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FC物語(7)プロジェクトの具体例


ここでは立ち上げ初期のプロジェクトで、国保ゼミのフューチャーセンターを活用した事例を紹介します。この他にも、産学連携室経由や企業さんから直接持ち込まれる新商品/イベント企画や、学生のプロジェクト遂行上の課題の整理と対策の検討などを行っています。

①茶の和プロジェクト

「茶の和」プロジェクトは、2011年秋、静岡県立大学の経営情報学部と食品栄養科学部の4名による「生まれ育った静岡を自慢するきっかけになるようなお土産を作りたい」という想いから生まれたプロジェクトです。学生たちは静岡の良さが何かということから検討を始めましたが、潜在顧客のヒアリングやお茶農家の現場訪問を通じて、静岡では当たり前の緑茶が、時代の変化と共に消費量が減り、お茶業界もいろんな問題を抱えていることなどに気づいていきました。その結果、学生たちは自分たちが享受した「お茶が結ぶ人のつながり」をもっと広げていきたい、自分たち若い世代がお茶の素晴らしさを発信することで、若い世代や他県の人にお茶に関心を持ってもらいたい、お茶業界やお茶農家さんに元気を与えたいと考えるに至り、「茶の和」という商品コンセプトを考案しました。

この商品は、本当に多くの人の協力によって生まれました。フューチャーセンターで企画をプレゼンしてコメントをもらったり、参加者からバイヤーさんや菓子メーカーさんを紹介してもらったり、企画が頓挫したときにフューチャーセンターで相談することで挫折を乗り越えてきたり、という動きが見られました。販売開始直後の3日間は学生たちが実際に売り場に立って商品コンセプトを説明し、当初目標としていた150個を上回る数を売り上げました。

発売初日は皆で店頭に立ちました(2013/03/15)

②地域コラボプロジェクト

地域コラボプロジェクトは、地域の方々と学生とが一緒になって大学がある「草薙」地域を盛り上げたいという思いから生まれたプロジェクトです。このプロジェクトが始まる前は大学と地元のお店のつながりはほとんどなく、それを残念に思ったゼミ2期生の発案で始まりました。当初は私宛に学生の活動を非難するような匿名ファックスが届いたりということもありましたが、学生の粘り強い関係構築のための努力で距離が縮まり、その後数世代に渡ってゼミ生が活動するうちに地元商店街との関係を構築することに成功。フリーペーパー「つながるくさなぎ」の作成やイベントの企画運営をやるまでに。フリーペーパーの作成には記事の企画から取材・撮影までを全て学生が実施、イベント企画では、活性化プランコンテストの運営、大学の地元草薙商店街の夏祭りや、バルイベント「草薙くいだおれ祭」のなどを実施し待ました。

この「草薙くいだおれ祭」の企画段階ではフューチャーセンターを活用し、チケット販売や広報面での改善点の洗い出しや、当日起こりうるリスクの洗い出しと対応策を考案しました。このイベントは学生が主体と企画・運営したことがメディアの注目を集め、静岡新聞や毎日新聞、SBS放送など多くの新聞やテレビに取り上げられました。その結果、「草薙くいだおれまつり」では17店舗の地元商店が協力し、当日のイベント参加人数が300人を越えチケット販売だけで70万円超を売り上げました。なおこのイベントは、多くの店舗の新規顧客開拓につながったようです。

この活動は、その後ゼミという枠を外れて大学のサークルに発展しました。また数年後には草薙カルテッドというまちづくり一般社団が立ち上がり、卒業生がそこに転職したことで地域とのコラボが大変やりやすくなりました。この草薙カルテッドは、2023年には静岡県公立大学法人との「有度・草薙まちづくり協創協定」を結ぶまでに至ります。

私は長年、慶應SFCという大学で非常勤をしていますが、慶應SFCではいろんなプロジェクトが学生や研究室、企業のコラボで生み出されており、大学の差別化や強みにつながっています。そしてそうした活動の下支えになっているのは、大学卒業後も何らかの形で大学に関わってくれているOB/OGの質量の厚さであると感じており、そういう層が静岡県立大学にもあればもっと大学の可能性を広げられるのになあ長年思っていました。なのでこうしたその後の発展形の活動はやっと理想に近づいてきたなあととてもうれしく思っています。

目次
(1)立ち上げたきっかけ
(2)立ち上げ前にやったこと
(3)立ち上げ初期に大変だったこと
(4)実践を通じて分かったこと
(5)場の構成要素
(6)数年後に考えたこと
(7)プロジェクトの具体例
(8)コロナ後の大学生の状況  ←次はこれ

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