間、何か破壊工作の一つや二つ、したんだろう? 情報を抜きだすとか、内部の人間を殺すとか
 
工作員:いや、何もしていない
 
用心棒:こいつ役に立つのか
 
情報屋:大丈夫だ……多分
 
用心棒:そういえば、監視カメラはどうなってんだ? 姿かたち、ばっちり捉えているだろうに
 
情報屋:いや、監視カメラは一つもない
 
工作員:あぁ、そういうこと。ここ使われていないビルだから、元々カメラがないってことなんだね。あとで監視カメラを付けたんでしょ?
 
情報屋:違う。
 
用心棒:まさか金がないわけじゃないだろ? それだけ薬売ってりゃ
 
情報屋:監視カメラをつけるのを、すっかり忘れていた
 
工作員:……そんな時もあるよね~
 
情報屋:ところで、用心棒。武器の準備はできているのかい?
 
用心棒:ばっちりだ。殺傷能力の高い銃ばかりだぜ。見てみろ、このラインナップ
 
情報屋:ほう、それで殺すのか。なかなか粋(いき)な事をするね
 
用心棒:……いや、待て
 
情報屋:どうした? しかめた顔して?
 
用心棒:あぁ、わりぃ。銃が1個メンテナンス不足で、全然使えないみたいだ
 
情報屋:しっかりしてくれ
 
用心棒:まぁ焦るな。この銃はあくまでリペアだ。本命は、この銃だ。……あっ
 
工作員:どしたの?
 
用心棒:こっちも修理がいるやつだな。持ってくる銃まちがえたか
 
情報屋:ちなみに、もう一本は?
 
用心棒:…あぁ、これもだな。壊れちまったのを、そのままケースに入れっぱなしだった。
 
用心棒:全部だめだ、どれも使い物にならねえな
 
情報屋:大丈夫か?
 
用心棒:あぁ何にも問題ねえぜ。どうやら、血なまぐさい接近戦をやらなきゃいけないらしい、クク
 
工作員:そんな調子で倒せるの?
 
用心棒:とっておきのナイフがあってな……
 
情報屋:おお、刃物を持った瞬間に、容赦のない顔になるじゃないか……いいね
 
用心棒:はは……ひと刺しすれば、普通に撃ち抜くよりたやすい……ん?
 
情報屋:どうしたんだ?
 
用心棒:……刃こぼれしてるな
 
情報屋:なんだと?
 
用心棒:まだ使えると思ったんだが……あ、折れた
 
工作員:全然使えない武器ばっかりじゃん
 
情報屋:なんでそんなものを持ってきたんだ
 
用心棒:仕方ねえだろ、入れ替えるの忘れてたんだから。……こうなったら肉弾戦だ、はは、血で血を荒そう殴り合い、燃えるぜ
 
0:そこで、殺し屋がやってきた
 
殺し屋:そこまでだ
 
情報屋:噂をすれば、客人が来たか
 
通信士:ターゲット発見
 
情報屋:さらに……お守つきか
 
通信士:えっ? 私の声が聴こえてる?
 
情報屋:この部屋は一度通信が入れば、ここにいる全員に行き渡るようになってる。口裏合わせをしようが無駄だ
 
通信士:用意周到ね
 
用心棒:その設備投資するお金があるなら、監視カメラや雇用に使えばよかったと思うがな
 
情報屋:もう遅い。……じゃあ、頼むぞ、用心棒。仕事を果たせよ
 
通信士:気を付けて、ナンバー10(テン)
 
用心棒:それにしても、ここまで無傷でくるとは
 
工作員:あんまり油断してるとやられるよ、10(テン)。この人たち、きっと強いから
 
殺し屋:この声は、11(イレブン)か?
 
通信士:通信が途絶えたと思ったら、そういうことね
 
工作員:そう、情報屋側についてたのさ
 
殺し屋:最初から裏切っていたと?
 
工作員:お金は正義だよねぇ~
 
情報屋:ふふ…残念だったな。既に買収させてもらった
 
工作員:……でも、僕は同時に、ナンバー10(テン)達の味方でもある
 
情報屋:……なに?
 
用心棒:てめぇ……ここにきて、あっち側につくのか?
 
工作員:待ちなって。君たちの味方を辞めたわけじゃないよ
 
通信士:結局どっちの味方なのよ
 
工作員:どっちの味方か、決める必要はないってことさ
 
情報屋:その意味を詳しく教えてくれるか?
 
通信士:……もしかして、別の第三勢力が?
 
工作員:え? 第三勢力……? そんな奴らがいるの?
 
通信士:違うのね
 
殺し屋:一体、こいつは何がしたいんだ……
 
工作員:それにしても、君たち、情報屋のところまでたどり着くのに、随分時間がかかっていた気がするけど
 
通信士:ええ、やっとたどり着いたわ……
 
殺し屋:こっちの台詞だ。お前が言うルート、全部違ってたぞ
 
情報屋:それでよく来れたな
 
通信士:でも、見張りが一人もいなくて助かったじゃない
 
用心棒:待て……見張りが誰もいないだと? どういうことだ? 情報屋?
 
情報屋:クク…用心棒……そこに気づいてしまうか
 
用心棒:あ? 何がだよ?
 
情報屋:実は……用心棒と工作員以外、誰も雇っていないんだ
 
用心棒:マジかよ
 
殺し屋:なら、入口にいた見張りは?
 
情報屋:見張り……? 知らない人だな。一般人じゃないか? 
 
工作員:なんと……危うく一般人を襲うところだったかもしれないのか、怖い怖い
 
殺し屋:裏から回って正解だったな
 
工作員:……というか、思ったんだけど
 
通信士:何が?
 
工作員:たくさん取引しているなら、雇えるお金なんていくらでもあったんじゃない?
 
通信士:あぁ、確かに。
 
情報屋:雇うのを、すっかり忘れていたんだ
 
用心棒:なにやってんだ
 
情報屋:まぁ、中にはお前一人いるし、十分かと
 
用心棒:全く十分じゃねえ気がするのは、俺の気のせいか……?
 
殺し屋:9(ナイン)。あの用心棒の情報はあるか?
 
通信士:残念ながら、何も調べていないわ
 
殺し屋:そうだと思った
 
用心棒:ほら、かかってこいよ、殺し屋
 
殺し屋:その余裕、額に弾をぶちこんで、静かにしてやる
 
用心棒:だったら先に黙らせてやらぁ!
 
0:用心棒は殺し屋に銃を向けた
 
通信士:撃ってくる、避けて!
 
情報屋:おい!用心棒!
 
用心棒:なんだよ!?
 
情報屋:……銃は使えないんじゃなったのか?
 
用心棒:…あぁ
 
殺し屋:なんだと?
 
用心棒:……せっかくだから教えてやる。なんとまぁ。全部使い物にならねえ銃なのよこれが……いま構えて思い出したぜ……! はははは!
 
殺し屋:それは見事に、隙だらけ過ぎるな、用心棒……!
 
工作員:この状況、10(テン)に軍配があがったか……
 
0:殺し屋は引き金を引くが、弾が出ない
 
通信士:ナンバー10(テン)、なぜ撃たないの?
 
殺し屋:弾を入れ忘れた
 
通信士:弾倉は?
 
殺し屋:全部置いてきた
 
通信士:他の銃は?
 
殺し屋:これしかない
 
通信士:……なんてこと
 
用心棒:ふぅー、間一髪だったぜ
 
工作員:良かった……。万が一、10(テン)が撃とうものなら、僕が先に狙い撃つところだったよ。見えていないのはさておき、高所から援護するって、意外と大事な役目だね
 
情報屋:さぁ、用心棒。とっとと片付けてくれ
 
殺し屋:……格闘戦か、上等だ
 
工作員:近接戦となると……二人はもみ合うわけだから、撃ちづらいな……
 
通信士:見えてないのに何言ってるのよ
 
用心棒:なら、この使えない銃を、強引に使ってやらぁ!
 
殺し屋:こいつ……ライフルをまるでバットのように!
 
用心棒:ほらよ!
 
殺し屋:なんて荒々しい攻撃だ……! ならこちらも……!
 
用心棒:お? 殴ってくるか? なら、一発ぶち込んでこいや
 
通信士:待って、ナンバー10(テン)
 
殺し屋:なんだ?
 
通信士:あの用心棒の装備……どこか妙だとは思わない?
 
殺し屋:あいつの装備が?
 
情報屋:……なるほど……爆弾を仕込んでいるのか。考えてるね
 
殺し屋:なに……?
 
通信士:なんですって?!
 
殺し屋:お前はなんだと思っていたんだ
 
通信士:最近売り出していた限定物のアクセサリーよ。ほら、あの首元の部分。よく似ていると思って
 
殺し屋:……そうか
 
通信士:しかし……これじゃ、安易に攻撃できない。ここで手を加えれば、10(テン)の命が
 
工作員:用心棒が爆弾を抱えているとなると……不用意に狙撃はできないか……どこにいるか、全然分からないけど
 
用心棒:これで一方的になぶれるぜ
 
殺し屋:……まだ手はある
 
用心棒:? ……その空っぽな銃がどうかしたのか?
 
通信士:まさか、ただの銃ではなくて……銃型の爆弾、ということ?
 
殺し屋:その通りだ……
 
用心棒:なかなか恐ろしい奴だなぁ殺し屋。発想が似通っているなんざ、仲良くできそうだ
 
通信士:そんなもの持っているなら、最初からいいなさいよ。むやみに攻撃を受けて爆発したらどうするの?
 
殺し屋:……いや。その、爆弾じゃないかもしれない
 
情報屋:どっちなんだ……?
 
殺し屋:……やっぱり普通の銃だったような
 
通信士:ナンバー10(テン)。正直に言う必要はどこにもない。それでもここはわざと嘘をつくべきよ!
 
殺し屋:しかし、良心の呵責(かしゃく)が
 
情報屋:だまされるな! 用心棒。こいつは嘘をついている
 
用心棒:そうはいったものの……本当に爆弾の可能性もあるだろ
 
工作員:二人とも爆弾を抱えているとなれば……どっちも撃っても爆発する。お手上げだね
 
殺し屋:聞いてくれ、本当に爆弾の可能性はない。違う、嘘をついた、俺は
 
情報屋:……でも、用心棒の言う通り、あいつの持っている爆弾が、本物なのかも
 
通信士:これだけ弁明(べんめい)しているのに、ナンバー10(テン)の言う事に一切聞く耳がないわね
 
用心棒:……ただ、俺も、人の事は言えない
 
情報屋:ん? どういうことだ? 
 
用心棒:殺し屋……。お前とはつくづく似てるな
 
殺し屋:似てるだと……?
 
情報屋:用心棒、分かるように教えるんだ
 
用心棒:へへ……。簡単なことだぜ。俺の身に着けているこれが、爆弾だったかどうか忘れちまったんだよ……!
 
情報屋:……本当か?
 
用心棒:ここで嘘を言ってどうするんだ
 
工作員:自信たっぷり……これは本当だと思うよ、情報屋
 
情報屋:……全く。つくづく使えないな
 
用心棒:その口のきき方、うざったいな。誰が守ってやってるって思ってんだ?
 
情報屋:いいや、もう解雇だ
 
0:情報屋が何かを取り出す
 
情報屋:お前達の死を持ってしてね…!
 
通信士:あれは……爆弾? でも、二人のものとは違うタイプね
 
殺し屋:タイマー式か
 
情報屋:どうせ用心棒も裏切るつもりだったろうし……なら、このまま邪魔者二人をここで消せばいいかと思ってな
 
用心棒:おいおい……一番警戒しているのはお前じゃねえか、情報屋
 
情報屋:用心棒、そしてA・H・O(エー・エイチ・オー)の殺し屋。お前ら二人をこの部屋に閉じ込めて、爆弾を起動させる。起動したらタイマーがスタートし、死へのカウントダウンがはじまる
 
工作員:なら、その前に僕が、情報屋……君を撃たせてもらうよ
 
情報屋:ほう……? 見えてもいないのにどうやって撃つと?
 
工作員:僕を舐めない方がいい
 
用心棒:声だけで伝わってくるこの気迫…ただ者ならねえな。もしかしたら、本当に撃ち抜く可能性が、あるかもしれねえ
 
情報屋:思い込みの力は現実を凌駕するとでもいいたいのか……? 冗談はよせ
 
工作員:じゃあ、それを証明して見せよう……!
 
0:工作員の台詞から数秒後
 
通信士:何も起こらないわね
 
殺し屋:流石に無謀か
 
工作員:……思い出した
 
殺し屋:ん?
 
工作員:弾が入ってなかった
 
通信士:弾倉は?
 
工作員:全部置いてきた
 
殺し屋:何がしたいんだお前は
 
情報屋:くくく……安心したよ
 
0:そこで情報屋はもう一つ、何かをポケットから取り出す
 
用心棒:なんだそのリモコンは?
 
情報屋:ここに2つのボタンがある、一つは、この部屋のシャッターに対応したボタン。もう一つは爆弾を起動させるボタンだ
 
殺し屋:…お前が部屋から出て、すぐシャッターを締めた後にタイマーを起動すると
 
通信士:それで、あんな壁のほうにいたわけと
 
情報屋:その通り……クク。用心棒も役に立ってくれたよ
 
工作員:これはさすがに、万事休すか
 
用心棒:ふざけやがって……!
 
情報屋:じゃあね
 
0:シャッターが勝手に締まる
 
情報屋:あれ?
 
用心棒:あいつ、自分で部屋から出る前にシャッター締めやがったぞ
 
情報屋:……シャッターのボタンだっけこれ? ええと、開けるには
 
0:爆弾のタイマーが起動した
 
殺し屋:爆弾が起動したな
 
情報屋:くそ、なんでだ。シャッターがあかない?!
 
用心棒:俺によこせ! ……っ、駄目だ。爆弾も止まらねえし、シャッターも開かない
 
情報屋:リモコンが、壊れたのか…?
 
工作員:もしや……完全に閉じ込められた?
 
通信士:そんな……!
 
情報屋:まさか……こんなことになるなんて!
 
殺し屋:一時休戦だ
 
用心棒:分かってる、今は爆弾が優先だ……。ただ、俺は手先が不器用だから、爆弾解除なんでできないがな
 
工作員:僕も、お手上げだ。残念ながら何もできない……
 
殺し屋:情報屋、どうやったらこの爆弾は解除できる?
 
情報屋:後ろを開いてみろ、爆弾装置の
 
殺し屋:……これか……綺麗に配線が3本と
 
工作員:どれか切れば、止まる……ということかな?
 
情報屋:でも、どれを選んだらいいか分からない……もう終わりだ
 
通信士:これは……
 
殺し屋:9(ナイン)、わかるか?
 
通信士:……分からないわ
 
殺し屋:以前に解除した爆弾と、似ている構造じゃないか、これは?
 
通信士:……あぁ、そうね……! 言われて思い出した、ありがとう、10(テン)
 
殺し屋:いいから、早く教えろ
 
通信士:ナンバー10(テン)。……今日、わたし睡眠不足なのよ。
 
工作員:悠長だね。でもその余裕感が、ナンバー9(ナイン)のいいところ
 
殺し屋:馬鹿な事言ってる場合か。ならとっとと調べろ
 
通信士:はぁ……分かった。今から、爆弾解除の資料を持ってくるわ
 
0:通信士はゆっくり席を立って欠伸をする
 
通信士:ふあぁ~あ。眠たい
 
用心棒:余裕たっぷりだな
 
殺し屋:いつも、あいつはあんな感じだ
 
用心棒:同情するぜ
 
工作員:君らの関係が、たまに楽しそうで、羨ましいと思うよ
 
殺し屋:……さて。どうするか
 
情報屋:いや、どうするもこうするも。お前の相棒から連絡を待つしかないだろうが。何もできないんだから
 
用心棒:俺たちが死ぬのが先か、この爆弾が無事止まるのが先か………神様はどっちに天秤(てんびん)をかたむけるか
 
工作員:大丈夫さ。例えナンバー9(ナイン)が全く関係ない資料をあさっていたとしても、何とかなるよ
 
殺し屋:俺は、無事生還できると信じる
 
用心棒:信じるか、よほど信頼できるようだな、お前の相棒は
 
殺し屋:あぁ。……いや、そんなには
 
用心棒:違うのかよ
 
殺し屋:最低でも4割くらいは……信頼できるというか
 
通信士:(さえぎる)お待たせ。調べてきたわ。線の数を教えて
 
殺し屋:3本だ。
 
通信士:線の色は?
 
殺し屋:赤、青、白だ
 
通信士:……えっ? ちょっと待って
 
殺し屋:なんだ?
 
通信士:緑、ピンク、紫じゃないの?
 
殺し屋:全然違うじゃないか
 
工作員:ハラハラする冗談だね~、それ
 
用心棒:ジョークもたいがいにしてくれってんだ
 
通信士:あれ~? これ違う資料かしら? 
 
情報屋:その呑気さ、今の俺たちに分けてほしいものだよ
 
通信士:ごめんなさい……あ、分かった。こっちね。やっぱり見ている資料が全然違ったわ
 
工作員:落ち着いて、9(ナイン)
 
通信士:ありがと、11(イレブン)
 
通信士:……もう一度確認するわ、オレンジ、水色、白よね?
 
殺し屋:また違うぞ。白しか合ってない
 
用心棒:は? どうなってんだよ。ちょっと見せろ
 
用心棒:……これ。赤、水色、白じゃねえか?
 
情報屋:ん? ……いやいや、オレンジ、青、白だろ
 
用心棒:これはオレンジじゃなくて赤だろ
 
情報屋:違うオレンジだ。そしてこれは水色じゃなくて青だ
 
殺し屋:各々(おのおの)の見え方が違うのか……訳がわからなくなってきた
 
工作員:僕は中の様子がわからないから当てずっぽうだけど……おそらく、オレンジ、緑、白かな
 
殺し屋:悪いが、ナンバー11(イレブン)。お前が一番アテにならない。なんで見えないのに言おうと思ったんだ
 
通信士:でも、白は共通しているわ。白を切って
 
殺し屋:白が安全である根拠は?
 
通信士:ないわ、適当よ
 
殺し屋:だろうと思った
 
通信士:10(テン)……今まで修羅場をいくつくぐってきたか、覚えてないわけじゃないでしょ? 
 
通信士:それをくぐり抜けてきたあなたならきっと、きっと生きて帰れるわ
 
殺し屋:……了解した
 
情報屋:結局、神頼みとは。今までのは何だったんだ
 
用心棒:さっきまでの討論、何の意味もなかったな
 
工作員:やっぱり最後は、思い切ったアクションあるのみ、か
 
殺し屋:なら、切るぞ
 
0:白を切る。すると、タイマーが止まった
 
工作員:……カウントが、止まった?
 
通信士:無事成功したようね……! やったわ!
 
情報屋:良かった……神は居たみたいだ
 
用心棒:冷や汗かきまくりだったぜ
 
殺し屋:助かった……
 
通信士:でも、出られないわね。リモコンが壊れたままじゃ
 
情報屋:……あ
 
殺し屋:なんだ?
 
情報屋:……電池切れだったみたいだ
 
0:情報屋はリモコンの電池を取り換えて、シャッターが開く
 
情報屋:ほら、このようにシャッターも問題なく、開く
 
用心棒:あーあ。全く、スリル満載だったぜ
 
工作員:全くだよ。この任務が始まってから、みんなヒヤヒヤさせることばっかりだ
 
用心棒:ああ、ここにいる奴らはつくづく同類の匂いがして、仕方がねえよなぁ!!
 
0:用心棒は情報屋の腕を引っ張って、すぐに部屋の外へ出ようとした
 
殺し屋:っ! 油断した!
 
用心棒:とっとと逃げるぞ、情報屋!
 
情報屋:なぜ守る用心棒?!  お前は解雇といったはずだ……!
 
用心棒:はっ、そんなこと、忘れちまったよ
 
工作員:まずい……情報屋に逃げられるか…
 
通信士:あなたどっち味方なのよ
 
用心棒:おい、工作員! 逃走ルートの確保はできてるんだろうな!?
 
工作員:えっ……? あぁ、逃走ルート? ごめん、確保してない
 
用心棒:だと思ったよ!
 
通信士:このままだと……情報屋が!
 
用心棒:動くなよ殺し屋! 動いたら、そのままぶち抜く
 
情報屋:用心棒……
 
用心棒:なんだよ!?
 
情報屋:その銃、壊れてるんじゃなかったっけ?
 
用心棒:あ、あぁ…その通りだよ畜生! 逃げるぞ!
 
殺し屋:ちっ……
 
0:用心棒は殺し屋に銃を向けながら部屋から去る
 
殺し屋:逃がしてしまったか
 
通信士:……ええ
 
通信士:でも……相手の銃が使えないなら、仕留められたかもしれないわね
 
殺し屋:そうだな。すっかり忘れてた
 
殺し屋:ただ、分かったところで、俺も弾切れなんだがな
 
通信士:ふっ……それも忘れていたわ
 
工作員:結局、任務は失敗に終わっちゃったね~
 
通信士:あなた、裏切っておいてよく話せるわね
 
工作員:君らの味方でもあるって言ったでしょうに
 
殺し屋:そのスタンスは、変えるつもりがないと
 
通信士:といっても……あなたに妨害された覚えが何一つないのよね……。情報屋側にいったけど……具体的に何をしたのかしら? 
 
工作員:いや、何もしていない
 
殺し屋:本当に何がしたいんだ
 
工作員:じゃあこの辺で。いずれまたどこかで会うでしょ。その時は味方かわからないけど……いや、味方かも……いや、敵か…? まいいや。じゃあね~
 
通信士:11(イレブン)との通信がきれた。はぁ……今日は大変な一日だったわ。……任務は終了よ。ナンバー10、帰還して
 
殺し屋:……それで
 
通信士:えっ?
 
殺し屋:出口はどっちだ?
 
通信士:どこまでも世話が焼けるわ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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