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景気の基調判断どうなるか?5月10日発表の景気動向指数に注目集まる―日本の主要経済指標予測(2023年4月2日)―

(はじめに)景気の足元の動きを読むときの「闇夜の提灯」

景気の動きを少しでも先読みしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。景気の判断は、経済統計で確認しますが、発表日前に関連データなどから、公表日前に、こうなりそうだという雰囲気をつかむこともできます。ただし、目隠しをした状態で象を触って、その全体像を言い当てることが難しいように、完璧に予測することは難しいものです。しかし、金融マーケットではそうした指標予測さえも材料としてし、相場に織り込んで動きます。発表される経済指標がどうなりそうか、その雰囲気を知っておくことは、景気の足元の動きを読むときの「闇夜の提灯」になるでしょう。そうした理由でこれから、いくつかの日本の主要経済指標の予測を行っていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

2月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は増加に転じるか(4月7日発表)

2月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は+1.3%程度と1月の▲0.3%の減少から4カ月ぶりの増加に転じると予測します。昨年2月にまん延防止等重点措置が出ていた反動増が今年の2月では出てきます。
家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標としている「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」である点に注意が必要です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月の+5.1%から2月は+3.9%へと、政府の電気代・ガス代の負担軽減策の影響で鈍化しました。デフレーターは、2月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に対しては増加要因になります。
2月の消費関連統計をみると、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の2月の前年同月比は▲2.0%と1月の同+1.3%の増加から減少に転じています。一方、インバウンドの影響の加わっている2月の全国百貨店売上高・前年同月比の単純平均は+20.4%で1月の+15.1%から、5.3ポイント増加率が高まっています。また、新車新規登録届出台数(乗用車)の2月前月比は+0.2%の増加です。景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI(原数値)は、1月47.2、2月51.2と推移しています。
こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

実質消費支出・前年同月比は4カ月ぶり増加か

2月の景気動向指数・速報値、一致CI は前月差上昇。基調判断は「足踏み」継続(4月7日発表)

景気動向指数とは、内閣府によると「生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、 景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された指標」です。景気動向指数には、先行指数、一致指数、遅行指数があり、それぞれコンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)があります。 CIは構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは構成する指標のうち、改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定することを主な目的とするものです。
その中の一致CIを使っての基調判断が機械的に行われています。当月のCI一致指数の前月差が一時的な要因に左右され安定しないため、3カ月後方移動 平均と7カ動平均の前月差を中心に用い、当月の変化方向(前月差の符号)も踏まえ、行われます。基調判断は「改善」「足踏み」「局面変化(上方へのor下方への)」「悪化」「下げ止まり」の5つがあります。
2月の景気・基調判断は、3カ月連続で、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」になると予測されます。2月の一致CIは前月差上昇と予測しています。7カ月後方移動平均・前月差は2カ月連続マイナスですが、その2カ月累積が1標準偏差の▲0.77以上のマイナス幅に届かないとみられます。そのため、事後的に判断される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正されるための「7カ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たさないと思われます。
2月の一致CIは前月差+2.8程度の上昇になると予測します。一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・2月速報値・前月比は+4.5%と、春節の影響の反動や、部材供給不足の影響が緩和されたことなどを受けて自動車工業などを中心に15業種中、9業種が2カ月ぶりに上昇したことなどが主因です。速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の7系列が前月差寄与度プラスに、有効求人倍率1系列が前月差寄与度マイナスになるとみました。
2月の先行CIは前月差+1.2程度の上昇になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積、マネーストックの4系列が前月与度マイナスになると予測します。

2月の景気動向指数・CIは先行、一致とも前月差上昇か

2月の先行DIは景気分岐点50超、一方、一致DIは50未満

2月の一致DIは25.0%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測します。速報値からデータが利用可能な8系列中、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業の2系列がプラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数、有効求人倍率の6系列がマイナス符号になると予測します。
2月の先行DIは66.7%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、マネーストックの3系列がマイナス符号になるとみました。
5月10日発表の3月で「下方への局面変化」に下方修正される可能性もありますが、一致CIが仮に前月差下降になったとしても僅かな下落幅なら、7カ月後方移動平均の下落幅の3カ月累計が1標準偏差に届かずに「足踏み」継続になります。
一方、「改善」に戻るとしてもそれが発表される時期は23年後半になります。2月もマイナスが予測される「3カ月後方移動平均の前月差」が、反転し3カ月連続でプラスになることが必要なためです。

通常4月中旬に公表されてきた鉱工業指数の年間補正が今年は実施されず、20年基準への変更時に

なお、今年は一致系列に多く採用されている鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の、15年基準から20年基準への変更が23年中に行われるため、通常4月中旬の2月確報値発表時に公表されてきた年間補正が実施されず、20年基準の公表時と合わせて公表されるということです。年末近くになって、新型コロナウイルスの影響に関する季節調整処理などで、20年基準の鉱工業(生産・出荷)指数の動きが過去に遡って大きく変わる可能性があり、景気局面の判断は難しい状況が当面続きそうです。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。