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AKBのヘビロテ聴いたらわりと安藤忠雄建築だった


みなさんごきげんよう。20世紀の遺残が片田舎より全国ネットでお届けしています。

いやー、今年もやってきましたね、サンリオキャラクター大賞の季節が。
愛するあの子にちゃんと票を投じていますか?あたしくらいになると高みの見物決め込んでる、なぜなら我が推しの『ぽんぽんひえた』君、選挙にエントリーすらされていないから。

ひえた、来年こそがんばろね♡



選挙といえば、というおはなし。
噂によればAKB48ってアイドルがいて、『ヘビーローテーション』っていう曲を出してるらしいのだ。

ええ、今更と笑わはりますでしょうな。笑うのはええことやさかい、今日はズブの素人にちょっとだけ語らしてな。


先日ラジオを聴きながらぶらぶら散歩をしていたら不意にこの曲がかけられて、おそらく大人になってから初めて意識的に耳にしたのだけど、歌詞も歌声の若さもメロディもすべて衝撃的で呆然としてしまった。ごたついた生活に疲れていたのもあるのだろう、もうちょっとうっかりさんだったら道端でめそめそ泣いちゃってた。涙もろいのは歳のせい、借りが多いのは利子のせい。


リリースは2010年8月18日、なんとびっくり13年前である。干支がすっかり一回りしちゃったみたい。

当時の自分が何してたか思い返してみたけど、制服の袖に忍ばせたイヤホンで授業中にミスチルのSUPERMARKET FANTASY聴いてて、給食のゆでたまごにハゲた担任の似顔絵描く芸とかで陰キャのくせに人気者たちの承認を得てて、みんなでやってたアメブロのアンチコメントに『嫌なら見なきゃいいじゃないですか(笑)』って返信してて、けっこう最悪な中学2年生。あーん待ってよ、もうちょい時間くれたら、かわいい青春エピソードとかもサルベージするから。

時代は菅政権で、スカイツリーはついに東京タワーの高さを超えて、池上彰はいい質問ですねぇってベッキーを褒めていた。


当時わたしはゴリゴリの韓流ブームのさなかにあって、日本のアイドルには明るくなかったけれど、AKB48というものが社会現象化していることはもちろん知っていた。
ファンたちがお気に入りの女子に楽曲でセンターを取らせるために、血で血を洗う戦争をする。オオシマさんとかマエダさんとかいったうらわかき乙女たちと握手をするべく、天高くCDを積み上げる。

キャッチコピーは『会いに行けるアイドル』で、それがどれだけ大変なことか、大人になって接客業をするまで気づかなかった。
世の中にはいろんな人間がいる、というのは月並みな言葉だけど、マジで思ってる5倍くらいのバリエーションで神様は人間を創りたもうたらしい。

週末お父さん終末ガチ恋おじさん、群れると突如識字率が3%に暴落する学生たち、もはやmetamorphosedと訳したいほどの変態、ケセラセラも言わせぬエトセトラ。
あの魑魅魍魎たちに曝露されるのだ、うまれたての倫理観しか持たぬ、いたいけな女の子たちが!ああ抱きしめてあげたい、ボクだけは君の理解者だから…ごめんこんな仕事させて…必ず迎えに行くから待っててネ……


で、爆発的大ヒットをかましたのが言わずと知れた『ヘビーローテーション』である。

作詞はもちろん、セーラー服を脱がさないでほしい旨やガラガラヘビに気をつけてほしい旨などタレントに多種多様な主張をさせてきた名手・秋元康氏だ。汎用性の高い楽曲で、お茶の間のニーズを満たし続けるプロ。

ことAKB48の楽曲においては、ひたすら具体性を排除して大衆に届ける手法をとっていることが多い印象だ。『恋するフォーチュンクッキー』に至ってはヘイヘイヘーイである。いよいよ本当に何も言っていない。わたしだって三千世界の鴉を殺しヘイヘイヘーイで飯が食いたい。

さて、『ヘビーローテーション』もご多分に漏れず、汎用的であることに全振りしている。

ポップコーンが
弾けるように

好きという文字が躍る

顔や声を
想うだけで

居ても立ってもいられない

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のっけから全力でぶん殴る構成が気持ちいい。星飛雄馬も慄く豪速球ストレートである。
小難しい解説は必要ない、思想も感情の絡まりもない、つまりはあなたが好きって、それだけのこと。言いたかっただけなの、返事なんていらないから!まっすぐな少女のまなざし、澄み切ったこころ、けがれなき春。後ろ暗いところの多い四半世紀選手は思わず、眩しさに目を伏せる。

こんな気持ちになれるって
僕はついているね

j-lyric.net

そんな気持ちになれるのは運とかツキとかの問題じゃないってことに、愛しい彼女たちはまだ気づいていない。

そしてお馴染みのあのサビである。

I want you!

I need you!

I love you!

ハートの奥

ジャンジャン溢れる愛しさは

ヘビーローテーション

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自分が何者で相手がどんな人でどう出会い何を経験したか、なんて情報をひとつも登場させない。誰しもにこの曲を歌う権利を、受け取る権利を、贈り主を決める権利を持たせる。
伝えたいのは、原始、女性は太陽であり、ことさらうちの子たちはキラキラしててかわいいから寄っといで!ってことだ。

プレーンで如何様にでも形を変えうる素材をそのままに、圧倒的な光のパワーを最大限に活かす、余白の美学。それってもう、安藤忠雄じゃん?

人は誰も

一生のうち

何回愛せるのだろう?

たった一度

忘れられない

恋ができたら満足さ


そんなときめきを感じて

花は綻ぶのかな

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正直、2番の歌詞なんて今までまともに聴いたことがなかった。人は誰も一生のうち何回愛せるのだろう、すげー日本語じゃない?どれだけ咀嚼しても喉に詰まって窒息しそう。

Loveの持続可能性を問うた上で、否、花などひとつ咲かせば万々歳、とあっさり切り捨て、さらにその一太刀を『ときめき』と呼ぶスピード感。とてもじゃないが追いつかない。

さて、今宵は忘れられない恋の話をしようか。

いつも聴いてた

favorite song

あの曲のように

ずっと繰り返して

24時間

君だけリクエスト中

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夏井いつき先生がブチ切れそうな意味重複のオンパレードである。でもCメロにたどり着くころには、こっちの脳はもう甘やかさに麻痺してしまっている。

そもそも、ヘビーローテーションって何だっけ。オキニの鬼リピ!みたいな意味合いですっかり生活に定着しているけれど、調べてみれば元々は放送用語で、ラジオ局が推薦曲を繰り返し流すことを指していたらしい。なるほど君だけリクエスト中、になるわけだ。わたしがラジオでこの曲と再会したのも、わりと運命的なことだったのかも。

I want you!

I need you!

I love you!
ハートの奥
ジャンジャン溢れる愛しさは
ヘビーローテーション

ヘビーローテーション

j-lyric.net

ついに最後の最後まで情報がひとつも増えないまま、大島優子ソロで大団円である。情報過多社会に疲弊した身体に染み渡る、キャッチーなメロディーにシンプルなメッセージ。


ごちゃごちゃ言ったけどもさ、とにかくカワイイが映えるならなんでもいいという強引さが最高にクールだよね、って話をしたかったんです、2023春。


PVも初めてちゃんと見た。蜷川実花監督のビビッドでエッチな世界観でランジェリー姿の女子たちがキャッキャウフフしていて凄まじい。令和じゃもうちょい怒られるかもよ。


ちなみに神セブンもまともに諳んじられないわたくしですが、ヘビロテはちょっと踊れます。なんでかって修学旅行の演し物でこれを披露するグループに選抜され、よりにもよってじゃんけんに見事勝利してセンターの座を勝ち取ったから。
多感な時期なのにマジで可哀想、誰か今からでも代わってあげてよ。

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