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#5 誰でもできる!オンライン研修のコツ③ デリバリー

 前回は、教材について話をしました。今回は③デリバリーについてご紹介します。

 デリバリーとは、デザインされた研修のコンテンツや教材を受講生に届けること。コンテンツや教材の重要性は前回に話した通りですが、そのコンテンツや教材を受講生にきちんと届けることができなければ効果は出ませんし、そのためには講師のティーチングスキルも重要です。

何はともあれ、最低限の通信環境

 まずオンライン研修のデリバリーで気をつけることは、「通信環境」です。オンライン研修と対面式の研修では、音声や映像の不備によるストレス度合いが違います。対面式の講習で講師の声が聞こえにくい部分があっても、あまり気にならない人は多いと思います。でもYouTubeを見ている時に、2、3秒でも画像や音声が止まると、イライラしますよね。オンライン研修では、より落ち着いて受講できる環境を確保する必要があります。

 通信は、通常のオンライン研修であれば、無線でも構いません。大人数セミナーの場合は、ホスト側の事務局や講師は有線LANで物理的に繋げるほうが安定します。「音声がきちんと聞こえる」「映像がキレイに見える」、そのことだけでも説得力は変わります。マイクやカメラも、ある程度性能がいいものを用意しましょう。ただ凝り出すと青天井で予算がかかるのも事実なので、参考までにコスパ重視の私が使っている機材を、こちらで紹介しています。それから、画面の背景は、真っ白い壁の前で説明をしていると、視覚から入る情報が少ないため、受講者が飽きてきて、ぼーっとしがちです。知的好奇心をくすぐるような背景にした方が、講習に受講者が集中しやすくなります。私はいつも本棚を背景に撮影していますが、本棚にはこっそり自分の本も置いています

 コンテンツや講師としての振る舞い以前に、必要な初期投資があるということですね。音声や画質なんて中身の品質と関係ないと思うかもしれませんが、周りの声を聞くと音声や画質がよいと講師への信頼感が増すようです。

学習効果の鍵を握る事務局

 では、企業が社内独自のセミナーを行う場合は、事務局(多くは人事部かと思いますが)は何に気をつけたらいいのでしょうか。

 是非やっていただきたいことは、事務局側のセミナーに対する本気度を参加者に伝えることです。そのことにより、受講生のセミナーに参加する姿勢が変わってきますし、ひいては学習効果が変わります。オンラインに限らないことですが、当該研修の位置づけや、会社が参加者に何を期待しているかなどは、参加者の募集段階はもちろん、研修の冒頭でも改めて説明するといいでしょう。オンラインであれば、キレイな動画の配信などは事務局の環境投資が垣間見えるため、この人材育成に「本気で取り組んでいる」という会社側の意識を伝えることにもつながります。

 また、外部講師に依頼する場合も講師に丸投げするのではなく、事務局と講師がチームとして共に取り組んでいることが伝わると、会社の本気度が伝わるので学習効果が上がりやすくなります。特に、希望者の手あげ式ではなく、参加必須のセミナーの場合は参加者のモチベーションは低いことが普通です。参加者に話を聞く体制になってもらう、当事者意識を持って参加することで学習効果はあがります。研修講師は当然ながら、参加者のモチベーションや関心を引き出すためのティーチングスキルを備えていますが、それを何倍もの効果にする鍵を握るのは事務局です。ぜひ研修当日だけでなく、その前から参加者の意識を高める働きかけをしてください。

受講者側の環境整備への配慮

 受講生側の通信環境にも配慮していきます。安定するネットワークと、カメラとマイクが使える端末を用意してもらいます。カメラについては、会社支給のパソコンだとカメラがついていないことも多いのですが、カメラをオンにするかオフにするかで参加者側の意識は変わります。見られているという緊張感が漂うことで、当事者意識を持ちやすく、学習効果が上がります

 特にディスカッションがある場合は、カメラオンはマストです。顔が見えない人に人は信頼感を持ちにくいため、意見を言えなくなる人が多くなるからです。ディスカッションを組み込む場合は、少人数のブレークアウトセッションのときだけでもカメラをオンにするルールにすることをお勧めします

 100人以上の参加者が講師の話を一方的に聞くセミナースタイルのときも、理想を言えばカメラオンにしたいところ。講師が参加者の反応を見ながら説明や方向性を修正していけるので、より学習効果の高いセミナーが実現します。しかし多人数のカメラオンは通信環境に負荷がかかるのも事実ですので、カメラオフにせざるを得ない場合は、チャット機能や投票機能を使って双方向のコミュニケーションを取り入れます。グループごとにオンラインドキュメントを用意して入力してもらう仕組みを作っておき、各グループの進行状況を並行して把握し、必要であれば介入するというやり方もいいでしょう。 

オンライン研修ならではの良さ

 オンライン研修の場合は、(ちゃんと工夫をしなければ)対面の研修よりも参加者の当事者意識が薄くなりやすいというデメリットはありますが、その点さえクリアできればたくさんのメリットもあります。

 例えば、大人数のセミナーの場合は、対面式よりもオンラインの方が講師との距離を近く感じます。実際にはどちらも1:nですが、オンラインの方が1:1で話していると感じやすいようです。これはあくまでも肌感覚ですが、イメージとしては、対面セミナーの場合は参加者が20人と200人では学習効果がかわりますが、オンラインでは工夫次第で20人でも200人でも同じ学習効果を実現できます。

 そしてなんと言っても、オンラインのほうが、気軽に開催したり参加したりできます。人数の多いセミナーは場所押さえをはじめ企画側の準備も大変ですが、オンラインではずっと簡単です。また子育て中の人や遠方の人など、これまで対面のセミナーに参加するには物理的・地理的ハードルが高かった人にとっては、オンラインにすることで参加のハードルが下がります。全国規模の会議や、子育て世代を対象とするセミナーは、オンラインにすることで参加率は確実にあがりますよ。教育機会の地域間格差の是正にもつながりますし、集合して研修を提供するには規模の経済が働きにくい研修などは、オンラインが適しています。育休者向け研修などはその典型です。

 2020年と2021年は、新型コロナ感染症の影響で集合研修やセミナーが開催しにくくなりました。しかしここで学習機会を損失すると、その影響は数年後に現れます。またオンライン研修のメリットに気づいた企業も多く、Afterコロナもオンライン研修は残ると考えられます。ぜひこの現状を逆手にとって、オンライン研修を人材育成のツールの一つとして活用して欲しいと思います。

次回は、④参加者についてご説明します。

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