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菅義偉総理に「目指すべき社会像」はあるのか?

「菅義偉総理に、目指すべき社会像、はあるのか?」――。菅総理からは、個別政策は聞こえてくるが、社会像については言及がない。早期の国会開会を求めているが、未だ国会も開かれていない。
 そこで、文書による質問である質問主意書制度を利用して、「菅内閣の基本姿勢に関する質問主意書」を提出した。質問主意書制度では、内閣からの答弁書が閣議決定され国会に送付される。
 今回、決定された答弁書の中から格差についての質問と答弁を抜粋し、一問一答方式でまとめ、私の見解も交えて説明する。ほとんどがまともに答弁しておらず、今後、国会質疑で内閣の見解を明らかにさせる。質問と答弁の全文は下記にリンクを貼って置くので参照願いたい。

質問主意書(全文)提出2020年9月16日

答弁書閣議(全文)決定2020年10月2日

<格差に関する質問と答弁(抜粋)>

(質問)
1. 格差についての認識についてお尋ねする。
1.日本の所得格差は許容できる範囲にあるとお考えか、見解をお聞かせ願いたい。
(答弁)
所得格差については、これが固定化されず、人々の許容の範囲を超えたものではないことが重要であるが、「許容できる範囲にあるとお考えか」とのお尋ねについては、人々が置かれた状況に応じて、許容の範囲は様々であるため、一概にお答えすることは困難である。
(見解)
 まず、菅内閣として、この答弁で、所得格差の捉え方として2つの視点が重要と位置付けている。
①「固定化されないこと」、②「人々の許容の範囲をこえたものではないこと」である。私も、この視点に同意する。そして、私は、日本の所得格差は深刻な状況にあると考えている。
 しかし、菅内閣は日本の格差が、固定化されているのか、については言及せず、許容の範囲を超えたものか、については「人々が置かれた状況に応じて、許容の範囲は様々」とした。 私は「日本の所得格差」についての認識を問うたのであって、答弁にあるように、一人ひとり様々である、ことは当然である。
 菅内閣は、所得格差の捉え方の重要な視点として、許容範囲を超えないこと、と敢えて述べているにもかかわらず、内閣の見解を示していない。日本の所得格差が大きすぎると考えるのか否かの現状認識について内閣の見解が定まらなければ、所得再分配政策、税制、社会保障をはじめとする政策の方向性が曖昧になってしまう。

(質問)
2.日本の格差を示す指標の一つである相対的貧困率はG7諸国でも米国についで高いが、これについての内閣の評価をお示し願いたい。
(答弁)
厚生労働省の「国民生活基礎調査」において、相対的貧困率は、平成二十四年までは長期的な傾向としておおむね緩やかに上昇してきたが、その後、雇用が大きく増加するなど経済状況が好転する中で、平成三十年は十五・四パーセントとなり、平成二十四年の十六・一パーセントと比べ、〇・七ポイント低下している。また、経済協力開発機構のウェブサイトで公表されている2017年のデータ等を基準とした主要国首脳会議参加七箇国の相対的貧困率は、国により調査方法等が異なるため、一概に比較することは困難である。
(見解)
 まず、質問で示した相対的貧困率の国際比較(OECD・経済協力開発機構調査)自体について、「調査方法等が異なる」として国際比較は困難と断じている。既にOECDが公表している国際比較を否定しては、これまで積み上げた国会や学会の議論が無駄になりかねない。
 では、菅内閣は日本の所得格差の国際比較においては、どんな調査を参考にするのか。さらに見解を質す。


 (質問)
3.近年、経済協力開発機構(OECD)や国際通貨基金(IMF)が相次いで「格差の放置は経済成長を損なう」との調査リポートを発表した。原因として、「所得格差は人的資源の蓄積を阻害することにより、不利な状況に置かれている個人の教育機会を損ない、技能開発を妨げる」(OECD)と教育格差の観点をあげている。日本でも、格差が経済成長を損なっている、と考えるが見解をお尋ねする。

(答弁)
格差と経済成長の関係については、様々な議論があるため、一概にお答えすることは困難である。
(見解)
 様々な議論、はどんな分野にもある。様々な議論の中から、菅内閣はどのような議論を選び取り、どのような方向性を持つのか、見解を示してほしい。

(質問)
4.政府による雇用の規制緩和によって非正規雇用者が拡大し、それが格差拡大の要因の一つになっている、と考えるが、見解をお示し願いたい。
(答弁)
御指摘の「政府による雇用の規制緩和」及び「格差拡大」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、非正規雇用労働者については、自ら積極的に非正規雇用を選択する者もいるが、一方で、正規雇用労働者と比較して、雇用が不安定であること、賃金が低いこと、能力開発の機会が少ないこと等の課題があることから、政府としては、同一労働同一賃金の実現を図ることやキャリアアップ助成金の活用促進等を通じて、非正規雇用労働者の処遇改善等を図ることが重要であると考えている。
(見解)
 非正規雇用増と格差拡大の関係について見解を質したが、ゼロ回答。ただ、非正規雇用の政策を羅列するばかり。非正規雇用を増やした政策が社会に与えた影響について菅内閣としての見解を示すべきである。
                  以上

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