強面のオニーサンがうちの犬を…

近所にヤクザさんの事務所があり、
よく道に出てボスを見送ったり、
出迎えたりしている。
恰好がそのような出で立ちなので、すぐにわかる。

ある時、娘のチビ子が一人で帰って来る時に
ヤクザさんたちの集まりに遭遇したらしい。
一人のヤクザさんがコンビニの袋を下げて
事務所に戻って行くのを目撃したチビ子は、
「ソフトクリームが入ってた！」
なんて嬉しそうに私に報告し、
「かわいい」とまで言っていた。

他の日も、チビ子が一人で帰る時、
またヤクザさんたちの集まりに
遭遇したらしい。
その中の一人が煙草を吸っていて、
自ら吐き出した煙を手で払って、
チビ子の目の前に煙が行かないように
気を遣ったらしい。
帰って来てそれをまた私に報告し、
「意外と優しいんだね」なんて言っていた。

ヤクザさんたちの集まりの横を
私が犬の散歩で通った時は、
やや緊張気味で通り抜けたのだが、
うちの犬を見て「かわいい」と言ってくれたので、
「ありがとうございます」
と引きつり笑顔で返しておいた。
意外と気さくなんだなと思った。
だいたい横を通るだけで
緊張する必要はないのだけど、
やはり集団でいられると、
ちょっと怖いものがある。

ヤクザさんではないが、
回転ずしチェーン店にチビ子と行くと、
ルーレットゲームで当たったコインを持て余し、
チビ子にくれるおじさまが結構いらっしゃる。
たまにコワモテのおじさまに、
トントンと肩を叩かれたりすると
ドキーッとするのだが、
「これ、よかったらお嬢ちゃんに」
なんてニコッと笑いながら
コインを差し出されると、
こちらもホッとするやら、嬉しいやら。

マフィアみたいな帽子をかぶっていたり、
チンピラ風のアロハシャツだったり、
出で立ちは様々なのだが、親切な人に
ちょっと怖そうな人が多いのはなぜだろう。
人を外見で判断してはいけないってことだね。

エッセイ｜花咲ありす｜note

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