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ルビコニアンマーブル:アーマードコアⅥに対する背中合わせな気持ち


 いい記事を読んだ。


 おれ自身逆噴射構文は好きなのでこの記事も好きだ。しかし、前提や文脈を知らないまま鵜呑みにすると危ない記事でもある。


 昨今、アーマードコアⅥの評価を巡って喧々諤々の論争が繰り広げられることがある。賛否さまざまな意見が存在し、それに対しておれは両者の言い分どちらもわかるし、「それは言い過ぎではないか」と思うこともある。

 おれのアーマードコアⅥに対する評価は、マーブル模様なのだ。良し悪しが混ざっている。今日はそんなおれの気持ちを交えながら、思っていることを書くつもりだ。


ことの流れ

 まずそもそも、アーマードコアⅥについてああでもないこうでもないとなりだしたのはSteamレビューでスタッガーや部分的なソウルライク要素への反感が取り沙汰されるようになったからではないか、とおれは認識している。(本当は違うかもしれない。あくまでおれの認識だ)


 それへのカウンターとして、本作を強く擁護する流れが生まれたように思う。

 そのなかでNeverAwakeMan氏によって投じられたのがこの記事と言えるだろう。つまり、殴られたことに対する殴り返しという立ち位置で書かれていると考えて良い。

 しかし、ここで注意しなければならないのは逆噴射構文というショーとしてこの記事が書かれていることだ。プロレスでいうマイクパフォーマンスであり、たとえば猪木の放った「俺の首を掻っ切ってみろ!!」と同じ意味合いとして素晴らしいのであって、本気ですべてを鵜呑みにしてはいけない。マジの命の取り合いをするために殺し合いを吹っ掛けているのではなく、NeverAwakeMan氏はあくまでショーマンとして、言葉のプロレスラーとして素晴らしい記事を書いている


逆噴射構文について知っておこう


 さて、NeverAwakeMan氏が用いた特徴的な文体は、単刀直入にいうとこの方のオリジナルではない。


 「おれ・おまえ・MEXICO」……これらのエキセントリックな文体は、そもそも逆噴射聡一郎というウェブライターの手になるものだ。読むものの魂に火をつけ、それでいてわざと誤字をまじえたり変換ミスを入れたりとうっかり屋な一面がユーモラスさを醸し出す文体である。それがソンケイを集め、逆噴射構文としてパターン化し、たくさんの人が模倣するにいたった
 かくいうおれもゲームレビューにおいてこの逆噴射構文を使うことがあるし、たとえば野菜をいっぱい食べるためにキムチ鍋を作れというネタで逆噴射構文を使う人もいる。さまざまだが、あくまでこれらはリスペクトだ。「逆噴射聡一郎というおもしろい物書きの人の文体が大ヒットし、いろんなひとがそれをリスペクトして真似している」…ネットのいたるところでこの文体を見るカラクリの正体は、こういうことなのだ。

 それにしても、NeverAwakeMan氏の逆噴射エミュレーティングは素晴らしい。SOICHIRO御本人と区別がつかない人が出てくるのも無理はないだろう。
 ご友人…これほどまでに優雅な筆の舞いを見せてくださるなんて、素敵だ…!


逆噴射構文を読んだときはマジにしすぎてはいけない

 この逆噴射構文というのは、あくまで本人の熱意やバイブスを効果的に伝えるためのライブ感が重視されており、誇張表現や大げさな物言いが含まれている。つまり、不正確な表現も多分にあるのであんまり鵜呑みにするとよくない
 実際、オリジナルの逆噴射聡一郎先生がスマブラにKAZUYAが出てきたときの記事に関しては実は結構古い知識と勢いをもとにしてちょっと不正確なことを言っていたのが指摘されている

 「ショーとして素晴らしい」とおれが表現したのは、こういった事情である。あくまで本気で演じているショーであって、熱意に嘘偽りはないが、勢いを優先して誇張することはあるので話半分で楽しむのがよいのだ。


かの記事にちょっとだけ補足しておきたいこと

 そういうわけで、NeverAwakeMan氏の記事にもそういった部分はある。

まず、これまでのARMORED COREの必勝パターンは「引き撃ち」だった。敵の攻撃を見てから避けられる程度の距離を保ちつつミサイルとマシンガンを垂れ流していれば、ほとんど負けなかったのだ。これは確実だが、まったく単調で退屈な勝ち方だった。

 ここは、ちょっと盛っている。
 アーマードコアにおいて引き撃ちが鉄板の戦法なのは合っている。しかしこれはあくまで相手がACであるアリーナだったり、中型くらいの敵に対して有効なのであって、すべての場合でただ引き撃ちをしていればよいというわけではない

 たとえばネクサスを始めとする諸作では熱量まわりの設定がものすごいことになっているので、一気に近づいて火炎放射器を浴びせたりナパームをぶち当てるほうがいい場面もかなりある。
 4系ではプライマリアーマーという敵の攻撃を減衰させるバリアが登場。このプライマリアーマーをひっぺがすと有効打が狙えるので、近づいてマシンガンやショットガンを撃ち込むという選択肢があった。特にfAでは肩スラッグという凶悪な近距離射撃武器があったため、「オーバードブーストでバリバリに突っ込んで肩スラを撃ち込む」という戦術が対戦にてしばしば見られた(ちなみにミッション攻略で使っても強い)。また、「引き撃ち」という戦法自体もアームズフォートという特殊な巨大兵器には通用しないことがあり、特にそのひとつカブラカンはスカート状の装甲を爆風で浮かせて装甲内に潜り込むという超インファイトが有効であった。
 また、その後のアーマードコアV、VDにおいては属性跳弾が登場。何も考えずに遠くからパラパラ撃っているだけだとキンキン弾かれてダメージが通らない。パルスマシンガン(通称パルマシ)が猛威を振るったり相手の上を取って積極的に攻撃する鳥葬パイルブーチャオーバードウェポンで起死回生の一発攻撃をぶっ放すなどあえて突っ込んでいく接近戦の選択肢も凄まじいほど存在した

 と……このように、シリーズを飛び飛びで履修したおれでもこれくらい多彩なシチュエーションが出てくる。
 とはいえ、おれは重箱の隅をつつきたいのではない。逆噴射構文による勢い重視のパフォーマンスとしては好きだし面白いと思っているのだが、まかりまちがって読んでいる人がこれを鵜呑みにして「過去のアーマードコアは引き撃ちだけやっていれば勝てる単調なゲームだ」と考えたりするのは危ないぜ…!と申し添えたい。過去作にもいろんなシチュエーションがあり、さまざまなアセンブルで挑む戦略性はちゃんとあった。
 そういった思い出を大切にしている人に対して、AC6から入った人がプレイしないでそこだけかじって過去作経験者にどうせ引き撃ちで片付くんだろとか言ったら大変なことになるので、あくまでスタッガーシステムを立てるためのマイクパフォーマンスとして引き撃ちの話を誇張しているんだろうなということをわかってほしい。

 逆噴射構文はわざと特定の対象を敵視し煽ることで面白さを演出するので(例:◯◯しているやつはうらなりの腰抜け)、記事中ではAC6に反発して馴染めない旧作ファンがヒール(悪役)に据えられている。
 「ああ、そういうプロレスをやっているんだな」ということを頭の片隅に置いていただけると話が早いかもしれない。最初から逆噴射構文というおおげさなプロレスだとわかっているから過去作に思い入れのあるおれも怒っていないし、笑って楽しんでいるというわけである。


ACⅥに対するおれ個人の感想としては

 で、結局おれはどういう視点でACⅥを見ているかというのも書いておく。

 まず、公平を期すためにおれはチャプターⅣが終わったあたりまでの意見として書いていることを明記しておく(本当は全部クリアしてから書きたいところよね)。

 記事冒頭でも書いた通り、おれはACⅥに対していいところも悪いところもあると思っている。

 まず、残念ながらちょっと気になるところから挙げるとするとバルテウスが厳しい。
 チャプターⅠの総まとめの大ボスとはいえ、パーツプールが少なく取れる選択肢が限られるため、これを序盤からぶつけるのはちょっと……。もちろん張り付いてパルスブレードを振るなどの解法はあるがそこまでの習熟がやや厳しいか。もちろん極端に難易度を下げろというわけではなく、パルスアーマーをほんのちょこっとだけ薄くしてもらえるといいかな……。
 また、これはさすがに伏せるがチャプターⅣのボスもあの展開はキツい。あの展開になるまえはブレードも避け方に気づくと面白いし、むしろまあまあ良いボスだと思うが……。あれをやられるのは苦しいだけでちと冗長かな…。全部倒す必要はないものの、骸骨車輪が妙に硬いしすぐACSゲージが減少するのもあまり快くはない。

 マイナスではないものの惜しいところとしては、道中装備とボス装備が明確に異なるために何処かで装備替えをさせてくれるとロアフレンドリーかな~~……!と思ったり。
 道中は弾数が多い武器でザコ掃除をしなくてはいけないが、どう考えてもボスでは一気に火力に集中した装備に変えなくてはならない。それをわざと一回やられてなぜかゲームオーバー画面の虚空から重ショやレーザーランスから取り出すのはちと戸惑う。シェルパによる補給がボス戦前にちょうどあるので、「装備を見直しておけ」なんて感じで換装できるとスマートかも……。

 しかし、全体的にはおおむね良いゲームだと思っている。これは揺るぎない。
 キャラクターのセリフはシリーズいちといっても良いほど潤沢で、それでいながら「語りすぎない」良さがある。沈黙や言葉の"間"で人物の心情を考えさせる台詞回しは、彼らが発する言葉を重く価値のあるものにする。秀逸なライティングと言わざるを得ない。
 序盤のパーツプールこそ苦言を呈したが、チャプターⅠを越えてから選択肢がワッと増えて進むほどにどんどん試行錯誤できるのはとてもおもしろい。重ショやワーム砲がすさまじく強いのは確かだが、それでもガトリングの圧倒的な削り性能や当てやすいブレードの追尾やパイルの火力、安全にミサイルで攻めたりここぞのグレネードでのスタッガー狙いなどある程度どう武装を選ぶかの遊びがあるのは助かる。
 ストーリーの演出も気に入っている。チャプターⅣのあとにあんなことが起き…そしてあいつの真意が……ちょっと変わったあのステージを挟み、そして実はあれがこう……ガショーンと……!いやはや、これはアツいストーリー。アーマードコアならではの人間関係のドライさやダークさはしっかりとありつつも、そこからさらに一歩踏み込んで花開いたアツさがある。

 おれがACⅥに対して抱えている感情は、なんというか白の中にツゥーッと黒の細い線が混じっている、そんな感じのマーブル模様だと思う。
 どっちつかずと言われればそれまでなのだが、馴染めないと思った歴代ファンの気持ちもわかるし、今作から入って素晴らしいゲームだと思っている新規ファンの気持ちもまたわかる


なんかお互いにいい距離感でいたいね

 というわけで、おれとしては過剰に罵り合ったり無理な擁護をしたり貶めたり、今作をヨイショするために過去作を悪く言ったり、逆に今作にいいところなんかひとつもない!と強弁したりしあっているのは………とても悲しいことだと思う。
 DD論にもなりかねないのはわかっているのだが、おれはどっちもわかるしどっちも言いすぎだな……と思ってしまう…。

 お互いの考え方がわかんないのは、もうしょうがない。過去作経験者と新規さんのあいだには十年の隔たりもある。おれたち歴代ファンが過去作と比較することを快く思わない人もいるだろうし、逆に「ソウルボーンエルデンリングのフロム」「死にゲーのフロム」という近年のイメージしか持たずに語るご新規さんと古株が相容れないこともある。
 あるさ。しょうがない。おれたちの間には無数の断絶がある。そういうこともある。全部はわかりあえない。今作と水が合わずに脱落する人もいる。今作が完全無欠の神ゲーだと信じてやまない人もいる。


いろんな人がいるものですね

エア


 おれはそれにどうしたらベストの答えが出るか、残念だがわからない。だけど、喧嘩しても最後には笑いあえる良い距離感でいたいね、という玉虫色の態度でいようと思う………。


 いじょうです。


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