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【広島商人】知られざる戦後復興の立役者(10)突破

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10 突破

 ようやく竹原沖にさしかかってきた、夕陽が三呉線の連峰の静気に黄金の光彩を放っていたが、しだいに薄暗くなってくる。
突然、船長は驚いた様子だ。
 
 「赤信号が見えるぞ。航行禁止だ」
 
 と大声をはりあげた、他の船長たちも驚いた、
 
 「この広い海に航行禁止があるものか」
 
 いぶかりながら眺め入っている。
 
 「あの浮標灯の赤い光がわからないのか」
 
 まことに赤い電光が海上遠く目にとまる。
 
 「ふしぎだのう」

 「とにかく、船を止めやあ」
 
 船長たちは口ぐちに大声で叫び合う。
 
 「ここまで帰って来たのに、何か変事が起きたのか?」
 
 突然の出来事に、汗が私の全身をはいまわる。

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6,341字
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この文章は昭和31年11月に発行された「広島商人」(久保辰雄著)の冒頭です。(原文のまま、改行を適宜挿入) 広島は原爆が投下された約一か…

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