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mekakusheスペシャル インタビュー by am8

普遍性と新規性を融合した作風で無二の音楽を追求するam8。
今年の新曲第2弾となる楽曲「YT ft. mekakushe」(読み:ワイティー フィーチャリング メカクシー)を6月7日にリリースした。
タイトルの“YT”には、今年始め逝去された音楽家・高橋幸宏氏への想いと“Young Time(若い時代)”の衝動という意味が込められ、am8的青春アンセムとして昇華。ゲストボーカルには、サブスクリプションシーンで熱視線が注がれているmekakusheを招き、切なさとポップの交差する立体的な作品に仕上がっている。

本稿のインタビューでは、ゲストボーカルを務めたmekakusheの音楽遍歴に迫ると共に、YMOというグループへの想いについても語ってもらった。



● am8は、ご存じでした?

mekakushe 何かのプレイリストで「Hatsukoi ft. Hana Hope」を耳にしたのをきっかけに知りました。あまり実像がないので「どういう人なんだろう」と思いつつも、気になる存在だったので、こうやって話をいただけて、すごく嬉しかったです。私自身、ボーカルやコーラスとして、他のアーティストの制作に参加したい時期でもありましたし、タイミングもよかったです。


● 参加していただいた今回の曲、どのようなイメージでしょう?

mekakushe 「Hatsukoi ft. Hana Hope」や「Summer Lost 2023 ft.butaji」とは、印象の違う楽曲だなと。正直なところ、すごく重いテーマだし「自分なんかで大丈夫かな」と思いました。自分は尊敬している方や恩師が亡くなった経験がまだないので、それに伴う痛みや哀悼を完全に理解して歌うことができるのか不安だったんです。でも、歌詞を読んだり、楽曲にこめられた意図を教えて頂いたりしていく中で、「大切な人を失った人って、こういう曲を作るんだな」とすごく刺激になりました。


● “YT”には“Young Time(若い時代)”という意味も含んでいます。今に至るまでの経緯を訊いていきたいのですが、そもそもどのような少女時代を?

mekakushe 物心ついたときから、クラシックが身近にあるような環境でした。母がピアノの先生だったし、姉もずっとクラシックをやっていたので、自分がピアノを始めて中学生〜高校生〜大学生と音楽の道へ進んだのも自然な流れでしたね。

一方で、ポップスは全く親しみのない遠い存在でした。小さい頃は自分を占めるクラシックの割合が大きすぎて、この世のポップスはaikoとサザンオールスターズくらいしかないと思っていましたから(笑)。だからこそ、今でもポップスに憧れが強いのはあるかもしれませんね。


● クラシックのアーティストでは、誰が好きだった?

mekakushe 決定的なのは、武満徹さんですね。中高生のころ好きになって、同級生がモーツァルトやバッハ、ベートーヴェンを弾いている中、一人だけ「武満徹の曲を弾きたい!」って言っていました。初めて「リタニ〜マイケル・ヴァイナーの追憶に〜(1989)」を聴いたとき、「すごくカッコいい!」と思っちゃって。今になっても、ポップなメロディーラインがある美しい現代音楽だと思います。

当時は、武満徹さんや三善晃さんのような日本の合唱曲や現代音楽の作曲家が好きでした。その中に、坂本龍一さんや矢野顕子さんもいらっしゃって。自分的には、クラシックとポップスの架け橋になったのが、その人たちだったと思っています。「ポップスに進んでいきたい」と思えるようになる道筋を、すごく滑らかに誘導してくれた感じがありました。


●クラッシックからポップスへ… そういった変化がピアノを通じて自然に訪れたって事ですね。

mekakushe 高校3年生の冬ごろから、学校で勉強しているクラシックとは別軸で、ポップスの活動を始めました。ライブハウスに出てみたり、SoundCloudに作った曲をアップしてみたり。クラシックは自分の基礎になっていますし大好きなんですけど、当時は若いながらに「音楽で変わりたい。この現状をどうにかしたい」と思っていて。自分を救ってくれた音楽がポップスでしたし、「創作活動をしたみたい」という意欲もあったので、ポップスに舵を切ることにしたんです。最初はピアノの弾き語りで始めて、3年前くらいまでずっとそのスタイルでしたね。ピアノという楽器が大事だからこそ、ずっと弾き語りに固執していたんだと思います。


● 今のスタイルになったターニングポイントは?

mekakushe
 2021年の春ごろですね。23歳くらいの時に「売れなきゃ!」ってすごく思うようになって。大学院を卒業するタイミングだったので、「音楽で食べていきたい」と考えていたんでしょうね。そこから、いろいろな楽器やアプローチを試すようになり、「弾き語りじゃなく、誰かと一緒に作ってみよう」と思い、初めてアレンジャーの方と一緒に共作にチャレンジしたんです。それにより、自然とエレクトロの要素が入ってきました。

●きっかけになったアーティストは?

mekakushe それこそ、YMOや矢野顕子さんだと思います。自分の中で、クラシックとエレクトロの境目にいたのが彼らでしたし、「エレクトロって融合するとすごく良いんじゃないか」と思えるようになったのはYMOのおかげ。あとは、Corneliusも大好きですね。そういう出会いを経て「私もこうなっていきたい!」と思うようになり、クラシックからポップス、ポップスからエレクトロと移り変わって、今の音楽性になりました。我ながらいろいろな音楽を経験してみた若い頃(Young Time)だったなと思います。


●なるほど、今回の曲にも通じる話ですね。ちなみにYMOとはどう出会ったんですか?

mekakushe クラシックを勉強する中高に通っていたので、学校の視聴覚室に置いてあるCDやDVDのラインナップが全部クラシックだったんですよ。そんな作品カタログの中でなぜか置いてあった坂本龍一さんのCDを手に取って、聴いてみたのがきっかけです。10年前くらいかな。


●自分たちの世代からすると、YMOってどのような存在?

mekakushe 私の周りの子は「日本でテクノやエレクトロというジャンルを築いた人」という認識ですね。だから、本当にレジェンドという感じで。「YMOがきっかけで音楽を始めた」みたいな人もいないですし、決して親しみやすいものではないというのが、実情な気がします。ただ、YMOやその周辺の方が活躍された痕跡は今でもいろんなところに残っていますし、知らず知らずのうちに触れてきたことは多いと思っていて。「これって松本隆さんが作詞してたんだ!」とか。そういった意味では、今の若い世代にも確実に影響を与えていると思います。


●ちなみに今回のテーマ、高橋幸宏さんについては?

mekakushe 髙橋幸宏さんという存在はもちろん知っていましたが、今回のお話をいただいたとき、「どんなところが好きだったんですか」お訊きしたように、人柄などについてはよく知らなかったんです。私からすると、YMOのなかでは坂本さんの存在が一番目立って見えていたのもあり…。


●なるほど、そうでしたか…。話を戻しますが、現在はどんな方と一緒にエレクトロサウンドに取り組まれてますか?

mekakushe 曲のアプローチやイメージに応じて、様々なアレンジャーさんとご一緒しています。とはいっても、バンド畑の人よりはすべてDAWで作っている方にお願いしますね。今年の2月にリリースしたアルバム『あこがれ』では、君島大空さんやFor Tracy Hydeというシューゲイザーバンドでコンポーザーをしていた管梓さんなどに依頼しました。


●いわゆるトラックメーカーの方たちが多いのですね。その中で最近の推しのアーティストっていますか?

mekakushe
 やっぱり変わらずCorneliusです。新譜のリリース日がこの曲と同じだなと思いました(笑)。基本的には、いろんな人を常にチェックしていますね。一緒に曲を作ったり、リミックスをしてくださったりする方を、日常的に探しているところはあるので。


●作家活動も積極的に行われていますよね。楽曲の提供を始められたきっかけは?

mekakushe  SAKA-SAMAという地下アイドルのプロデューサーが「いい曲を書く人知らない?」といろんな人に相談していたらしく、それを聞いたライブハウスで働いている知り合いが「興味ない?」って声をかけてくれたのが最初ですね。当時はコロナ真っ只中だったのもあり、軽い気持ちで「やってみようかな」と思い始めたんですけど、いざ取り組んでみると、めちゃ楽しくて。自分の曲を誰かが歌ってくれたり、誰かのプロジェクトに参加させてもらったりすると、自分で作っているだけじゃできないことを経験できるじゃないですか。それがたまらなく楽しくて。


●楽曲提供をする際のこだわりはどんな部分でしょう?

mekakushe ポップスって、どれだけ広く多くの人に届けられるか?を試されている世界だと思うんです。だからメロディーを分かりやすくしたり、変わった音を入れてみたりして、親しみやすくキャッチーな仕上がりになるように心がけています。やっぱり分かりにくい曲は、NGなので。
先ほどはCorneliusやYMOも話題にあがりましたけど、基本的に私はめちゃくちゃポップスが好き。坂本龍一さんは雲の上にいる憧れの人であって、決して親しんでいるものではないんです。自分を救ってくれたのは、インディーズバンドやaikoが作るようなポップソングなので、「ベースがポップじゃないと無駄になってしまう」というのが私の哲学です。もちろん、難しいアプローチがしたいとかCorneliusみたいにカッコよくしたいとも思いますけどね。


●楽曲提供用のポップスも、楽しみながら制作されているんですね。

mekakushe アーティスティックな音楽をされている方の中には、「ポップスなんて」と考える方も結構いると思うんですよ。でも、ポップスの世界っていろんなアプローチがやり尽くされているからこそ「もっと新しいことをやっていこう」という風潮もすごく強くて。私は、それもすごくカッコイイことだと思うんです。
楽曲提供を通して、みんなに聴かれるようなメロディーについて勉強させてもらってますし、作家活動を始めてから2年が経った今では、曲作りがどんどん楽しくなってきています。トライ&エラーを繰り返す中で、すごく鍛えられています。コンペで選ばれない時はめちゃくちゃ落ちこみますけど、それすらアーティスト活動をしているだけでは経験できないことだと思うので。アーティストと作家、2つを大事にしている今の生活は、自分にとってすごくいいバランスですね。


●前向きに経験を積んでいく姿勢、とても素晴らしいと思います。
これからのご活躍、楽しみにしています。今日はありがとうございました!



mekakushe

【mekakushe プロフィール】
アーティスト、音楽作家

“不思議な透明感”と評された歌声、
類稀なるポップセンスを兼ね備えた新世代アーティスト「mekakushe」。

3歳からクラシックピアノをはじめ、次第にポップスに傾倒。音源ではエレクトロニカを基盤に、ライブではクラシカルなソロやバンドセットなど、
その音楽性は拡張し続けている。

2021年4月に自身初となるアルバム『光みたいにすすみたい』を発表。
耳の早いリスナーの間で話題になり、各サブスク公式プレイリストの一曲目、
カバーアーティストを飾る。
花王ロリエのTVCMタイアップソングに抜擢、
俳優の斎藤工、玉城ティナのラジオでプッシュされる。

一方、高い音楽センスが買われ、作家としての活動も行う。
これまでに、でんぱ組.inc、THE IDOLM@STERに楽曲を提供するなど、
アーティストとして作家として、両軸で活動を行っている。



am8

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