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「体内の火で燃やす食べ物」

体の中に火が生まれてから、どれほど年月が経っただろう。二日だ。二日しか経ってない。だからみんな、てんやわんやしている。

熱い!その声が、あちこちで聞こえ、それは全人類が言った言葉かもしれない。
最初に体内に熱さが来て、次に体内は温まりだし、次第に安心感のようなものが体内を包み込み出した。
そして、何を食べても、美味しく感じるようになった。

どんな冷たい食べ物も、生物も、体内で一番良い火加減で燃やしてくれて、旨みが大量に溢れた状態で味が喉まで逆流して口の中に広がる。
火加減搭載腹部。こんな、誰しもがグルメになれる、素晴らしい性能が、何故か2024年1月12日に人間に搭載されたのだ。

その男は、恋人にフラれたばかりだった。ロマンチックに没頭している男は、初デートで恋人に花束をあげた。恋人は「いきなり〜」って笑って、更にからかってきたけど、いつも、家に飾ってあって、とても嬉しかった。
その花束を、別れる時に、突き返された。

食べようかな。
男は、その花束を、食べる事にした。
体内の炎で、美味しくなった花を食べる。
それで、花とも、恋人とも、離れ離れになるんだ。

一枚の花びらをちぎって口に入れた。
そして、甘い味が喉へと逆流してきた。
一気に沢山の花をもぎ取って、口に入れた。
沢山の甘い味が、逆流してきた。
男はその甘い液体を、そのまま床に吐き出した。
花から生まれた甘くて美味しい液体が、床にこぼれた。
そして、涙を二粒垂らし、しょっぱくなった液体を、また、口に入れた。
丁度良い味だ。丁度良い味の筈なのに。
恋人の甘さ、僕の切なさ、一緒に混ざってとても素敵な日々だったのに、切なさの方が多かったみたいだね。あと一滴涙がこぼれたら、甘い液体もしょっぱくなって、全部台無しになるから、今日だけは、今回だけは、最後だけは、もう泣かないよ。
男は、涙を垂らさないように、お腹をさすったんだ。

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