「劇団四季を観たい!」一歩踏み出した母がイキイキしていた話
「一緒に劇団四季を観に行かない?」
そう誘われたのは、3月頃でした。
ミュージカルなんて無縁だった母。趣味といえばショッピング(安くていいものを見つけるのが上手)とカフェでお茶をするくらい。
都会に出ていくことはなく、友人関係もごくわずか。自分から連絡をとっているところを見たことがありません。
そんな母が劇団四季のミュージカル『アラジン』を見て、少女のようにキラキラした目をしていました。
母の新たな人生が幕を開けた。そんな気がしました。
自分の「こうしたい」に素直になってきた
私の母は、10歳上の父と若くして結婚しました。
もともとあらゆる欲が弱い上に、お金を全然使わない父と結婚したから、これまではミュージカルを観に行く発想自体がなかったそうです。
子育てが一段落したのに加え、ネットで調べたりチケットをとれるという便利さから、観に行くハードルが下がったのだと思います。
でもなにより最近の母は、知らない世界を見てみたいという気持ちが湧いてきているように感じます。
かつては抑え込んでいたであろう「観てみたい」「行ってみたい」という自分の欲や願望を、解放できるようになってきたみたいです。
それがなぜなのかも掘り下げたいところですが、今回は先に進みます。
劇団四季のミュージカルを観てみたい!と思い立ってからがとても早かった。
サイトで上演スケジュールを調べ、日にちを決め、慣れないネット予約をがんばり、あっという間にチケット購入まで完了させました。
母自身は「自分はなにもできない」と思っているようだけれど、私からするとやろうと思えばなんでもできると思っていて、それが証明された瞬間でした。
「ミュージカル好きみたい!」
上演中、隣に座る母はとても楽しそうでした。興奮気味に拍手をしたり、派手な演出に「わっ!」と声を出して驚いたり(小さくね)。
休憩時間に一旦外に出て感想を聞いてみたら、「お母さん、ミュージカル好きみたい!」と言っていました。
突然歌って踊るのがあまり好きではない人もいるみたいだけれど、自分はどうやら好きらしい、と気づいたみたいです。
自分がなにを好きなのかって、いろんなものに触れてみて初めてわかる部分が大きいと思っていて。
今回母は、安くない金額を払い、はるばる都会に足を運ぶという行動をしました。
それによって、自分の心が動く経験をした(動かない経験もまた貴重だろうなぁ)。
しかもそれが母の自発的な決定というのが良くて。私が誘っていつもと違う経験をするのもいいと思うけれど、自分の願望に突き動かされてした経験というところに、より一層感動しています。
少し大げさかもしれませんが、今回の一件で母がようやく自分の人生を歩き出せたように見えました。
これまでの日々が母の人生じゃなかったかというとそうではありませんが、話を聞く限り、今が一番自分のしたいように生きられていると思います。
母の人生がこれからどんなふうに進んでいくのか、楽しみで仕方ありません。
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