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140字小説 No.-216‐220

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【No.-216 ありあまる富】
一緒に買ったペアリングを眺める。同じ趣味で付き合ったなら、接点を失えば終わってしまうのだろうか。それでも人生は、続く。不安を振り払うように、二つの指輪を重ねて永遠を象った。ぽんこつな魂だって、青臭くもなれない赤い春だって、自分にとってはありあまる富だ。どうか、良い旅を。

【No.-217 スリープウォーク】
私は晴れの日が嫌いだ。どんなに未来が暗くたって、上を向いて歩かなきゃいけない気分になる。俯いても泥濘に映る青空は見えるのに。私は私に自信が持てないから、いつか、根拠のない誰かの「大丈夫」に安心してしまう日が来るのだろうか。踏み出した足を止めて、解けてもいない靴紐を結ぶ。

【No.-218 花曇り】
花農家の私達は声の代わりに花言葉で想いを交わし合っていた。けれど、一つの花にいくつもの意味があるせいですれ違ってしまったのだろう。花言葉なんて誰かが作った勝手な祈りだ。私達もそれに倣う。最後の共同作業として、新品種の花に「貴方と出会わなきゃよかった」という願いを込めた。

【No.-219 信葉】
「信じたからな」が親父の口癖だった。夢を言い訳に大学を辞めたときも、一人暮らしは楽しいか聞かれたときも、言葉を濁す俺に頷いてくれたのに。『親だから』という信頼が鬱陶しくて、あの日は感情的になっただけなんだって。だから「死ねよクソ親父」なんて冗談、信じてほしくなかったよ。

【No.-220 クオリア】
「私だって少しくらい過去を見世物にして、オイシイ状態になったっていいじゃないか」彼女の台詞からも、表情からも、それが真実であることは容易く想像できた。同時に昏い傷を雨曝しにして、創作を穢すことが許せないようにも感じた。彼女の書く物語が、どうか、未練とならないように祈る。

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改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652