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140字小説 No.906‐910

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【No.906 濃淡蝕】
「どうせ死ぬなら濃くて短い人生がいいだろ」アルコール依存症で亡くなった父親が、度数の高い酒を好んでいたの思い出す。彼を否定したくて昔から味の薄いカルピスを作っていた。禁煙で震える手で息子の頭を撫でる。いつか自分も同じ結末を辿るのだろうか。粘りつくような、血の濃さを呪う。

【No.907 生前葬】
死ぬ前にやりたいことを百個書き出す。三十五番『嫌いな人に嫌いと伝える』七十七番『彼女の描いた水彩絵を捨てる』全て終えれば未練を失うのに、達成済みの線が揺れるのはなぜだろう。誰からも嗤われるような、取るに足らない願いすら叶えられずにいた。百番『            』

【No.908 夜紛い】
目が見えない彼女のために点字の勉強をしている。思えば、指先で言葉を感じるなんて不思議な体験だ。モールス信号、手話、背中になぞる文字。声以外に気持ちを伝える方法があることを幸せに思う。人差し指で不器用にも机を叩く。ツーツーツートンツー、ツートンツートンツー。彼女が笑った。

【No.909 迷世中】
母の言う「良い子」が「『都合の』良い子」である事に気付いたのは小学四年生の頃だったか。容姿端麗、成績優秀な姉と比べられて、母が電話越しに話す「下の子」という表現に、嘲笑と含みを感じて耳を塞ぐ。甲高い声がする度、心配そうに困った顔を浮かべる姉も、本当は私、大嫌いだったよ。

【No.910 クローズド】
花見の場所取りでレジャーシートを敷くのは構わないのに、フードコートの席を煙草の箱で確保するのが気に食わないのはなぜだろう。そんな些細な物で誰かの居場所を奪うことに苛立ちを覚える。小さな棘達が抜けない。何も考えてない奴らが、私の心に図々しく、いつまでも席を取っているのだ。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652