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孤高のトシちゃん

旧ジャニーズ事務所をめぐっては、すっきりしないまま、時間経過とともに、何となくどこかに行き着くのかなぁと、ぼんやり考えている。

新名称がいよいよ発表になって話題の残留組は、批判されながらも、常に世間の注目を浴びる。なんだかんだメディアに出続けていられれば、案外、安泰なのかもしれない。まだ手腕は不透明だが、新たな社長も加わった。旧ジャニーズ事務所が築いてきた莫大な資産の行き場や、権利関係が定かでない中、今は距離を置いているように見える企業でも、バックアップするところがでてくるだろう。所属しているタレントの父親が、かつてメディアを監督する立場に君臨、今も関連媒体にいる。メディア側の忖度は、完全消滅しそうもない。今までほどの権勢は振るえないし、縮小は免れないだろうが、エージェント契約を済ませた大所帯は存続できるし、完璧に干されることもないだろう。

「新しい地図」やTOBEを含む退所組は、それぞれ、個人活動を活発に続けている。2019年に、公正取引委員会によって、ジャニーズ事務所を処分した経緯もあり、完全に表舞台から消されたことはない。飯島氏や滝沢氏を支援する企業、マッチの場合はモータースポーツ界のような、それぞれ強いバックを支えに、先端的なメディア戦略ができているようだ。今後はむしろデメリットとなる「旧ジャニーズ」を背負わずに活動を続けられ、引き続いているファンを減らすことなく存続できるのだろう。(ここまでは、あくまでも勝手な私見です。もちろん、誰もが、それぞれ自身の魅力あってこそだと思っています。)

30年も前に退所したトシちゃんだけは、本当にひとりで、何の後ろ盾もなかったようである。あまりにも無防備だった。熱烈ファンだけが頼りだったけれど、バッシングされた時、現在のSNSのように、ファンが直接、意見を出せる場所すらなかった。パフォーマンス自体は、当時だって、意欲的な素晴らしいものだったのに(YouTubeで、最近になって確認)、メディアの圧力・忖度に押しつぶされ、容易にTVなどの媒体から干されてしまった。旧ジャニーズ事務所のトップオブトップだったのに、ネットの無い時代において、事務所の経歴から跡形もなく消されていた。大衆は、メディアの注目が無くなると、あっという間に離れてしまうものである。

ファンだった私でさえ、ほぼ25年間は、「田原俊彦」という存在自体を忘れてしまった。どこかで目にすることもなかった。約10年ほど前、地元ホールのイベント案内で、偶然にトシちゃんの名前を見た時には、完全に過去の人扱いをしていた。これも、メディアに登場していなかったせいだ。まだコンサートはやっているんだなぁと、何だか悲しい気持ちになったことを、正直に告白する。(その時に検索していたら、もっと早くファン復活していたのに。生のライブを観てさえいたら、絶対に感動していただろう。今は、残念な気持ちでいっぱいである。)

スターだった人でも、長くTVに出ていないと、驚くほど劣化してしまう場合がある。やはり、表に出ている緊張感が、スターに磨きをかけるのだろう。つまり、スターが輝き続けられるかどうかは、本来、個人の力だけでは無理で、メディアの注目を浴びて表に出続ける必要がある。甘言のみならず苦言や暴言をも受け、何か問題を起こしても尚、出続けられさえすれば、時間が経つといつの間にか、何とかなっているのが、日本社会の常だ。

トシちゃんの場合、完全抹殺からの復活。こんなスターが、かつていただろうか。私がトシちゃんをTVで偶然見た時、ファン復活した理由は、25年振りぐらいで観たトシちゃんが、過去の人ではなかったからである。表に出ていなかったのに、劣化どころか、大幅に進化していた。表の光を浴び続けていないのに、内なる光は増していた。存在自体が、輝くように明るかった。これが、トシちゃんのトシちゃんたる所以。誰もが真似できることではない。

たまに舞台裏を撮ると映り込む雨宮さんは、退所後の1998年に出会ったマネージャーだと、過去の新聞記事(朝日新聞2013年6~7月「逆風満帆」)で知った。上手くいっていない時期でも全く気にせず、落ち込む姿を見せず、「いつかひっくり返してやる」という精神で活動を続けるトシちゃんを見て、「この人は、強い人だ」と語っていた。そして、ずっとついてきてくれている。トシちゃんだからこその牽引力だ。

やっと再びメディアに登場し始めた時期にあたる2014年の雑誌記事(『GOLD』世界文化社・12月号)の小見出しを引用させていただく。「頑固で一途で、不器用な誇り高き反骨の人生」「僕に限らず、人生は山あり谷ありだけど、大切なのは静の時期に、自分をどう保っていくか」「次の風が吹くまで待って、風が吹いた時には闘う自信は大いにある」「居心地のいい場所に安住するのではなく、常に何かを求めて闘い続けるのが、僕本来の姿勢である」これらの言葉に、トシちゃんの秘訣があるように思う。このような精神の持続が、伝説となり得るスターの資質なのだろう。

最近は、私が再び応援し始めた2019年より、さらに若返っている。これはやはり、メディアに出る機会が、格段に増えたからではないだろうか。光を浴びていなくとも、爪を研いでいたトシちゃんが、光を浴びて、さらに輝きを増す。還暦を過ぎても歌って踊れる凄さを取り上げられる機会が増え、注目されればされるほど、内側からますます輝いてくることを、如実に感じている。

ただ、いまだに地上波TV音楽番組への復活は、かなっていない。マネージャーが売り込んだり、大物スポンサーがつくような営業活動をしたり、あらゆる業界人に媚び売ったり、冠婚葬祭を利用したり……本人が不器用なのはいいとして、弱小事務所スタッフは、もっと裏の営業努力(?!)ができないのかと、ヤキモキしたこともあった。だが、トシちゃん自身は純粋に、芸の力のみで這い上がり、歌と踊りの実力のみでヒットを生み、堂々と地上波音楽番組への復活を果たしたいのかもしれない。来年の45周年記念シングルは、松井五郎さんに作詞、都志見隆さんに作曲を依頼したと、既にライブで明かしていた。これまでの地道な努力と、パフォーマンスの実力がついに実り、大ヒット作になるのではないかと、期待が高まる。(2023年12月17日追記……年末27日の日本テレビ『発表!今年イチバン聴いた歌~年間ミュージックアワード』で、34年ぶり生歌唱することになった!今年のうちに、ファミリーの悲願がかなうことに。「まだ歌ってたの?」とヤフコメに書いた輩の鼻を明かすチャンス!来年度のライブに、新たな復活ファンが押し寄せてくることになるだろう!!)

今の時代、下手な戦略や裏工作は、即座にバレてしまう。口コミは、SNSを通して広まるし、個人映像の拡散祭りも可能。大々的な営業活動はなくても、ファンの熱い応援を受ける地道な能力者こそ、何かの拍子に衆目を集める可能性がある。いよいよもって、トシちゃんの3度目の全盛期(1度目:デビューから数年。2度目:びんびん時代)が来るのかもしれない。

ジャニーズ事務所出身者であっても、トシちゃんほど、表裏の両極端を体験したタレントはいない。特別なスターである。完全抹殺されても這い上がれると、誰が思っただろう。その証拠に、トシちゃんが退所した1994年以降、SMAP解散の2016年頃まで、大物は誰も退所していない。ある意味、トシちゃんが「退所者の人柱」になってしまっていた。退所しても何とかなる目処がたつ、今の退所者とは、訳が違う。

デビュー当初から今に至るまで、トシちゃんの基本姿勢は、ずっと変わっていない。特異なスターである。周りの状況が変化しても、自分のスタンスは一切変えることなく継続してきた上での復活。「ハッとして!Good」や「NINJIN娘」を歌っていた当時、これほど頑固で一途な人だと、誰が気づけただろう。トシちゃん伝説は、実は、1980年のデビュー時から始まっていたのだ。

WOWOWオンデマンドで、今年度のライブ映像を繰り返し観て改めて感じるのは、トシちゃん独特のスター像。誰もが認めるイケメンの20代後半には控えめだったひょうきんさが前面に出て、カッコいいだけでなく、可愛くて面白いイケオジになったものだ。この不思議なキャラに、ますます魅了される。また、ライブ当日には見えなかった表情が素晴らしい。本人自身が、いかにライブを愛しているか、その表情が物語る。孤高の精神を守り抜いてきた絶対的な自信が、内側にみなぎっているから、こんなにも堂々としたスター感が出るのだと感じた。

「無力は力。君は弱いときこそ強い。」キリスト教の神父の言葉。いつも孤立を標榜しているトシちゃんは、格段に強い。その生き方を含めて私は憧れるし、心から応援したいと思う。孤高のトシちゃんは、誰よりもスポットライトが似合う。今までもこれからも、孤高のスター人生に乾杯!

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