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恋愛生存率

「始まりは終わりの始まり。出会いは常に別れを内在し、恋愛はパーティーのようにいつか終わる。だから恋する者たちは好きなものを持ち寄ってテーブルを挟み、お喋りをし、その切なさを楽しむしかないのだ。」

2021年に公開された「花束みたいな恋をした」はカップルで見に行くと別れると言うジンクスを生み出すほど社会現象になった。

私がその映画で心に残ったセリフは、冒頭に書いたものと、「女の子に花の名前を教わると男の子はその花を見る度に一生その子のことを思い出しちゃうんだって」この2つだ。

花の名前を男の子に教えるという行為を、私は呪いに近いものだと感じた。花の名前を教わっただけでその花を見る度に思い出してしまう。そんな辛いことは無いだろう。花には多かれ少なかれ香りがあるだろう。特定の香りが、ある一定の事象や記憶と結びつく現象を「プルースト効果」と呼ぶ。だからこそ、異性に花の名前を教えることや、意中の相手に花を贈ることは、私の中では呪いだと感じてしまうのだ。

いつか私も呪いたい相手が出来たらあまり有名では無い綺麗な花を相手に贈ろうと思う。綺麗で香りが華やかで相手の脳裏に色濃く刻まれるようなそんな花を。そして相手が尋ねても尋ねなくても、一方的に花の名前を告げるのだ。そして密かにその人を呪うのだ。相手の視覚と嗅覚を駆使して。ありったけの気持ちを込めて呪ってやろうと思う。

香りは記憶を思い出す上で重要なものだと私は常に思っている。プールの匂いで学校の授業を思い出し、エタノールの香りで実習先の病院での記憶が蘇る。私の好きな人はよく好んでミンティアを食べている。私の好きな人の香りはミンティアの歯磨き粉のような爽やかな香りなのだ。ミンティアは正直そんなに好きでは無いけれど、思い出を鮮明に思い出したい時に食べると何故だか思い出せてしまうのだ。彼と会う時はいつも香水を変えて行く。その度に「この前と違う香りだね」と気がつく彼もなかなかに犬のような嗅覚だなぁと思いつつ内心気がついてくれることが嬉しいのだ。でも、いつか有名ではないが心惹かれるような香りに出会ったらそれを自分の香りにしたいと思う。流行り物の香りではなく、街中ですれ違ったら必ず気がついて貰えるようなそんな私だけの香りを探している。

そんなこともあって、最近の休みは香水屋さんを巡っては何十本もの香水を嗅ぎ比べては、人と被らない唯一無二な香りを探し回っている。

有名ブランドのありふれた万人ウケの香りももちろん好きだ。それでも、私は私だけの香りをまといたい。そしていつの日か私に関わった全ての人にこの香りで私を思い出して欲しいのだ。

私を思い出させる香水は一体どんな香りになるのだろうか。街中で別の人が私と同じ香水を付けていた時、その香りを嗅いだ誰かは私のことを思い出してくれるでしょうか?


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