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幼い私は世界を背負う

 小1か小2の時、私はドラえもんを見ていて衝撃を受けた。
 それは、のび太が過去に戻ってまだ子供だった両親と接触し、二人の出会いを邪魔してしまう、という話だった。その中でドラえもんが言った「二人が結婚しないと君の存在は消えてしまうんだぞ!」という台詞(うろ覚え)が、幼い私の価値観を見事にひっくり返した。


 両親が結婚してなければ私は生まれていなかった。


 人間が誕生するメカニズムを知っていればそれは当然の理なのだが、当時の私はそんなの知らないし、そもそも自分という存在に対して絶大な信頼を置いていたから、ドラえもんの言ったことがにわかには信じられなかった。


 この世界は私が見ている部分がすべてで、主人公は常に私であり、私が存在しないということはすなわち世界も存在しないということだった。
 自分が存在しない現実もありえた。
 その事実は幼い私の不安を煽り、絶望に近い衝撃を与えたのだった。


 でも今となっては、私が生まれていなくても、今日死んだとしても、世界は何食わぬ顔でそこにありつづけてくれるというのは、一つの希望だと思える。
 自分がいなければ世界も存在しないなんて、重荷もいいとこだ。

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