暮らしのなかの食卓が好き
気がつけば今年も残り数日。
3月に妊娠が発覚し、妊娠生活を経て10月下旬に出産して。お子を愛でお子に翻弄されていたら、あっという間に2023年が終わろうとしている。
最近は特に、なかなか自分自身のことを考える時間も体力もなく、ふとした時に「私はこれから何がしたいんだろう。自分のやりたいことはなんだろう」と漠然と不安になることもある。
具体は全く見えていないけれど、私が好きなのは食べることだなと感じていて。
2023年、思い出に残っているごはんを振り返りながら、私の好きな"食"について考えてみたいなと思う。
(2023年上半期の振り返りはこちら↓)
夫がつくってくれたフレンチトースト
妊娠中、切迫早産の診断で自宅安静を言い渡され、外出ができなくなった。それ以来、お家でも楽しめるようにと夫がフレンチトーストをたびたびつくってくれるように。
まずは食パン、その次はバケットで。プレーンはもちろん、ほうじ茶味や紅茶味。フライパンで焼いてみたり、オーブンを使ってみたりと、さまざま試行錯誤している夫はとても楽しそうで。
フレンチトーストをつくってくれた日は、ミルクティーなどを飲みながらふたりでゆっくり朝を過ごせるのがとても嬉しく、貴重な時間となっていた。
産後なかなか登場する機会のなかったフレンチトーストだけれど、産後1ヶ月経った頃、夫にリクエストをしてつくってもらったことがある。
それは、お子がなかなか眠りにつけず、やっと寝れたかなと思い私と夫も眠りにつけば、1時間も経たずにお子の泣き声で起こされて。ふたりで長い夜を乗り越えた朝のこと。
久しぶりに夫がつくってくれたフレンチトーストは、どんなお店で食べたものよりも美味しかった。
考えてみると、1日で一番好きなごはんは、朝食かもしれない。特に、休日のモーニング。もっと言えば、お米ではなくパン。
それは多分、普段の朝ごはんは白米だった子どもの頃、金曜日の夕方になると母と一緒にお気に入りのパン屋で好きなパンを選び、翌日の朝食に食べていた記憶があるから。
私にとって、休日の朝ごはんで食べるパンは、なんだか特別感があってわくわくするものとなっている。
農家さんのお野菜
何かを食べて「美味しい」と感じることはよくあるものの、感動を覚える美味しさに出会えることは、なかなかない。
ひとくち食べた途端、目を見開いて思わず「うまっ」と言ってしまうような。けれど、非日常なわけではなく、体全体に美味しさと幸せがじんわり広がるような。
今年そんな感動を味わったのは、知り合いの農家さんからいただいた野菜たちだった。
夫が6月ごろから八菜農園さんへ農作業のお手伝いに行くようになり、ある日持って帰ってきてくれた収穫したてのズッキーニ。
オリーブオイルで焼いてほんの少し塩を振っただけなのに、ズッキーニの甘みうまみが存分に感じられて本当に美味しく、美味しい野菜は野菜そのものの味が濃くて美味しくて、味付けなんていらないのだとびっくりした。
あと、これも夫がお手伝いに行ったご縁でいただいた、つながり自然農園さんのとうもろこし。
生で食べられるとのことで、茹でる前のとうもろこしを初めて食べたのだけど、その甘さは衝撃的だった。あれは、フルーツ。
もちろん茹でたものもとっても美味しくて、今まで私が食べていたとうもろこしはなんだったのだろう…と思ってしまったほど。来年の夏も絶対に注文しようと、今から楽しみにしている。
同じ野菜でも、知り合いのかたが作ったものをいただくのは、やっぱり違うなあと感じていて。つくってくれた人の顔を浮かべながら食べられるのも、その美味しさを直接伝えることができるのも、幸せで健全だなと思う。
Maru Cafeさんのみらいのボーロ
今年の3月、お世話になっているMaru Cafeさんにお声がけいただき、麦踏みを体験してきた。
麦を踏んだあと、あったかいお茶とともに振る舞ってくれたのが、「みらいのボーロ」。
玄米粉やきな粉をベースとしたクッキーなのだけど、材料の87%がMaru Cafeさんから半径6km圏内でとれたものなんだとか。
素朴な素材の甘さがじんわりと美味しくて、その時に食べて以来大好きなお菓子となっている。
このボーロ、通常販売はしていないのだけれど、出産直前、陣痛を乗り越えるお守りにしたいと、Maru Cafeさんのご厚意でつくってもらって、陣痛バックに忍ばせていた。
結局、陣痛中はとてもじゃないけど何かを食べる余裕はなく、ボーロはバックに入れたままだったのだが、出産を終えて「ちょっとお腹がすいてきたな…」と思ったときに、真っ先に食べたいと浮かんだのが、ボーロだった。
陣痛と出産で20時間近く何も食べていなかったところに、ボーロの美味しさが優しく広がっていく。
Maru Cafeさんが袋にメッセージを書いてくれていたことも相まって、なんだかじーんとしたことを今でも覚えている。出産後、他にも市販のお菓子をいくつか食べたけれど、ダントツでボーロが美味しかったな…。
少し話は逸れてしまうが、私がお世話になった産院は「入院中のごはんが美味しい」で有名な病院で。実際、和食はもちろんハンバーガーやパスタまで登場し、想像以上のラインナップとクオリティに「病院でこんなごはんが食べられるなんて…!」とるんるんしていた。
ただ、数日経つうちに「夫と一緒にごはんを食べたい…」と感じるように。美味しいごはんも、一人きりの病室で食べるのは寂しくて味気ない。退院後、数日ぶりに自宅で夫と食べた夕飯は、やっぱり美味しくて幸せだった。
つい先日、夫とお子の3人でMaru Cafeさんへ遊びに行き、ランチをご馳走になった。
パンにチーズ、ベーコン、キャベツやじゃがいも…。決して味つけは濃くないのに、しっかりと素材の味が感じられて、じんわりとした優しい美味しさに心もほこほこしてくる。
シンプルに調理された食材すべて、おふたりとゆかりがある生産者さんのものを使用しているようだった。
私たち家族と店主夫妻のおふたりとで、丸い座卓を囲んで。ひと口ひと口味わいながら、お話しをして。ゆっくりと食事を楽しんでいるうちに、「ごはんってこういうものだよなあ。こういうごはんを増やしていきたいなあ」と感じていた。それとともに、最近の自分のごはんを振り返りなんだか悲しくなった。
出産以来、夫が出勤していてお子と二人きりの昼は、お子を片手で抱っこしながらレトルトカレーをどうにかレンチンし、お子が起きる前に食べねばとやや急ぎ気味にかきこむ。
夫がいる日も、睡眠不足のなか料理に時間をかける気力と体力がふたりともなかなかなく、結局レトルトや冷凍食品に頼ってしまう。なんとか野菜はとらねば…とは思うものの、包丁を使うのが面倒くさくて、この頃はカットされた冷凍野菜にお世話になってばかりだ。
そんな食事では、お腹は満たされてもやっぱり心満たされないよなあと、Maru Cafeさんのごはんを食べて改めて痛感した。
佐久に引っ越して、1年と少し。パン屋・ケーキ屋・カフェ…たくさんのお気に入りのお店ができた。
でも、一年を振り返ってみて、思い出に残っていて語りたいと浮かんだのは、何気ない日の食卓の記憶ばかり。つくってくれた人の顔が浮かんで、素材そのままの美味しさをじんわり感じられるもの。
そんな、暮らしのなかにある特別なごはんが、私は好きなのだと思う。日常を過ごす小さな源になれるような。
結局、このnoteを書き上げてみても、自分のやりたいことはまだまだ分からないまま。
だけど、まずは自分の食卓から、料理をする時間・誰かと食事をともにする時間を、もっと大切にしていきたい。それがきっと、私の心地よい暮らしにつながり、何かしらの活動へとにじんでいくのだと思う。
来年も、美味しいごはんをたくさん味わえますように。
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