若林明良

わかばやしあきら と読みます。

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  • エッセイの数々

    日々思うことのつれづれ。短歌・俳句もたまに入ってます。

  • 140字小説

    140字の小説を3編づつ掲載しています。

  • NHK俳句・短歌・文芸選評、💢没った💢エッセイ

    NHK俳句・短歌・文芸選評投稿作や、没になった300字のエッセイです。 自分の記事の中ではそこそこ人気です。

  • 創作短編・短歌・俳句・川柳・詩

    恋愛あり、ナンヤコレ?っていうのもあり。短めです。

  • 音楽に寄せる愛シリーズ

    音楽に寄せる愛を、短歌・俳句・エッセイなどで綴りました。

最近の記事

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余白の神様 #短編小説

 夏。僕は「豚の警察」という本をお母さんに買ってもらった。読んでいて、僕はだんだん腹が立ってきた。話のすじ自体は面白いのだが、余白があまりにも多すぎるのだ。上下、左右、そして段落の間の余白が。 「なんだよ、これ。1760円もするけど、ぼったくりじゃん。余白をぎゅっと縮めたら、半分になるよ。そしたら880円で買えるのに」  僕は本の最後に印刷されている出版社の電話番号に電話した。 「はい、夏耳社でございます」 「こんにちは。中学一年の近藤貴志といいます。あの。『豚の警察

    • 柿本人麻呂/岡井隆の説

      人麻呂は歌人集団あかあかと裏戸を照らす岡井の説は 「エッセイで楽しむ日本の歴史・上/文藝春秋」を読んでいて、岡井隆の稿「歌人団・柿本一族の長」に衝撃を受けました。柿本人麻呂は一人の人間ではなく歌人集団であっただろうと言うのです。略ばかりで申し訳ありませんが、引用します。 たしかに、同時代のたとえば山上憶良は貧乏人や弱者の味方、大伴家持は万葉集編者かつ左遷される物悲しい役人、と人物像を浮かべやすいのに比べ、柿本人麻呂は「歌がものすごく巧い宮廷歌人だった」らしいが、その生い立

      • 140字小説/広

        ジャンボで1億当たった。即ボロ1Rから1DKに引っ越した。運ぶのは机とPCと座布団だけ。買替えようと思ったが貧乏性が発動した。それに俺の手垢のついたこの机と尻の形に凹んだこの座布団でないと思考が働かないのだ。仕事は辞めた。だだっ広いリビングの隅の半径30cmで遊ぶここが俺の世界。 ていねいに掃除をしたリビングは今までより広く感じる。ルナがすり寄ってきた。瑤子さんは猫大丈夫なの? わからんが、置いていくしかないよ。アパートは駄目なんだろ。一人の時に連絡くれる? 彼の顔が一瞬、

        • 140字小説/深

          保育所の送迎は深緑色のホンダZだった。祖母の車。昭和五十年代。地元では運転する年配の女性が珍しかったし、深緑色なのも珍しかった。なんで深緑なん?深緑が好きやからや。…人気が無くて安うする言われたからや。ふうん。でも他が赤や白ばっかりやから一番目立ってるで。というかおばあちゃんが。 深海に横たわる一枚の鋼鉄。ぼこぼこに変形したその下にサメの子が潜んでいる。毎夜彼は夢をみる。ここをうんとうすくした青。火の球のぎらぎら。熱い、熱い。羽の生えたやつ飛んでった。四角い街遠ざかり。緑が

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        余白の神様 #短編小説

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        記事

          140字小説/遠

          遠い昔、人類は箱であった。ときおり展開し光合成した。箱に戻る際、誤ってたびたび蝶を閉じ込めた。殆どは酸欠で息絶えたが、猛者は苦しみながら箱にぶつかり箱を凹ませた。脱出に成功した勇蝶もいた。これが盲腸と脱腸の名残である。勢い余り箱ごと移動する蝶。これは進化の道を逸れ、駝鳥となった。 この世界は私から遠ざかっている。ミントの浮かんだグラスも、グラスに反射する光も。翠のピアスとシャツの裾をゆらす風も。はるかかなたの星雲も、星雲を飲み込む黒い穴も。少しづつ、急速に。あなたが永遠に私

          140字小説/遠

          言葉の舟 140字小説

          ほしおさなえさんの「言葉の舟 心に響く140字小説の作り方」読了。後半のコンテスト入賞作品も含め、きらめく宝石みたいな、あるいは肌触りのよい布のような物語たちにうっとり。私は切手が好きなのですが(写真より手書きの絵のやつが好きです)、140字小説は切手に通じる魅力があります。小さな面積に精密描写をする点が同じに思えるからでしょうか。 第2章の140字小説実作講座では、言葉を省いて、移動して、省いた言葉を復活させて小説が締まってゆく様子はたいへん参考になります。講座の生徒さん

          言葉の舟 140字小説

          NHK短歌への投稿作・5月号

          選者:川野里子先生 題詠「ひとり」 不参加?の返事は明るく簡潔に「孤独を愛する人間なので」 班決めで一人あぶれた者同士一緒にされてカレーを作る 殺人の動機さまざまその一つぼっちと言われ言わせておけよ パソコンのファンがざあざあ音たてて私やっぱりひとりになりたい 愛知県 水谷文音さん(5月号) 一読、この人、自分じゃないかと驚きました。誰かと直接、あるいはネットで会話するのも楽しいけど、ふっと思う。私やっぱり、ひとりになりたい。ファンのざあざあ音は自分と外界を遮断してくれて

          NHK短歌への投稿作・5月号

          添削の魅力

          NHKテキストを読んでいて、おや?と思うことがあります。 NHK短歌2月号、誌上添削教室より。 死神と半分づつの新豆腐マンションの孤独なる死の現場 兵庫県 藤田晋一さん 藤田さんは短歌、俳句の色んなところで作品とお名前をお見かけする巧い方です。NHKテキストの読者のお便りエッセイや、最近ではよみうり時事川柳でもお見かけしました。 ええと、掲出歌。添削の必要、ないですよね? あえて言わせていただけるとすると、上の575だけで良句になっています。季語「新豆腐」を入れてくるあ

          添削の魅力

          米泥棒 #ショートショート

           夜通しで米泥棒の見張りをせよと両親から命じられた拓斗は倉庫内でこごえていた。十月半ば。横殴りの雨がシャッターを打ちつける音が響く。記録的な冷夏で極度の米不足に陥り、全国の農家で米泥棒が出没していた。しかも夏からの雨がいっこうに止まない。  米が傷むので倉庫の暖房使用は厳禁だ。寒い。寝袋から頭を出し、コンビニで買ったパンをかじりながらスマホを見ている。明日一時限目は出席必須の講義なのに。  ……ったく。米がなけりゃパンを食えばいいではないか。って、どこかのお姫様が言ってたっ

          米泥棒 #ショートショート

          句会ライブ in 寝屋川市立市民会館

          昨日、夏井組長の句会ライブに初めて行ってきました。組長がすごいのは、お客さんと会話しながら面白くなる方向へ話をひっぱっていってくれるところ。鬼のように当意即妙です。もう、むちゃくちゃ笑わせていただきました! 上沼恵美子の代わりにクギズケ!の司会よゆうで出来はると思います。 「いつき組の中にかたまって俳句を研究してるややこしいグループがいて、独特な空気をかもしだしている。だまっていても誰がグループの人間か私にはわかる。そのオーラがむんむん出ている」 という意味のことを仰って

          句会ライブ in 寝屋川市立市民会館

          NHK文芸選評への投稿作・4月

          4/6 短歌 選者:穂村弘先生 兼題:猫 ねこ餅は猫のおもちにあらずして年末母と作るねこ餅 食べためし元に戻すは猫に戸を閉める術学ばせるに等し 台所、お風呂、トイレの手洗い場あらゆる蛇口を記録する猫 われのあごねこのあたまにこすりつけずっといっしょにだい好きだよと 青森県 山口秀子さん 愛猫への想いを超ド直球で詠まれています。「好」だけが漢字で、あとはぜんぶひらがな。いかにも猫のあの、どのようにも曲がるやわらかい姿態が表現されているではありませんか。猫同士があごをこすりつ

          NHK文芸選評への投稿作・4月

          NHK俳句への投稿作・4月号

          選者:夏井いつき先生 兼題「入学試験」 弁当の具は鳥の肝入学試験 スケートの試合聴いてる明日受験 落丁の説明長し入学試験 平行に鉛筆並ぶ受験場 鹿二頭受験帰りの社道 若草の火の遠にあり受験終る 以前に自選しますと言っときながらつい、こんなにたくさん出してしまいました。すみません。一首目は佳作に採っていただきました。組長ありがとうございます! 私、夏井さんの「組長」って呼び方がかっこよくてすごい好きなんです。 Xで4月19日にポストされた組長のお言葉です。 こうピシッと言

          NHK俳句への投稿作・4月号

          NHK短歌への投稿作・4月号

          選者:川野里子先生 題詠「顔」 半世紀仕込みのわれの観相学四角い顔は嘘がつけない 目の前のラーメンライス 猫のえさ一回分は顔の大きさ 年越しの朝顔たしかに生きてゐるだんだん薄く小さくなりても ひとり手を挙げる反逆、教室に無言の「えーっ」の地響きがする 東京都 稲山博司さん(5月号) 作者はたぶん真面目な生徒で、絶対に反抗的なことはしないと思われていたのでしょう。無言の「えーっ」の地響き巧い。微妙な空気がひろがる景色がみえます。何に対して反逆されたのか。そこが気になります。

          NHK短歌への投稿作・4月号

          NHK短歌への投稿作・3月号

          いつも同じ、毎回必ずこれをすると決めてしまうと自分が飽きてしまってしんどくなるので、選者の作品に限定せず、その方の選された作品やお言葉などからも引用したいと思います。自由に、ランダムに。この取り組みもいつまで続くかわかりませんが、なにか始めてもすぐやめてしまうのが私のあかんところであり、よいところでもあります。 選者:川野里子先生 題詠「光」 雲間より延びる光線あのなかを過ぐ鳥たちに光は見えず 朝は美人に見える鏡が夕方はそれなりとなる光の魔法 いちにちの境界線に野良猫ら朝陽

          NHK短歌への投稿作・3月号

          NHK俳句への投稿作・3月号

          選者:夏井いつきさん 兼題「氷」 厚氷どけよ最初は俺が割る 旧ツイッター旧ジャニーズや川氷る 第七戦氷る刺身を飯に乗せ 氷の海老ら夢見るやうに死んでゐる まつしろな秋蝶轢いたかもしれぬ  夏井いつき 秋に真っ白な蝶っている? 調べると、コスモスの蜜を吸うモンシロチョウの画像を見つけました。日付が十月。とはいえ、ほぼ見かけないような。「まつしろな秋蝶」といわれてグニッとした感覚がわき起こるのは「明るい闇」と同じく形容矛盾だから。秋なら暖色系だよね!って固定観念を蹴とばしてく

          NHK俳句への投稿作・3月号

          NHK文芸選評への投稿作・3月

          3/2 俳句 選者:高野ムツオさん テーマ:東日本大震災 この回は締め切りが一週間早くて、出すのを忘れましたー笑 永劫の酸性雨なり兎の眼  高野ムツオ 兎の眼の赤は血管の色がそのまま見えているのですが、こう詠まれると酸性雨で充血しているとも思えてくる。原因には工場や車のガス以外にも火山ガスなど自然由来もありますけれども、酸性雨は大気を汚す人間に「答え」を返しつづけるのでしょう。酸性雨は私が小学生の頃に仲間うちで騒ぎはじめて、雨に濡れたら皮膚が溶けると怖れられていました。雨

          NHK文芸選評への投稿作・3月