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太郎「新しい元号は、チンズリ騎士団」

太郎はその日、とても緊張していた。
前日の夜、久しぶりに夜ふかしをした。
テレビアニメ「おにいちゃんはおしまい!」を全話一気見して、チンズリをこいていたのだ。
なぜチンズリをこいていたかというと、新しい元号を発表するはずだった義偉が風邪を引いてしまい、かわりにその大役を任されてしまったからだ。ようするに、現実逃避だった。
太郎はアニメが大好きだった。
「ローゼンメイデン 見とるよ」
最初は若者に向けたリップサービスのつもりだった。しかし、アニメを見ていることを思った以上に持ち上げられ、キャラを維持するためにはアニメを見なければいけないという義務感に駆られるようになった。
「俺達の太郎!俺達の太郎!」
その言葉はいつしか呪いとなった。
そう、最初は、義務だったのだ。しかし太郎はいつしかアニメの魅力に取り憑かれ、アニメを見ながらチンズリぶっこくモンスターに成長してしまったのだ。アニメを見てしまったことで、太郎の顔はどんどん歪んでいき、口は90度も曲がっている。
「まひろたんっ!まひろたんっ!今日もいっぱい射精するぶひ♡♡!!!♡」
ティッシュペーパーにいっぱい出してしまった。
永田町の連中に、今のおれを見られたら、馬鹿にされるだろう。
スキャンダルになるかもしれない。
国民からの厳しい視線、野党からの批判、マスコミによるスッパ抜き。胃が痛くなる。俺を癒やしてくれるのはまひろたんだけだ。
ぶひひ、今期の覇権は「おにまい」で決まりぶひね♪
そんなことを考えながら、明日発表する元号をちらと見る。
そこには達筆に「令和」と書かれていた。これが平成にかわる新たな時代だ。太郎は誇らしくなった。
太郎の頭に、疑問が浮かんだ。なぜこの紙にはびちゃりと精液がついている???ほかほかのザーメンが次第に紙いっぱいに広がっていく。
そして、あっと大声を上げてしまう。
ティッシュペーパーと、墨書を間違えてしまった!
「これ、渡すんで、明日絶対に持ってきてくださいね」
天皇直々に渡された墨書は今やびちょびょのオナティッシュと化して、無惨に横たわっていた。
太郎の頭は真っ白になった。
なんとかしないと!なんとかしないと!
太郎の政治生命で、一番大きな失態だ。
「俺達の太郎!俺達の太郎!」
幻聴が聞こえる。
「俺達の太郎!!」
ぐわんぐわんと声援が響き、やがてそれはさらに大きくなり、瞼の裏から発火しているように眩しい閃光が瞬いていた。太郎は何が何やらわからなくなってしまった。
ふっと、一陣の風が太郎の頰を撫でた。
すべてどうでもいい。すべて。
元号?知ったこっちゃないよ。西暦のほうが分かりやすいだろうが。
自暴自棄になった太郎は、ふと思いつき、押入れから小学校の頃に使っていた習字道具を引っ張りだした。
元々書いてあった元号はぐちゃぐちゃで読めない。ぶっかけたショックで何が書いてあったかも忘れてしまった。
何か書こう。なんでも良い。そうだ、最初に思いついたことを書こう。

〜〜〜
チンズリ騎士団元年 夏の暑い日

チンズリ騎士団おじさんだー!
街の子供がからかってくる。もう慣れっこだった。
「元号、dアニメストアよりはマシだったな」
ひぐらしが鳴いている。太郎はとぼとぼと帰路についた。

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