見出し画像

ランガスタラム見てきました(ネタバレ有り)


はじめに

RRRの人気を受けて、チャランさんの過去作が日本語字幕で初公開に至ったのは、本当に有難いこと。
気になっていたジャガパティさんを、映画館のスクリーンで見られる!ということ楽しみにしてました。
ちなみに前宣伝の公式か動画で、主人公の兄クマールがずっと気になっていて、多分これは見終わった後、好きになるんじゃないかなと思ってました。因みにその予想は当たってました。
見る前はジャガパティさん、プラカーシュさん、楽しみ😊だったのが、終わった後は、クマールお兄ちゃんクマールお兄ちゃんになったので。

因みに見終わった直後の初見ツイートこちらです。



ちなみに2回見ておいて、まだ感想まとまりません。
なんというか、色んな思いがないまぜになって、言葉にするのが難しいです。
公式サイトはこちら▼



ネタバレ有り感想ここから。

鑑賞前のネタバレは見ないようにずっと気を付けていたので、初見は進むにつれ、鳥肌立っていたんですが、あまりのことに記憶が飛んだので、初回感想ではなく、今回は2回目感想です。でも初回の感覚思い出して書きます。


1980年代半ばのアーンドラ・プラデーシュ州中部、ゴーダーヴァリ川沿岸の⽥園地帯、ランガスタラム村。チッティ・バーブ(ラーム・チャラン)は、モーターを使って⽥畑に⽔を送り込むことを⽣業にする労働者。難聴で、他⼈の声がよく聞き取れない障碍を持っているが、さほど気にせずに毎⽇を楽しく暮らしている。彼は近所に住むラーマラクシュミ(サマンタ)に惚れて、調⼦はずれな求愛をする。⼀⽅、村は「プレジデント」を⾃称する⾦貸し兼地主のブーパティ(ジャガパティ・バーブ)によって⽜⽿られている。チッティ・バーブの兄で中東ドバイで働いているクマール・バーブ(アーディ・ピニシェッティ)は、プレジデントが好き放題にする故郷の村の有様を帰省した際に⾒て⼼を痛め、州会議員ダクシナ・ムールティ(プラカーシュ・ラージ)の⼒添えで、村⻑選挙に⽴候補して政治家として村の⽣活を改善していこうと思い⽴つ。

ランガスタラム日本公式ページより
https://spaceboxjapan.jp/rangasthalam/

あらすじというか流れ。

冒頭いきなり自転車🚲漕ぎまくるチッティ(ラーム・チャラン氏)。めちゃくちゃ急いでいる。どうした?
やがて田舎の長い一本道に停めてある車に、いままさに乗り込もうとしている男性一人(プラカーシュ・ラージ氏)。
「先生!」
必死にチッティが叫んで彼を呼び止めるが、向こうは気付かず、車に乗るが、後ろから来たトラックに車ごと追突され、男性の身体は宙を舞う。

えええええ?!
いきなりプラカーシュおじさん、はねられたんだけど!
待って待って。
動揺しすぎて🫨初見は全身金縛り状態になちゃった。

自転車でかけつけ、血だらけの男性に必死に声をかけるチッティ。そして医者の元へ。
手を尽くすが、意識が戻らない。
この男性は誰なのか……、チッティとどういう関係なのか、ということで話が過去に遡る……という導入部。

いきなり衝撃的な車事故のシーンだったけれど、この時点で自分はこのプラカーシュさん演じる男性は命狙われてはねられたと思っていた。

田舎の農村ランガスタラム村。難聴のチッティ・バーブは、畑に(エンジンで)水を汲み入れる仕事を請け負って生計をたてている。
殆どの村民は彼の難聴を知っているので大声で声をかけるが、彼は極力難聴であることは否定したい様子。
そして彼の耳がわりに村の出来事を聞き取っている役割の舎弟がいて、チッティの面倒臭い性格もよく理解しているマヘーシュくん。
そして村の外れに住んでいるのか?なぜかチッティの難聴を知らないヒロイン。
その村は村長つまりプレジデント(ジャガパティ・バーブ氏)の完全独裁で、30年村長は実験を握っている。
ソサイエティ(協同組合)に村民は金を借り受けているが、不当な取り立てで苦しみ、しかし誰も彼に対抗できずに泣き寝入りしている。
外部の役人ですら頭が上がらないプレジデント。

そこへ出稼ぎから一年ぶりに、チッティの兄クマール・バーブが帰ってくる。
きたー、クマールお兄ちゃん。
短気で喧嘩っ早いチッティに対し穏やかな笑顔の長身眼鏡キャラ。
いやもうこれ、尊い。お兄ちゃんの眼鏡、槇村秀幸と同じ形なのよね。
ちょっと事前情報だけで、もしかして彼も槇村みたいに……なんてちらと思っていたが、言霊が怖くて言えない。

クマールお兄ちゃん、チッティのために補聴器を取り寄せてあげるんだけど、難聴であることがバレるからと弟には拒まれてしまう。
さてそのクマールお兄ちゃんがとあるきっかけで村人たちの借金について、疑問をもちはじめ、不正な取り立てに物申す……際に、取り立ての役人に怪我を負わせてしまい(殴ったわけでもなく、ちょっと手に切り傷作った程度だろうに)、最終的に彼の家に罰金を課せられ、土地の権利書を渡すような事態に。
おまけにチッティたちのおばあちゃん(多分ご存命でない、出てこないから)に対しての暴言で、チッティは大激怒。
プレジデントの手下(もうほぼギャング)に暴行をして、警察に捕まる。
クマールお兄ちゃんはプレジデントに対し、保釈への口添えを頼みにいくが、もちろんプレジデントが力を貸すはずもなく……。

なるほどここでチッティの保釈に力を貸して、さらにクマールお兄ちゃん立候補の後押しをしたのが、冒頭で車事故にあった州議会の議員のダクシナさんね。
今までプレジデントの独裁で、この村には州議会の手が及ばなくて、票も得られなかったってダクシナさん(※以下「先生」としておく)言っているから、村の存在は外でも有名だったって判るし、君が立候補するなら後押しは惜しまない、命をささげるまで言ってくれている。

チッティはお兄ちゃん大好きマンなので、お兄ちゃんが絡むとすぐ手を出す。ヒロインのラーマラクシュミに対しても、兄貴の次に好きとか言っちゃう。
そもそも彼女に惚れたのが、ラッキースケベが発端で、彼女は相当おこだった。難聴であることよりも、チッティの性格が二人の間をこじれさせた。
後半に二人がラブラブになる前までは、本当に厄介で、内心「そんな男やめとけ、君ならもっと良い男見つかるだろうに」って思っていた。
チッティが誤解して夜這いかけに家に入るところも、平手打ち来た時やったぁって思ったくらい。つくづくラーマラクシュミのお父さんがかわいそう。
チッティかなり頑固だし、見栄張るし、本当に面倒臭いから、いつも横にいるマヘーシュくんが凄いなと思ってしまう。自分だったら、巻き込まれたくないから距離置いてしまうよ。

村の同年代の若者勢で、よくチッティをからかう三兄弟がいるんだけど、その長兄のカーシ(癖なのか、よく左の髪の毛を指に絡めてネジネジしている)が凄くいい。初見の時は話の筋を追うのが精一杯で、キャラそれぞれをじっくり追えなかったんだけど、2回目からはこのカーシとクマールの関係ももっと見たいってなる。
二人とも喧嘩っ早い弟を持つ兄貴なんだけど、大人しいクマールと、ちょっとヤンキーぽいカーシ。
チッティとカーシの弟達の喧嘩絡みでの顔合わせが多いだろうが、互いにじっくり話す機会もしかしてなかったかもしれないけれど、クマールの立候補がきっかけで、カーシの良さが表面化したし、その後の展開、プレジデント探索の際もずっと一緒にあちこち駆けずり回っていたみたいだし(確かいたよね)、最後の最後までカーシはチッティを見届けていると思う。
カーシとクマールの、二人のドスティ見たいよ。
しかもカーシの元へ協力のお願いをしにいくきっかけが、(村人の賛同がなかなか得られなくて落ち込んでいるクマールに対して)父親が仲間が駄目なら敵にも話をしなさいって促すところ。いつも敵対していても話が通じる相手ってことで、真っ先にカーシを思い浮かべたというところも良い。

チッティに水撒き用のモーターを貸してあげているご近所のランガンマ姉さん、ずっと旦那がドバイに出稼ぎ中で、一人で家を守っているんだけど。この女性が、チッティの悩みや愚痴を聞く姉御的ポジション。
チッティはそういうことをクマールお兄ちゃんには愚痴らない、というか出稼ぎして家に普段はいないお兄ちゃんの代わりに頼っている感じ。
チッティは、父母、兄、妹がいるけれど、実質このランガンマ姉さんが結構良い感じで要所要所でチッティにアドバイスしているし、ヒロインとの関係も見守ってくれている。
そんな彼女の胸に秘めた辛い事実が、後半明らかに。
因みに初見では気が付かなかったんですが、このランガンマさんの旦那さんの役、RRRのニザーム藩王の顧問さんというツイート見て、2回目ガン見していました。ちょっと雰囲気違うから判りづらいけれど、目元がそうですね。
あと野原で出てくる謎の男、ジャングの俳優さんらしい。カメラがくるくる切り替わるから、なかなかお顔をじっくり確かめられないんだけど。
それいうと、タラクさんの「アラヴィンダとヴィーラ」でご出演の俳優陣が沢山出ている。


クマールお兄ちゃんの立候補は、当初プレジデントが怖くて賛同できない村民ばかりで苦戦するんだけど、カーシが協力すると言ってくれたあたりから地道に支持が広がって、最終的に優勢に。
男性陣は割と敬遠しているんだけど、「村議になるよ!」って真っ先に名乗りを上げたのが女性だった。ここから順調に村議が増えて、地盤が固まっていく。

しかしランガンマ姉さんから、今までプレジデントに対抗して村長選挙に立候補した人たちが皆、闇討ちにあって命を落としている話を聞かされ、チッティが不安になる。

クマール候補の応援演説のために、ダクシナ先生がやってきて盛り上がっている時、舞台上に近付く人物に対し、チッティが殴り掛かる。
彼は先生の秘書で、怪しいものではないと説明を受けるが、この件で応援演説は中断、民衆の思いが一つになっていたところに水を差され、クマールは激怒し、チッティに選挙の場に口出ししないよう言い放つ。

いつも一緒にいた二人は、行動を別々にするようになる。

ある日、村の皆が村議の申し出を取り消しにいくと言い出し、クマールがカーシにその原因を問い質すと、チッティがプレジデントから金を受け取っているという話が浮上。
それが本当なら自分も立候補を取り消すと宣言するクマール。皆の前で弟への疑念をはらすべく、カーシ達をつれて家に戻ってきたクマールは、チッティを問い質す。しかし喧嘩中だから、兄の話に聞く耳を持たないチッティ。献金なんて受けるはずないと母、「お兄ちゃんが訊いているいるのだから答えなさい」と促すが目も合わせないチッティ。
クマールは置いてあった鎌を自分の首に当て、話さないと首をかっきると脅す。
このシーン、チッティに鎌を向けて脅すんじゃなくて、自分の首に刃を当てて脅すのがクマールお兄ちゃんらしい。弟を傷つけるつもりはないし、信じているし、何より弟が自分をどれだけ思っているかを判っているからこその行動。その様子に(さっきまで献金の噂だ兄弟に対して怒っていた)カーシもさすがに慌てた顔で二人を見守っている。

結局、チッティは兄の身が心配で、プレジデントから金を受け取れば、立候補を取りやめてくれると思ったらしく、受け取ったことを認めた。

絶望的な様子で膝を折るクマール。なんてことを、と嘆く母。裏切り行為だと激怒し、家から追い出す父。

チッティは家を出て、その足で、祈祷中のプレジデントの家へ。
彼の家の庭に埋めていた、献金を掘り起こし、祈祷中のプレジデントに一方的に話しかけ、金を返す。
ここでトレーラーにもあった、「兄貴に手を出すな」宣言がきけるのか。
金を返して戻ってくるチッティ。
多分家族はもう許しているんだけど、なかなか家の中に入ってこないチッティ。そこへラーマラクシュミがカレーをもってやってくる。
「未来の嫁がきた」と家族の前で宣言して、あんな家族放っておいて、ここでご飯にしようと彼女と一緒に玄関前で座り込み、なすカレーをよそってもらうチッティ。
そこに「お義姉さん、私にも!」と皿をもってかけつける妹。
「お嫁さん私にも」とやってくる母、父。
クマールお兄ちゃんも皿をもってやってきて、外でナスカレーパーティに。
ここのシーン凄くいい。ずっと見ていたい。
そういや、クマール立候補騒ぎで、このお父さんの権利書返却の話はうやむやになったのかな。(そりゃこの状況でわざわざ権利書、プレジデントへもっていかないよな)
この兄弟のお父さん、普段は大人しい感じだけれど、要所要所で少ない言葉や態度で感情を見せてくる。クマールはお父さんに性格が似たんだな。割と怒りっぽい感じのお母さん、チッティは母親似なんだな。

ナスカレーパーティの途中、村の広場?に踊り子の金ぴかクイーンが(選挙に合わせて?)やってきたという話を聞かされ、家族団らんから(完全に推しを見に行くファンの様子で)クイーンを見に行くチッティ。
(ここでダンスナンバー1曲
(金ぴかクイーンのインタビューとメイキングはこちら。)
盛り上がる中、村はずれに怪しい集団がいるようだと知らせてくるマヘーシュくん。チッティは彼らに弁当を持っていく自転車の後を(マヘーシュくんと二人乗り)でつけていく。
暗がりで弁当を待ってたむろしている四人組を発見。
チッティはここで何をしているか、と聞くが、相手は大声で畑仕事の手伝いだと答える。

名乗りもしていないのに大声で答える彼らに対し、チッティは、彼らが自分の事を知っていると気付き、襲って来た彼らをやっつける。しかし弁当の数が四人よりも多い。
もしやと確認すると、今日は土曜日、クマールは恋人に会いに街に行っている時間であると判る。

うわうわうわ。もうこの辺りから鳥肌でした。
お兄ちゃんが狙われている。危ない。
チッティ、はやく兄に追いついてくれ。

バイクで、恋人の元から自宅へ帰る途中のクマール。不審な人物達に囲まれ、倒れた際に眼鏡を失う。
夜中でただでさえ暗いのに、眼鏡まで失って、慌てて草むらへ逃げるクマール。これ、ぞっとする。視界がきかない場所で、自分の命を狙ってくる複数の男たちから逃げ回るという恐怖。
チッティが転倒したバイクと、道に落ちた眼鏡を見つけた頃には、お兄ちゃんあちこち傷だらけなんだけど、それでもまだちゃんと逃げている。
早く!チッティ、お兄ちゃんを助けにいってくれ。
本来なら足音とか草のすれる音とかで判るだろう場面も、耳が聞こえにくいチッティには困難な捜索。相手もなるべく音を立てないよう、クマールを追いつめている。
偶然踏みつけた懐中電灯に照らされる先で、男達に囲まれている兄を発見するチッティ。そこから怒涛の反撃。容赦なく相手を潰す、潰す、息の根を止める。
プレジデントの手下たちをなんとかやっつけて、逃げおおせて、道脇の休憩所みたいなところで、負傷したクマールを座らせるチッティ。

初見では、この時点で結構お兄ちゃんは死にかけていると思ったけれど、二回目みると、切り傷は多いものの致命傷になりうる怪我はしていないと判る。
そして傷にぬるウコンをもらうためにチッティが席を外し、戻ってきたところの背景で、犯人の人影が去っていくのも、2回目で確認できた。

テーブルに突っ伏しているクマールの姿。
抱き起こすと、彼の首には明らかに刃物の深い傷。

この時の初回の自分の心境、わかります?
前宣伝でビジュアル見た時から、ちょっと幸薄そうなオーラ醸し出していたし、暴力が多い内容だし、若干の覚悟はしていたけれど、クマール兄さん、あなたもかぁぁぁぁ(号泣)
鑑賞前にちょっとよぎった懸念が、事実になった時の、この、この気持ち……。プレジデントの手下が、夜の草むらでクマールを追いつめるところ、本当に(助かるよね、助かるよね)って祈るような気持ちで見ていたし、チッティがなかなかお兄ちゃんの居場所突き止められない時も、心が死にそうになったし、見つけてからは「大丈夫、大丈夫、助かる」って言い聞かせて、逃げ切った後の、この一瞬、カメラがお兄ちゃんをうつさなくなってからの絶望感。
予想はしていたけれど、見たくはなかったシーン。
良い人はなんですぐ死んじゃうの……。

クマールが最後の最後に、チッティに犯人を知らせようと必死に口を開いても、おそらく喉をきられているから声も出ないし、死にかけているから、ろくにしゃべりも出来ない。
チッティも兄の言わんとしている言葉が判らなくて、必死に耳を近付けるけれど、互いに伝えたいこと・聞きたい言葉が伝えられないというシーンが本当にしんどい。
後から考えて、この時に、もし兄が送った補聴器をしていたら、少しは言葉は伝わったんだろうかと悔やまれる。おそらくチッティもそう感じていたはず。

そしてチッティが動かなくなった兄をかついで戻ってからのシーンは、涙の連続。家族が嘆く中、茫然と佇むしかないチッティ。
その後、チッティが鎌もってプレジデントの屋敷に一人乗り込むのを知って、村人たちがそれぞれ農具を片手に続くのが、もう……、もうね。
プレジデントは一足先に夜逃げしていて、そこからチッティ達の執念の追跡劇。祈祷師にまでお願いして、あちこち探し回るがなかなか見つからない。
仇を撃つため、チッティ、今まで頑なに拒んでいた補聴器を常に持ち歩いているのも泣けてくる。どんな噂も逃さないという執念だけでなく、この補聴器は、兄の形見にもなってしまった。


そして現在パート再び。
ずっと意識不明だったダクシナ先生を、つきっきりで世話して、意識を戻るのを待っていたチッティ。願いが通じたのか、事故から2年を経て、彼は目を覚ます。

そしてその2か月後、先生は議員に復帰し、大臣を目指す選挙前なのか屋敷は大勢の人が出入りしている。その入口の脇に、チッティとヒロインの姿が。
先生の奥さんに声をかけると、チッティは先生の元に案内される。
「彼が2年も私の世話をしてくれた命の恩人だ」
にこにこと周りの人間に、チッティを紹介する先生。
「君にはなんてお礼をしたらいいだろう」という彼に、チッティは「話があります」と切り出す。
言いにくそうな彼に対し、人払いをする先生。
そしてチッティは、先生と二人きりになったのを確認して、話を始める。
プレジデントをなんとか探し出し、始末したこと。
今まで殺してきた村人のためにも「殺すのは仕方なかったことですよね?」と先生に確認するチッティ。
しばし考えた後、「仕方ないことだ」と返す彼に、「では先生は?」と返すチッティ。

ここで衝撃のチッティの発言。
先生に対し「なぜ、兄を殺したのか、ずっと謎だった」と。


聞いた瞬間、鳥肌たちましたね。
冒頭の車事故から、回想を含めて、現在まで、このワンシーンに辿り着くまでの演出だったのかと。

今の今まで(初見では)今回のプラカーシュおじさんの役どころ、いい人だと思ってました。(※悪役も良い役も両方やる役者さんなので)
鑑賞前はどっち寄りのキャラかな、悪役かな?とも疑ってましたが、今回ジャガパティさん演じるプレジデントの存在で、すっかり騙されてましたね。

先生がクマールお兄ちゃんを殺す指示を出した理由が、自分の娘と付き合っていたから。とんでもない理由だった。
プレジデントは、自分の立場をあやうくするような人たちを影で始末していたけれど、それは悪役なりの理由だなと納得はした。
でもこの先生は、それまではただの議員だったはずなのに、娘の問題一つで豹変したということになる。それとも娘に近付く男はそうやって、今まで始末してきたんだろうか。

初見の時は、先生が自分の娘とクマールお兄ちゃんが一緒にいるところを目撃したのが、一体いつのタイミングだったのか判らず、選挙の後押しをした後に気付いたのかと思ったけれど、
2回目を見て、チッティの最後の方の科白によると、先に二人の恋仲を知って、始末をする為にプレジデントを利用しようとして、クマールに立候補をすすめたっていっている。
これが事実なら、クマール一人を狙う為に、あらゆる人間巻き込んでいる、とんだ悪党だよ。
しかもクマール立候補の後押しについて言及する際に、命をささげるみたいな科白までいっているから、後から振り返るとそのシーンがうわぁ、どの口がそれを言っているのってなる。あの時点で、既にクマールを憎んでいるのに、君のために命をささげるなんて言っているんだと思うと……。

初めて映画を見る数日前の、自分の呟き↓
(こんな予想、当たって欲しくはなかった)

そこまで知っていて、何故2年も彼の世話をしていたのか。
それも兄の言葉に影響されたものだった。
車の事故に遭った時には、先生は死を覚悟していた。そんな時に見ごろしても意味はない。
意識を取り戻し、今が一番輝いていて「生きたい」と強く願っている今だからこそ、殺す意味があるのだと。
兄の最後と同じく、隠し持っていた刃物で彼の首を切ったチッティ。
そっと裏階段から抜け出し、ラーマラクシュミの元へ。彼女は全て知った上で何も言わずに寄り添っている。
車が到着し、クマールと付き合っていた彼女(ダクシナ先生の次女)がおりてくる。その横の男性は新しい彼氏なんだろうか。2年も経っていれば、新しい彼氏も出来るとは思う。
チッティ達は選挙前に盛り上がる人たちを尻目に、この場所を去っていく。

2回目だからこそ気付いたこと

初見は衝撃で、最後なんとも言えない気持ちのまま、帰りました。
二回目鑑賞は話の筋がすでに判っているので、チッティがどんな思いで冒頭からこの先生に接しているのか注意深く見ていました。
病院にかつぎこまれて、医師たちに診察される彼を心配そうに見守るチッティ。戸口のところに座り込んで、ベッドの方をじっと見ているところ。初見では車事故にあった恩師の衝撃的な瞬間を見てショックを受けていると思っていたところが、2回目に見ると「絶対死んだら許さない」というギラギラの目に見えてくるんですね。

あとクマールが恋人と会っているシーンで、彼女が「見回りがくる」みたいな科白があるんですが、当初それはまだ家族に紹介していない恋人だからバレたくないみたいなもんだろうと思っていたけれど、これ2回目に見たら、父親に身分の低い人間と付き合っていることをバレたくないともみえるな、と思ってしまった。

ダクシナ先生は、クマールが嫌いというよりも、底辺の人間が自分の家の敷居をまたぐのが許せないっていうことなんだけど。
そんな思いを秘めているのに、よく今までそれを笑顔で押し隠して、応援演説したり、兄弟を励ましたりしてきたな、とある意味、その仮面っぷりに感心してしまった。
チッティが問い詰めた時に、同じ笑顔でごまかすことも出来ただろうに、一気に豹変して、差別発言のオンパレードになったのは、今まで押し込めてきた感情が爆発したんだろうな。

これは冒頭で鑑賞者にネタバレしない為なんだろうけれど、先生が病院に運ばれて、家族がかけつけてくるシーン、奥さんと長女しかカメラには映っていないんだよね。あの場に実は次女が居たのかどうか、カメラに写っていないところにいたのか。判らない。

身分差があるとか、貧しい家に娘を嫁がせたくないとか、色々理由をつければ、彼女の幸せを一番願うクマールなら理解して身を引くということも考えられたのい、一気に殺すという感情になる辺り、父親としてのあれこれよりも、自分のためなんだよね。穏便に二人の仲を引き裂く方法もあったはずなのに。

上記はTLに流れてきた、クマールお兄ちゃんことアーディさんのアフレコの様子。よりによって、草むらで襲われるシーンのアフレコなんだけど……。

お兄ちゃんに思いを馳せるとつらくなるので、テーマ曲のメイキング貼っておく。

そういえば、ランガスタラムの感想ツイートをだらだらっと見ていて、ヒロインの顔芸すごいってコメントどこかで見たけれど、
確かに美人な女優さんなのに、劇中で結構変な顔しているところとかあったな。後半が重い分、前半の笑える要素を担っているというか。
この曲の入りの部分の顔とか……。

そういやヒロインの水浴のぞいて一目惚れしたチッティのところの曲に出てくるあの鶏さん。凄く慣れた感じで大人しいけれど、これもいわゆるアニマルタレント的なあれなんだろうか。物凄く美しい造形しているんだよね。田舎の村にたまたまいる鶏って顔していない。鶏に美形だって思ったの、初めてだよ。

チッティとクマールお兄ちゃんのシーンが多いけれど、このトレイラーに出ている、妹とお兄ちゃんの身長差とか年齢差みたいな比較構図も好き。
妹ちゃんも本当はお兄ちゃんにもっと甘えたいだろうに、常にチッティが独占している気がするなぁ。

しんどいんだけど、お兄ちゃんの葬儀のシーンの映像も公式にあがっている。嘆いて涙するお父さんを、村のおじさんたちが囲んで支えているところとか、回想シーンでナスカレー囲むところとか出てくるけれど、一か所だけ既出でないシーンがあって、チッティがおそらく兄のシャツを黙ってきて、それをクマールが脱がすシーンなんだけど、ここ冒頭でチッティが喧嘩の原因になったって言っているシーンとは別っぽい。だって家族みんなで笑っているんだよ。だから黙って兄のシャツを着るって言うのは、今まで何度も何度も繰り返された、家族の光景なんだろうなって。そして前回出稼ぎのためまた家を離れる兄貴に対して、別れが淋しいチッティがやはりシャツを着たんだろうけれど、いつもとは違うくらい強情になって喧嘩別れになったのかなって。
あと下記のは本家の公式だから日本語字幕ないけれど、映画館でこれが流れた時、クマールの眼鏡のうつるところ「眼鏡がお前をよんでいる」みたいな歌詞で、心臓ぎゅっとなりましたね。しかもその後ろに、椅子にかかった血のついたシャツがあるんですよ。
遺体を運ぶシーンで、かけつけた役人のおじさん(散々プレジデントに馬鹿にされて嫌気がさしていて、ずっと対立候補を望んでいた人)が一緒にかつぐところも、考えさせられる。役人という立場的なことだけでなく、きっとクマールの存在にとても希望を持っていたからこそ、それが失われた喪失感が物凄い。

……からの曲の後半で、ダクシナ先生がクマール兄さんの遺体に花をおく所があるんですけどね。これどういう気持ちで先生は立っていたんだろうな。自分が秘書に指示を出して殺した相手ですよ。うわ……。

クマールの亡くなった後、ランガンマ姐さんが夫の意思を継ぐ形で村長になるようなんだけど(プレジデントが夜逃げした後)、これはつまり、夫の死を公表したということでもあるんだよね。

プレジデントが逃げ出した時点で、村全体がクマール寄りになっていたし、プレジデントの手下の失言で、プレジデントの闇討ちの事実がばれたし、手下も「今回ばかりは選挙おりたら」なんてことを言う位には、もうあの時点でプレジデントは追いつめられていた。
クマールを襲って、もし誰にばれることもなく彼を殺せたとしても、あの村に彼は居座り続けただろうか。
手下が誰一人戻ってこなかった(チッティにやられた)時点で、クマール襲撃が失敗したと思って、早々に逃げ出していたんだろうか。
逃げ回っていたにもかかわらず、隠れ家の外にラジオを出して、見つかりかねない状況を作っていたのは何故か。
チッティがプレジデントを見つけ出すまで、一体どれくらいの歳月をかけたのか判らないけれど、油断するくらいには時間がたっていたのか。それとも豊かな暮らしから一変して、みじめな逃亡生活になったことで、彼なりに早く終わりを迎えたかったという想いがあったのか。
考えれば考えるほど、プレジデントの心情も気になります。

この作品の中で、プレジデントが激しい感情を表にするのは、部下が失言して「選挙をあきらめたら」と言った時だけ。それ以外はわりと大人しい口調で、淡々と語る人だった。あの瞬間、自分の権力を否定せずずっと従って来た部下の一人が、新しいプレジデントが誕生するかもしれないなどと口を滑らした瞬間、彼の築いてきたものは音を立てて崩れたんでしょうね。
その後の逃亡生活も、終わりが見えない苦しさと惨めさがあったはず。

絶対悪と思われていた存在が舞台から消えた時、一度はチッティの心に平安が訪れたのかな。その時点で終わっていれば、真犯人を知らないままでいたら、ダクシナ先生は事故死。
チッティが兄の最後の言葉を、口の形では覚えていて、それが何を示すか判ってしまった時の衝撃は、計り知れない。
今まで懇意にしてくれていた人の、最大の裏切りを知った彼は……。


さらに思い出したので追記

そういえば、チッティ達のお父さんは家で内職でミシンを使っている。
市場?に繰り出したチッティに、マヘーシュくんあたりが確か、いかしたシャツですね目立ってますよって声かけた時に、兄がかってきた布を父親が仕立てたって言ってましたよね。
だからチッティの服は兄貴と父親の両方の思いが入っているし、もしかするとクマールお兄ちゃんのシャツもお父さんの手作りなのかと思うと、もうそれだけでご飯3杯いけそうです。

3回目、4回目見てきたので、更に追記

初見からずっと思っていた、冒頭の先生の車事故。
あれ本当に事故なの?と今でも疑ってしまう。
見晴らしの良い一本道、あのトラックわざと自動車を蹴散らしていったように、なんの躊躇もない走り。

あとこれも最初に出てくる、妹を嫁に出すため頑張ったお兄ちゃん(名前覚えられなかったの、申し訳ない)。毎回ハラハラして生きている世界線を想像したくなる。
この兄貴と、カーシ、クマール、三組の兄貴は皆、下の子思いの良い兄貴。全員ずっと揃って村で過ごして欲しかった。
3回目にしてやっと気付いたが、クマールの彼女、パドマって普段は寮生活なんだね。だからダクシナ先生が病院運ばれた時も、その場にはいなかった。でもその後も家族が駆けつけるシーンで、ネタバレ回避とはいえ、彼女だけ出てこないの、無理ある気もする。

公式Twitterで記載されていたトリビアに注目して、3回目は見てきました。

https://twitter.com/RANGASTHALAM_jp/status/1684540809008517121