【A LINE IN THE LAND:大地のラインが示すCitrus belt(かんきつ類地帯)】(みちくさストーリー③)

 五日市の商店街から西側(檜原村方面)を望むと、一番手前に小高い戸倉城山(434m)がそびえています。この山をよく観ると向かって左側に傾いているように見えます。実はここには大きな断層(大地の割れ目で,ここで両側の地層が切れてズレています)が通っているため、地面が切られて左側が盆堀川の大きな谷になっています。このため傾いて見えるのです。ぼんぼり柚子はまさにこの谷の北側の南向き斜面が産地となっています。


 この断層線(断層が集まって構造線となります)は千葉県犬吠埼付近から本州・四国・九州を横断して沖縄本島の辺りまで続いている長大なライン(仏像構造線)の一部であるといわれています。この大地に引かれたラインより北側は約2億年前(ジュラ紀)に大陸に押し付けられた海から来た地層からなる地帯で秩父帯といわれます。南側は約1億年前(白亜紀)に同様に付加した海洋由来の地層からなる四万十帯です。地質図を見ると分かりやすいのですが、このように日本列島は何本もの断層線(大地のライン)を境に、東西に細長い帯がいくつも重なり合って形成されています。


 さて、この城山の南側を通る断層をずっと西へ向けて追っていくと、三ヶ日みかんで有名な静岡県浜松市、有田みかんで有名な紀伊半島中部、そして日本一の柚子産地である四国山地東部から、愛媛みかん産地の宇和島湾を抜けて、九州一のみかん産地である熊本県へと続いています。


 この大地のラインに沿う南北の地帯には、かんきつ類の主要な産地が点々と存在していることから、まさにCitrus belt(かんきつ類地帯)といえると思います。特に柚子は温暖な海岸地帯を好むかんきつ類の中では例外的に、内陸の山間部に産地が多く、昼夜の温度差が大きい気候が生育に適しています。また、日当たりと、水はけの良い山地斜面が柚子の生育には好適な環境となっています。


  多摩西部の山地(産地)もこの条件にばっちりと当てはまる斜面が多く存在しています。それは先に述べたように数億年かけて形成された地質や南向き斜面があるということが他の産地と同質であることからも裏づけられています。このように環境面から見ると多摩地域は柚子産地として、全国でも有数のポテンシャルを持った地域であると考えられます。


 今は伸び放題で鋭いトゲも多く、厄介な存在かもしれませんが、遠く四国の産地では需要に供給が追いつかないと聞きます。使い方、見せ方次第で大きな地域資源に化けるかもしれません。成りっ放しの果樹や落果は山の獣たちを集落に誘き寄せるエサになっています。気がつかないうちに餌付けをしていることと同じなのです。果樹を収穫し尽くすこと、これは猟師が攻めのFWだとすれば、集落のDF的な意味があります。守りの獣害対策、そんな活動から得られる果実を使って商品開発が出来れば、とてもエシカルな取り組みになるはずです。これからその方策を検討していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?