百紀夜稿

通勤などの隙間時間に手軽に読めるものを投稿。創作活動は、不思議系のもやっとした話が多め…

百紀夜稿

通勤などの隙間時間に手軽に読めるものを投稿。創作活動は、不思議系のもやっとした話が多め。朝より夜の方が仕事がはかどるタイプ。大学卒業後、CG 制作会社でマーケティングの仕事に携わる。人物やテクノロジー系のイラストが得意。

最近の記事

【怖い話】手毬唄 (ショートショート)

 古びた屋敷が山深い森の中にひっそりと佇んでいた。その屋敷は、かつては豪華な邸宅だったが、今や荒廃し、誰も住む者はいない。  ある晩、その屋敷の近くを通る旅人がいた。彼はふと、不気味な雰囲気に引かれて、その屋敷を探索することにした。  屋敷の扉は錆びついており、風が吹くたびにガタガタと音を立てている。彼はゆっくりと扉を開けると、中に足を踏み入れた。中は暗く、薄暗い光が差し込んでいた。  廊下を進むと、不気味な足音が聞こえた気がした。しかし、周りを見回しても誰もいない。不

    • 【怖い話】アンケート(ショートショート)

       レストランの隅にある作業机の周りでは、従業員たちが『レストランのサービス向上』のアンケート用紙を開封していた。  おのおのが手にした用紙を広げ、真剣な表情で文字を追いながら驚いたり、微笑んだりしている。  「これ、ちょっと変だよ」と従業員の一人が言った。  「『料理はとても美味しかったですが、店内はとても不気味でした』って書いてある……」  他の従業員たちも用紙を取り囲み、その不思議なコメントを読んだ。彼らは顔を見合わせたが、誰もその意味は理解できなかった。  「

      • 【怖い話】キネマ館の夜(ショートショート)

         拓哉は今日の段取りを頭の中で反芻しながら、待ち合わせ場所に着いた。  真理子との初デートに選んだのは、町にたった一つの古びた映画館だった。  この町は、都市と農村の間にある住宅地で、老朽化した団地がそこら中にある。  昔は大きな食品メーカの工場もあり、町も潤っていたが、今は高齢化率が高い限界集落と言われているらしい。  娯楽施設といえば駅前ボーリング場と、この映画館しかないが、元々映画にはあまり興味が無かったため、ここに入るのも初めてだった。  映画館は木造の建物で、外壁は

        • 【怖い話】黒いコートの女(ショートショート)

           澤田は仕事で疲れた身体を引きずりながら、一人で暗い路地を歩いていた。吹き抜けた寒風が肌を刺す。路地の両側には古びた建物が並び、自分の足音が跳ね返る。  そのとき、すぅーと人影が現れ、澤田の視界を横切った。  黒いコートに身を包み、耳元で切り揃えられたショートヘアの女性が月明かりに浮かび上がる。  滑るように通り過ぎるその女性の姿に目を奪われた。どういうわけか、昔からショートヘアーの女性に魅力を感じるタイプだった。  街灯の明かりを浴びて、端正な顔の輪郭が浮かび上がり、都

        【怖い話】手毬唄 (ショートショート)

          【怖い話】音楽堂の怪人(ショートショート)

          彼女は、夜毎にイェニチェリ音楽堂の幽暗な舞台に姿を現す。美しくも不気味な存在だった。 彼女はかつて、エレーナと呼ばれた音楽堂のスターの一人であり、その美声と圧倒的な舞台上の存在感で観客を魅了していた。しかし、彼女の栄光は短命であった。ある日、彼女は舞台上で不慮の事故に遭い、その美しい顔に深い傷を負った。その後、彼女は音楽堂の地下深くに姿を消した。 しかし、夜になると、エレーナの歌声が再び音楽堂を満たすと噂されるようになった。その声は美しくも哀しげであり、それを聴いた者たち

          【怖い話】音楽堂の怪人(ショートショート)

          【不思議な話】宝物(ショートショート)

           山間部の村に住むある老人が、毎晩村の外れの森に行き、何かしているという噂が広まった。村人たちはその老人を不気味だと感じ、交流を避けていた。  ある日、好奇心旺盛な村の若者たち3人が、その老人の家を訪ね、森に行く目的を尋ねた。老人は、昔失われた財宝を探していると静かに告げた。彼は冒険家であり、その財宝の秘密を知っている数少ない人物だった。 壁の写真には、沈没船から金貨を引き上げた若かりし日の老人が、笑顔で写っていた。 若者たちは老人の話に興味を持ち、彼と共に財宝を探す冒

          【不思議な話】宝物(ショートショート)

          【怖い話】境界線(ショートショート)

           ある小さな町に、古い墓地があった。その墓地は昔から町の住民たちの最後の安息の場であり、多くの人々がここに眠っていた。 ある夜、町は異様な現象に見舞われた。墓地の周りに不気味な霧が立ち込めた。今度は地中から奇妙な音が聞こえ始めました。最初はかすかな声だったが、次第に合唱のように墓地を包み込んだ。 何人かの住民は恐ろしいことに気付いた。墓地から死者の群れが押し寄せているのだ。死者の群れは、既に墓地を出て、町の中心部に向かって歩き始めていた。住民たちは、その現象に対処しようと

          【怖い話】境界線(ショートショート)

          【もやっとする話】カレーの秘密(ショートショート)

          ある小さな村に、村の守護神として語り継がれる伝説のヒーローがいました。彼の名は、カレンジャーと呼ばれていました。 カレンジャーは、村のカレー屋で働いていましたが、本当の役目は村の秘密を守ることでした。その秘密とは、村が代々守り続けてきた特別なカレーのレシピでした。このレシピで作ったカレーは、食べた人を長生きにする力を持っていると言われていました。 ある日、敵対的なカレー商人団が村を襲撃し、その秘密を手に入れようとしました。スパイスの交易ルートを断つと、村人たちを脅迫し、カ

          【もやっとする話】カレーの秘密(ショートショート)

          【怖い話】昆虫の森(ショートショート)

           夜になると南の森から不気味な羽音が聞こえ、畑や家の周りにたくさんの昆虫が集まるようになった。村人たちは、7年周期でやってくるこの現象は、不吉の予兆だと信じており、夜の外出すら避けるようになっていた。 村の若者マルコは、昆虫の群れが出現する時間帯に、森に入ることを決意した。原因を調査し、村人の不安を解消したかったからだ。  ある夜、彼が森に入っていくと、暗闇の中に何かが蠢いていているような感覚がした。突然、彼の周りに黒い昆虫の大群が姿を現した。蛾、甲虫、蝶……さまざまな種

          【怖い話】昆虫の森(ショートショート)

          【不思議な話】人形職人(ショートショート)

           小さな村の職人、エドワード・クレイトンは、美しい人形を作ることで有名だった。彼の手仕事は完璧で、人形たちの目は輝きを帯び、動きは柔らかく、まるで生命が宿っているようだった。 エドワードは森の中にある古い屋敷に移り住み、人形を作り続けた。しかし、村人たちの中には、エドワードの人形を不気味だと感じ、その屋敷を避ける者も少なくない。 ――ある夜、村の少女ローラが、エドワードの屋敷の庭に迷い込んだ。彼女は、偶然窓の隙間から見えた人形たちに魅了され、エドワードに会いに行くことを決

          【不思議な話】人形職人(ショートショート)

          【もやっとする話】さかさま(ショートショート)

           ある日、小さな町のレストランで驚くべきことが起こりました。そのレストランのシェフ、ジョーは、新しいレシピを試すことに決めました。彼は普通のハンバーガーを作る代わりに、逆さまのハンバーガーを考案しました。 逆さまのハンバーガーは、バンズの上に野菜、その上にチーズ、そして最後に肉が乗っている独特のスタイルです。 レストランが開店すると、注文が殺到しました。人々はこの新しいアイデアに興奮し、そのハンバーガーを試してみたいと考えました。最初は不安そうな顔をしながらも、ハンバーガ

          【もやっとする話】さかさま(ショートショート)

          【怖い話】アパート (ショートショート)

           ある女性が新しいアパートに引っ越したときのことです。最初の夜、壁の向こう側から、ガサガサと何かが擦れるような物音が聞こえたのです。 最初は気にせずに眠りにつきましたが、次の日の夜も同じような音が聞こえました。それは深夜になると活発になり、時には壁を叩くような音になり、足音のようなものさえ聞こえることもありました。 ――隣人が何かしているのかも―― 彼女は部屋の間取りをメモ帳に描くと、音の聞こえる場所に印をつけて、隣人に確認しましたが、そのような物音については心当たりが

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          【不思議な話】村の老婆 (ショートショート)

           ある日の夜、田舎の小さな村に住む老婆が、自宅の庭でひとり静かに夜を楽しんでいた。月明かりが明るく、風も穏やかで、彼女は満足げに夜の景色を眺めている。 すると、村の端に位置する古びた墓地から、怪しげな影が現れた。影は徐々に増えていき、墓地から出てきたのは、かつて亡くなった村の人々だった。 驚きと恐怖に震えながらも、老婆は身を隠し、その光景をひそかに見つめていた。亡くなったはずの人々が、笑顔で語らいながら村の中心へと行進しているように見える。 老婆は戸惑いながらも、その後

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