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butaji×ADD(ORESKABAND)スペシャル 対談 by am8

2023年1月11日にデジタルリリースされたam8の新曲、「Summer Lost 2023 ft.butaji」。この曲のインストが出来上がったのは、2020年のことだった。

突然現れたウイルスの脅威により、日常はガラッと様変わり。外出することは悪とされ、ひたすら自宅にいることを推奨された。春の桜、夏のセミ、秋の紅葉、冬の雪。その中のたったひとつですら、生身で感じることを許さない空気が社会にはあった。

あの夏に鳴いていたセミは、幸せだったのだろうか。

7年間もかけて土のなかで成長したのに、ほとんど人に聞かれぬまま息絶えて。鳴く理由を「求愛行動だ」と言い切ってしまえばそれまでだが、「ひとりでも多くの人の記憶に生きていたい」と思っていた命もあったのではないだろうか。

インストの「Summer Lost」は、そうやってセミに想いを馳せた1曲だ。
そして2年の時を経て、新たな思想を背負い生まれ変わった。

アレンジされた「Summer Lost 2023 ft.butaji」のテーマは「独裁」。2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、年を超えても終わる気配を見せず、いまだ現地では過酷な毎日が続いている。だからこそ、am8は問いたいのだ。

独裁って気持ちいいですか。本当は虚無感に襲われているんじゃないですか、と。

淡々としたサウンドのなかに禍々しい想いを香らせるべく、スペシャルなメンバーが集結。サクソフォンはオルタナティブもセンシティブも自由自在に吹きこなすORESKABANDのADD、歌唱はフォーキーなサウンドからエレクトロまで手掛けるシンガーソングライターのbutajiが担当した。このインタビューでは、ゲストとして「Summer Lost 2023 ft.butaji」に参加したADDとbutajiに胸のうちを語ってもらう。

実はブラッシュアップなんて必要ないんじゃないか

●急にam8から声がかかったので、butajiさんはびっくりされたんじゃないですか。

butaji (この曲の作詞を手掛けた)カワムラユキさんからのお誘いだったので「もちろんやります!」って感じでしたよ。

●カワムラさんとはご交流が深いんですか。

butaji もともとは、それぞれが七尾旅人さんの知人なんですよ。1、2年前、旅人さんがYouTubeでやっていた企画の座組で一緒になったとき、初めてお話をして。そのときから「いつかカワムラさんが誘ってくれたら一緒にやりたいな」と思っていたかもしれないですね。もう待機していた感じ(笑)。

●am8の音楽には、どのようなイメージを持たれていますか。

butaji 電子音楽の魅力がすごく詰まっていますよね。サトシ・トミイエさんがやっているCharaさんの曲や坂本さんがプロデュースした中谷美紀さんの曲が好きなので、もちろんam8も好きな音像でした。


●今回「Summer Lost 2023 ft.butaji」を制作してみて、お互いの演奏や歌唱についてどのように感じましたか。

ADD インストの原曲が一味も二味も違う作品に生まれかわったなって思いました。高音の多かった前作に対して、今回はめちゃくちゃ低音が際立っているのもいいですよね。何よりも歌声が凄すぎて。完成度が高くて「私の演奏いるのかな」って思っちゃった(笑)。

●butajiさんはピッチがいいですよね。

ADD そう思っております!

●なにか秘密があるのかなって話していたら、弦楽器をやっていたそうなんですよ。

butaji そうなんですよ。バイオリンを弾いていました。

ADD それはピッチのプロフェッショナルですね。

●butajiさんはADDさんの演奏について、どのように感じましたか。

butaji ギリギリで成立していて、最後に破綻するバランスがすごかったですよね。ともすれば壊れてしまいそうな綺麗に配置されたメロディーが、ラストで見事に壊れていく。繊細なニュアンスが、本当に素晴らしかったです。最高。

ADD あらあら嬉しい。ありがとうございます。実をいうと、今回参加させていただいた曲は、コンテンポラリーサックスだと思っているんです。リファレンスは聴かずにやったほうがいいような気がしたので、その場でやらせていただきました。

butaji ADDさんがスタジオにいらして、もう即興でって感じだったんですか。

ADD そうですね。「とりあえず一発やってみましょう」って吹いたやつにアドバイスをいただいて、いろいろパターンを考えていきました。

●もともと想定していたものとは違う、リフレインになるメロディーをパッと生んでくれたのがよかったです。

ADD 我ながらナイスでしたね。

●ADDさんは、所属しているORESKABANDだと、どのようなプロセスで楽曲を作り上げていくんですか。

ADD 役割分担が、けっこうしっかりしてるかもしれないですね。ボーカルのiCasが持ってきた曲をみんなでブラッシュアップして、フルコーラスを2パターンくらい作る。ホーンアレンジは私が任されています。

●担当なんですね。

ADD いつの間にかそうなりました(笑)。「ここの歌詞どうしよう」「○○がええんちゃう?」みたいな話をすることは多いかな。コライトタイプのバンドですね。

●憲法9条をテーマにした「No.9」、すごくいい曲ですよね。しっかりとORESKABANDのサウンドで、なおかつメッセージとして守りに入っていないというか。

ADD 「No.9」に関しては、叩きの時点でほとんど完成していました。誰もあーしろこーしろ言わず、みんなすんなり歌詞や曲に入ったからなのか評判もよくて。不思議ですよね。「実はブラッシュアップなんて必要ないんじゃないか」と思っちゃう。

●でも、自分ひとりで作っていると稚拙というか。どこか物足りなさを感じることってありませんか。

butaji あります、あります。僕は『RIGHT TIME』を作ったとき、譜面を作って演奏してくれる方々に投げる意識でいました。それでこそ、成立するものがあるような気がして。“納得する”って難しいですよね。


気分転換になる日曜日のルーティン

●おふたりのインスパイア源になっている、最近のマイブームなどありますか。

butaji なんだろうな。あるような気はするんだけど、浮かばないですよね(笑)。

ADD 私はマイブームありますよ。毎週日曜日は、キックボクシングへ行って、銭湯へ行って、整体に行くっていうルーティンをしてます。

butaji 整いまくり!

ADD このコースをすると、自分の中から余計なことが出て行って必要なことだけを考えるようになれるんです。気分転換にいいですね。まだ、作曲には生きてないですけど(笑)。

butaji マインド全体には影響が出てるかもしれないですよね。

●butajiさんは、いかがですか。

butaji 「趣味なんですか」って訊かれるとすごく困っちゃうんですよね(笑)。

ADD たしかにそうですね。私がすぐに「これです」って言えるのは、そのルーティンができたからなだけなので。それまでは、ざっくりと「お酒を飲むことです」みたいな感じだったな。

butaji そうですよね。お酒は好きですけど、コロナ禍だから「居酒屋さんへ行こうとするのってどうなの」って考えちゃう部分もあって。でも、最近になって映画やアニメ、ドラマをほとんど見てることに気づきました。インプットはゼロじゃなかったという(笑)。ひとつを掘り下げるのではなく、幅広くいろいろなものを見てるかもしれないです。

ADD 私も一緒かも。たまに「けっこう幅広く見ているんだな」って気づきますよね。

●音楽の面では、いかがですか。

butaji テイラー・スウィフトの新譜をずっと聴いていましたね。すごく好きでした。

●アカデミックミュージックミュージックばかりを聴くわけではないんですね。

butaji チャートの曲は、けっこう聴いていますよ。

●では、最後に。2023年は、どのような年になりそうですか。

ADD ORESKABANDが活動20周年になるので、主体的にイベントを打っていく計画があります。リリースは、1月が制作期間になっているので、2、3月で何かしでかすんじゃないかな。

●ADDが参加してからは、何年になるの?

ADD もう8年くらい。すごいですよね。ちょっと信じられない感じが。

●butajiさんは、いかがでしょうか。

butaji 本当に何も決まってないです。昨年は他の人の型に当てて書く仕事が多かったので、今年は自分のソロ作品を出せたらいいですよね。そういうことをうっすら考えています。

<ORESKABANDよりお知らせ>
ORESKABAND 20th Anniversary “WE”
【DATE】2023.3.11 [Sat]
【VENUE】東京 新代田FEVER
【OPEN】18:30
【START】19:00
【TICKET】ADV 4,000円/DOOR 4,500円(D別)
【ACT】ORESKABAND あっこゴリラ

【TICKET INFORMATION】
イープラスにて1月12日(木)正午より発売開始
https://eplus.jp/sf/detail/3793150001-P0030001

【INFO】
FEVER
https://www.fever-popo.com/contact/


Comment from 手島領
butajiさんとADDさんがいなかったら「Summer Lost 2023 ft.butaji」は、できていなかったと思うので、おふたりの才能をお借りできたことにとても感謝しています。どういう形かはわかりませんが、このメンバーでライブがやりたいですね。

メッセジャブルな曲で始まる、2023年。あの曲を聴いたからといって日本人がどうってことはないのかもしれないですけど、戦争が終わるように願いをこめて。

過去にリリースしたアナログは下記よりお求めいただけます。


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