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思い出よりモノ

先日、泊まりに来たゲストに、餞別として写真をプレゼントした。パンデミック中でも、中国で日本語をずっと勉強し、この春から大阪の大学に通うという。
異国の地でのドキドキの新生活を始める前の最後の旅で逗子に来てくれた。翌日、いよいよ大学に行って、アパートの鍵を借りるという。
こういう時にうちの店は神がかっていて、お酒の好きなスタッフやコワーキングの会員さんやシェアハウスの住民、他のゲストも含めてみんなで逗子の町に繰り出した。

さらに、この日チェックインのゲストは1人いたが、LCCで成田に着いたのが6時過ぎ。
晩御飯はまだ食べてないと言うので、宿泊業を4年目で初めてにしてみんなで飲んでいるお店でチェックインという、初の偉業を成し遂げた(もはや、それをチェックインと言っていいのかもわからないけども)

よくわからないわちゃわちゃのさなか、集合写真を撮って彼に渡す。
とても喜んでくれて、「お父さんとお母さんにあとで写真を送ります」と嬉しそうにすぐに財布にしまってくれた。


僕たちもそうだけど、泊まりに来た彼は、まさかこんなディープな夜を過ごすことになるとは思っていなかっただろう。
きっと異国で、慣れない文化、母国語でない言葉で過ごすのに不安だったろう中で、背中を押してあげることができて、とても嬉しくなった。

SNSなどでは、民泊ブームで一回の予約で何十万円!とか、インバウンドは何十万人!みたいなニュースは毎月聞くし、実際観光業の片隅にいる身としては、国境が開いてなかったら、今頃とっくにお店を畳んでいる。

そうした大きな数字に気を取られがちだけど、大切なのは、世界の東の果てに来て、独自の言葉を話し、飛行機や電車でも乗り換え読めない看板ばかりなところを、Google マップを頼りに、わざわざ逗子なんて田舎町に重い荷物を持ってやってきてくれる、一人ひとりのお客さんの気持ちや体験だ。

コリビングと言えども、小さな箱なので、何十人も相手することはできない。過ごす時間だって、大体の人はたかが数日。
いつかきっと忘れていく時間だ。
けど、なんとなくあの街あの時間、あの瞬間が楽しかったなとその後の人生や、旅に出る時に、日本に来る時に思い出してもらえるような時間が、1秒でも生まれればいい。そう思って、いつも店にいる。


自分はいつも、モノより思い出と思い、あちこち旅をしてもろくにモノを持ち帰らないが、写真1枚を渡すことで、喜んでくれたり、励みになることもあるんだなとしみじみ思った。
思い出よりもモノ、というもありなのかもな。
チェキは僕の手元に残ってないけど、僕にも思い出ができた、忘れられない夜になりました。

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