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読んだ、面白かった! -3-

堅苦しいことは抜きにして、読んで面白かった本を紹介するコーナー
言いたいことはただ一言。

面白いから読んで!

 随分間が空いてしまったが、三冊目は、『憲法の無意識』(柄谷行人)。
もちろん、今日が憲法記念日だからこの本を選択したのである。

 あとがきにあるように、この本は2006年〜2015年までに著者が行った講演をもとに再構成されている。
 中でも特に、最も古い2006年の「Ⅲ カントの平和論」を推したい。カントと日本国憲法という、一見無関係に思える二つが、実は深層で繋がっているというのが実に面白かった。
 そして、そこにキリスト教思想が横たわっているというのも、21世紀の平和を考える上で示唆に富む。

カントがいう「永遠平和」は、戦争をもたらす一切の敵対状態がなくなることを意味します。

同書P.82

 カントのこのような理念は非現実的だという批判は、皮相的だと柄谷は言う。そして、このような西洋の平和論は実は明治の段階で日本にもかなり普及していたとして、中江兆民の『民約訳解』を取り上げる。ルソーの社会契約論と孟子とを結びつけたそれは中国・挑戦でも広く読まれ中江兆民は東洋のルソーと呼ばれた。

 次に、北村透谷を紹介する。日本で最初に平和運動を開始しカントの平和論を取り上げたのは北村透谷だという。1892年のことだ。

 そして、内村鑑三が登場する。内村は日清戦争では、戦争を肯定する文章を発表したが、後にその論を否定し、日露戦争時には『戦争廃止論』を唱えた。

宗教は戦争を肯定することがあり、また、それ自体戦争をもたらすことがある。と同時に、それが非戦を可能にすることも事実です。

同書P.90

 ここから、カントとヘーゲル、カントとルソー、カントとマルクス、カントとフロイトなど比較考察が続くのだが、それは一旦置いて、話は少し飛ぶ。

 昨日、埼玉県東松山市にある丸木美術館を訪ねた。『原爆の図』で有名な画家の作品がメインの美術館だ。屏風絵として描かれた連作はこれでもかと、人間の悲惨さをあぶり出す。
 そして、原爆の図以外にも、アウシュヴィッツや南京大虐殺、水俣病などを題材とした大作も展示されていた。
 全てに共通するのは、人間がもたらした厄災である点だ。大地震や津波、火山噴火などの自然災害ではなく、原因はすべて人間にある。

 そう、原因はすべて人間にある。

ピカは人が落とさにゃ落ちて来ん。

ひろしまのピカ(丸木俊)

 この言葉を深く受け止めたい。

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