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子犬を迎えた秋 (#虎吉の交流部屋プチ企画)

#虎吉の交流部屋プチ企画
にエッセイで参加します。
お題:秋の思い出

10年前の10月、私は娘を産んだ。
3年前の10月、我が家は娘の7歳の誕生日に
子犬を迎えた。
我が家にとって秋とは、家族が増える季節だ。
涼しくなり、だんだんと冬支度を始める頃、
我が家は新しい命を迎えてきた。

子犬が我が家に来たのは、
冷たい小雨が降る夜だった。
キャリーの中に子犬を入れ、
家までの道を娘と歩いた。
先に娘が傘をさして歩き、私はその後に続いた。
娘がどうしても持つと言ってきかなかったので、
子犬が入ったキャリーを持たせた。
どう見ても持っているものが
重量オーバーな感じの
危なっかしい娘の歩みを、
私は後ろから見ていた。

左右に揺れるキャリーの中から、
子犬が困ったようにこちらを見ていた。
迎え入れるまで何度も会いに行っていたので、
子犬は既に娘に懐いていたが、
キャリーに入れられるし、揺れるし、
雨も吹き込むし、不安だったのだろう。

一人っ子の娘に
弟を迎えてあげたつもりだったが、
娘は子犬のお母さんになるのだと
張り切っていたため、
私は突然おばあさんになった。
まあ、なんでもいい。
お母さんでもおばあさんでも、
どうせ世話のほとんどは
私がすることになるのだろうと覚悟を決めたが、
果たして本当にそうなった。
形式上は子どもと孫でも、
私の中では子どもが二人に
なったようなものだった。

小さなお母さんは、
子犬のためにミルクをつくったり、
絵本を読み聞かせてあげたり、
おもちゃで遊んであげたりと、
楽しいお世話は張り切ってしていた。
子犬の3度目の予防接種が済み、
もう外に出してもよい頃になると、
落ち葉はすっかり落ち、秋も終わりかけていた。

小さなお母さんは、
子犬の初めての散歩も張り切った。
ぶかぶかのハーネスに真新しいリードをつけて、
かっこよく町に出るつもりが、
子犬は怖がって全く歩かなかった。

仕方なく、お散歩用の小さな手提げバッグに
子犬を入れ、外の景色を見せながら歩いた。
子犬はバッグから顔だけ出して、
きょろきょろと周りを見ていた。
子育ては思い通りにいかない。
小さなお母さんはそれを学びつつ、
バッグに入った子犬の散歩も
楽しんだようだった。

手提げバッグに収まる子犬と娘

そのうちだんだんと子犬は歩くようになった。
落ち葉だらけの道を歩くのが
事実上の散歩デビューとなった。
好奇心旺盛な子犬は、落ちている葉っぱを
口で拾っては、くわえたまま歩いた。
子犬の小さいからだに葉っぱは大きすぎて
道を引き摺り、カサカサという音がした。
楽しい秋の散歩だった。

子犬は成犬になり、
そして4度目の秋がやってきた。
もう落ち葉をくわえたまま
歩いたりはしなくなったが、
まだまだやんちゃで、形式上は私の孫でも、
我が家の末っ子のような立場を貫いている。

秋はどことなく物悲しくても、
私にとっては生命力が活気づくような
気持ちにさせてくれる季節なのである。

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