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#4 誰でもできる!オンライン研修のコツ② 教材

前回は、研修デザインの考え方や組み立て方について話をしました。今回は②教材についてご紹介します。

教材とは

教材は、ケース教材、リーディングノート、参考資料など、教育・学習目的を達成する上で必要な様々な素材のこと。紙やPDFが多いですが、著作権等の環境が許せば動画なども活用します。教材選びは、オンライン研修も対面での研修もほとんど変わりません。研修デザインで決定した「達成したい効果」を達成するには、どの教材がフィットするかを考えながら決めていきます。ここでは私が主に相談をいただく、「個人の能力開発を目的とした教材」について説明します。

研修の2つのタイプ

私は「ケースメソッド教授法」という実務家向けの経営教育手法を得意とする講師なので、ご相談いただく研修の中でもっとも多いテーマは「経営者目線やリーダーシップを身につける」ことです。

例えば、リーダーシップ研修を実施する場合、2つの方向性があります。まず「リーダーシップとは何か?を伝えたい」場合は、目指している効果は「知識提供」です。一方、受講者に「リーダーシップを理解し、習得させたい」場合は、目指している効果は「能力開発すなわち行動変容」になります。知識提供の場合はいわゆるレクチャーでいいのですが、リーダーシップを発揮する人材を育成するには、意識改革につながることが重要です。意識が変わることで行動が変わっていくため、どうしたら意識を変えられるかを考え、設計をします。

意識変革と行動変容のためのツール:ケースメソッド教授法

受講者に意識変革を起こすには、講師が具体的な答えや知識を教える事では狙った効果が得られません。考え方の枠組みが出来上がってしまっている大人の意識を変えるには、「自分は意識を変える必要がある」と参加者に自らに気づかせる仕掛けが必要です。そこで、伝えたいこと全てが書かれた教材ではなく、思考力を養うツールとしての教材を用意します。そしてこの教材をもとに、講師によるファシリテーションでディスカッションをしながら学びます。ケースメソッド教授法に基づいたディスカッションは、他者の考え方や情報の組み立て方を通じて、自分の足りない視点や考え方、表現力などに気付くきっかけになりますので、意識変革を目的とした研修に最適です。ケースメソッドについては慶應ビジネススクールの解説もぜひご覧ください。

ケース教材の選び方

ケースメソッドを用いた研修においては「ケース」と呼ばれる教材を活用しますが、研修のテーマと参加者によって最適な教材は変わります。同じテーマでも、一般社員に向けた研修と経営者に向けた研修では使用する教材を変えることでより高い効果が狙えます。

ケースメソッドは自分に足りない視点に気づき、思考力を鍛えることが目的であるため、「正解」というものが存在しません。そのためケースメソッドによる研修を初めて受ける人や、ディスカッション経験が少ない人、言い換えるとものごとの概念化に慣れていない人は受講後にモヤモヤ感を抱えてしまうことが多いため、そうした場合は取り組みやすい(イメージしやすい)教材を選び、丁寧なディスカッション運びを意識する必要があります。実際の業務や業界に近いケースでなければ学べないということは決してありません。しかし、多くの情報を抽象化して考える経験が少ないと本当に学びたいポイントに到達するまでに時間がかかってしまいます。ゆえに、受講生の想像しやすいシチュエーションを描いたケースを使って当事者意識を醸成したり、学ぶべきポイントを抽出しやすいフィクションのケース教材を使用したりするとディスカッションが上手く進行していきます。

反対に、経営者や管理職に向けた研修の場合は、様々な情報のある実在の企業のケースを使うことで、より複雑な環境の中での意思決定力を高める効果が期待できます。

反対に、経営者や管理職に向けた研修の場合は、様々な情報のある実在の企業のケースを使うことで、より複雑な環境の中での意思決定力を高める効果が期待できます

ケース教材は、慶應ビジネススクールのサイト日本ケースセンターのサイトから購入することができます。

私は10年程前に慶應ビジネススクールで株式会社いろどりのケース教材を作成しました。ソーシャルビジネス、地域活性化の代表例の企業から、「指示命令系統がないところで人を動かすリーダーシップ」をテーマにケースを書きましたが、戦略やマーケティングにも使え、今でも広く使っていただいている教材です。ぜひ、興味をあれば読んでみてください。

自社のケースをつくる意義

毎年多くの人に研修をするのであれば、自社のケースをつくるのもよいでしょう。自社で独自の教材を開発することの利点は、大きく次の3点です。

1) テーマと難易度が操作しやすく研修目的にベストフィットする教材になる
2) 参加者が当事者意識を持ちやすく、学習効果があがる
3)会社の歴史や理念などをしっかり伝えることができる

また、参加者のモチベーションが低い場合も独自の教材を使ったほうがいいでしょう。ダイバーシティー研修は、その典型です。なぜならば、受講者にダイバーシティの問題が見えていない場合が多いからです。自社で起きているダイバーシティの問題を淡々と描いたケースを読んでもらうことで、当事者意識を持つと同時に社内の状況把握を促すことができます

大きな経営変更であればあるほど、目的に特化したスペシャルケースを作ることで「なぜこの変革が必要なのか」を伝えることができますし、研修の中で「自分は何をすべきなのか」を考えさせることで実行力も上がりますのでおすすめです。

ケース教材の作成のご依頼も受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
 
次回は③デリバリーについてご紹介します。

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